NGO(非政府組織)代表
岩附 由香 さん
- 児童労働から子どもを守る
- −1人1人が輝ける社会を目指して−
大学院在籍中にNGO「ACE」を立ち上げる。ACEはAction against Child Exploitationの略。会社員,国連WFP日本事務局スタッフ,通訳などの職と並行して活動を続け,その後ACEの活動に専念。
仕事内容を教えてください。
私の設立した「ACE」は,世界の子どもを児童労働から守るためのNGOです。とくにインドやガーナで,子どもが危険な労働から保護され教育を受けられるように,子どもの就学の徹底や親の収入向上のための職業訓練などの支援活動をしています。児童労働は,地域の貧困や経済格差,教育の問題などさまざまな要因が複雑に絡んでいます。経済のグローバル化により,知らないうちに企業が児童労働に加担してしまうこともあるため,例えばアパレル企業向けに,衣料品の原料である綿花栽培における児童労働を知ってもらうセミナーを企画・運営するなど,日本で児童労働に関する世論を喚起する活動もしています。
私は代表として組織の運営や講演を行い,支援を広く呼びかける仕事をしています。
なぜこの仕事を選んだのですか。
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インドでのグローバルマーチ(1998年)
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講演会の様子
大学3年のとき,メキシコの路上で子どもに物乞いをされ,教育を受けられずに働く子どもが世界にたくさんいることを知ったのがきっかけです。ちょうど就職活動が始まる時期だったため,児童労働を解決することを仕事にしたいと考え,国連職員を目指して大学院に進みました。
大学院在学中,「児童労働に反対するグローバルマーチ」に出合いました。児童労働の廃絶を訴えるため,マーチ(行進)をする活動で,カイラシュ・サティヤルティさん(2014年ノーベル平和賞受賞)が呼びかけたものです。世界100か国以上で行われていますが,日本でこの活動を担える団体がなかったので,「それなら自分で作ろう」と一晩で趣意書を書き上げ,同じ志を持つ学生仲間に声をかけて立ち上げたのがACEです。
それからは仕事をしながらボランティア活動でACEを続けていましたが,「自分がいちばんしたいのはACEの活動だ」と確信し,この活動にいちばん時間を使えるよう今の形にしました。そのため,給料をもらってこの活動をするようになったのは34歳のときです。
この仕事をやっていてよかったと思うことはありますか。
インドやガーナで支援していた地域の子どもたちが,児童労働から解放され学校に行くようになり,それぞれの夢を持てるようになったことなどを実感できたときです。その事実がうれしいだけでなく,そのような結果をもたらすことのできたスタッフやACEの存在自体が,よかったなと思います。
これからの夢や抱負は何ですか。
私のモットーは「人とつながり,力を引き出し,社会を変えるエネルギーを生み出す」こと。目指しているのは,1人1人の可能性が花開く社会。だから,子どもの可能性を奪う児童労働を解決する活動を行ってきました。その原因は複雑ですが,今後も,企業や市民を巻き込みながら解決する新しい方法を生みだしたいと思います。エシカルな消費を広げることも,その1つです。
高校生へアドバイスをください。
高校生のときは将来の仕事はぼんやりとしか考えておらず,大学3年になって初めて具体的に決めました。会社員時代も,国際機関の日本事務所で働いていたときに経験した国際会議の舞台裏も,1つも無駄になったとは思いません。まわり道をしても,いつからでも,やりたいことにたどり着き,それを仕事にできるのは幸せなこと。なぜなら,人生の中で仕事に使う時間はとても長いからです。
高校生の頃から刺激を受ける機会が多いほど,選択肢が広がり,やりたいことを見つけるのに役立つ気がするので,いろいろな人に会ったり,イベントに参加したり,自分なりの方法で自分の世界を広げてください。