建築家
藤森 照信 さん
- 自然と経験から生まれる建築
- −自分のこだわりを大切に−
大学の建築学科を卒業後,大学院で建築史を研究しながら執筆活動を行う。45歳で建築家デビュー。
建築家になったきっかけは何ですか。
小学校2年のとき,江戸時代からの茅葺きの家を壊して建て替えたのですが,かんなくずのかたづけなど,大工さんの手伝いをしたのがおもしろかったんです。今では危険なので現場に入ることはできませんが,そこで体験したことから建築に関心を持ち,高校3年で建築学科を進路に選びました。大学在学中に歴史にも興味が湧いて,大学院で建築史の研究をし,その後は大学で講義や建築史に関する本の執筆などをしてきました。建築家としての仕事を始めたのは45歳のとき,長野県からの依頼で「神長官守矢史料館」を設計してからです。建築史研究の経験から,他の建築家とは違うものを設計することができていると思います。
仕事内容を教えてください。
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自宅「タンポポ・ハウス」
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基本設計のデッサン
建築家の仕事は広範囲にわたるのでここでは詳しく説明できませんが,建築目的や条件に合わせて大まかなことを決める「基本設計」,実際に工事をするための「実施設計」,そして「工事」の3段階があります。私は基本設計と工事の最後の仕上げを中心に行っています。設計する際は,自然を大事にしたい,環境を壊したくないという思いがあり,現代の技術を取り入れながらも,表面はできるだけ自然素材でつくっていくようにしています。仕上げにもこだわりがあり,自然素材を選ぶところから,板であれば山から切り出してくるところから自分でやります。2作目となる自宅「タンポポ・ハウス」を設計したときには,室内の壁となる板の選定はもちろんのこと,板の表面の磨き方や壁の塗り方も,自分でやってみて納得してから職人さんにやってもらいました。仕上げのときのこだわりは,今まで手掛けた建築物全てに共通しています。
この仕事の楽しさや喜びは何ですか。
よいアイディアが湧いて,それを少しずつ膨らませながら,具体的なものにつくり上げていく,その過程がとても楽しいです。
1つ1つ問題点を解決しながらアイディアを練り上げる。そして,まずは自分がよかったと納得できる仕事ができたときにも,この仕事のすばらしさを実感します。もちろん周囲から評価されるのもうれしいことです。
これからの夢や抱負は何ですか。
最初に設計した「神長官守矢史料館」など公共建築物もありますが,住宅や茶室などプライベートなものを多く手掛けてきたので,大きなものにチャレンジしてみたいです。具体的ではありませんが,一気に1万人ぐらいの人たちで造り上げるピラミッドのような建築物でしょうか。やっているときには,そのときそのときで満足していますが,終わってみると次々とやってみたいと思うことが生まれてきます。自分ではやりきれていない,表現し尽くせていないという感じがどこかにあるからかもしれません。建築だけでなく,建築と庭の関係など実際にやってみなくては分からないことも多いので,これからも積極的に作品に取り組んでいきたいですね。
高校生へアドバイスをください。
建築の仕事には,子どもの頃からのいろいろな体験が生きてきます。私は野山を駆け巡り,自然界のさまざまなものと接し,たくさんの風景を見て育ちました。とくに目を通して入ってきたものから大きな影響を受けると考えています。皆さんも今からでもたくさんのものを見て,体験してください。必ず自分の仕事に生かされます。
- 住生活に関わる職種
- 建築士/インテリアデザイナー/インテリアコーディネーター/家具職人/大工/左官/塗装業/畳職人/表具師/庭園設計士/都市計画プランナー/CADオペレーター/不動産鑑定士/土地家屋調査士/測量士/インテリアショップやホームセンターで働く/住宅関連会社(住宅メーカー,デザイン,建設,建材,内装,不動産,デベロッパーなど)で働くなど
仕事内容や必要な資格などは、自分で調べてみよう!