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盲導犬訓練士・歩行指導員

多和田 たわだ さとる さん

  • 見えない人をHappyに
  • 自分らしく生きるお手伝い

仕事内容を教えてください

1974年から盲導犬訓練の仕事に携わっています。今はみなさんが盲導犬の重要性を理解してくれていますが、当時はまだ知らない人がほとんどでしたね。これまでたくさんの盲導犬を訓練してきて、現在はおもに訓練士の養成と、盲導犬を利用する人への歩行指導をしています。訓練された犬は目で見た情報を伝えてくれますが、判断は人間がしなくてはなりませんから、発信する犬と受ける人との信頼関係はとても重要です。盲導犬として仕事をするのは8年間ほどなので、利用者がその期間をどう生きていくかを考えて、より相性のよい犬を選ぶのも仕事。利用者の方には「8年日記をつけ始める」という話をしますが、8年先まで自分の人生に責任を持つ、それだけの覚悟を持って盲導犬を利用してもらうわけです。訓練する僕たちも、利用者と同じ覚悟と責任を持って取り組んでいます。

なぜこの仕事を選んだのですか

  • ハーネスをつけて一般道へ

  • 学生を指導

仕事を選ぶときに自分の中にいくつか基準があって、その1つが「人の役に立つ」ということでした。高校時代に出会った、全盲の牧師である 塩見 しおみさんとの交流がきっかけで勉強した点訳。その点訳作業にアドバイスをしてくれた、獄中で1、500冊もの点訳をした死刑囚の 二宮 にのみやさんとの手紙でのやりとり。見えない世界に生きる人と死に向かって生きる人。この自分ではどうしようもない不条理を抱えた2人との交流の中で、さまざまなことを考えて本を読み勉強をして、生きることの意味や価値を知り、そのことが「人の役に立つ」という基準を生んだのだと思います。そして、大学時代に塩見さんを思い出しました。初めて見た盲導犬は、塩見さんがアメリカから連れてきたハッピーで、当時は大きい犬だと思ったぐらいだったけど、その印象は僕の中に残っていたのでしょう。点訳は仕事にはできませんが、盲導犬なら目の見えない人の役に立てると思いこの仕事にたどりついた訳です。始めた頃は、もう大変なことばかりで、驚いたり悩んだり、試練の毎日でしたね。

挫折 ざせつしそうなとき、どうやって乗り越えましたか

いつも「自分は人の役に立っているのか」と考えます。そんな思いから僕の慢性病“もうやめたい病”がときどき顔を出す。でも「今日も犬たちが待っている」「犬を待っている人たちがいる」そう思うと立ち止まっていられないから、訓練所へ行って訓練をする。挫折は乗り越える必要はないのです。引きずって、それも含めて自分を すべて受け入れればいいのですから。

これからの夢や抱負は何ですか

この仕事に就いたときから、僕の夢は揺らいでいません。それは、目の見えない人たちがHappyになること。見えているのが正しい自分で、見えてないのは自分じゃない、そう思っている人がたくさんいます。あなたはそこにいてこそ価値がある。どれだけ速く走れるかでも、どれだけたくさん稼げるかでもなく、自分らしく生き続けていくことに意味がある。少しでもその役に立てたら、という気持ちでこの仕事を続けています。それは今までもこれからもずっと同じ。見える人見えない人、みんながHappyになれば、僕もHappyになれると信じています。

盲導犬訓練士を目指す高校生にアドバイスを

ちゃんと自分が帰る場所を持っていれば、ぶれてもいい、困ってもいい。これは、家族を巻き込んで、はちゃめちゃな人生を送ってきた自分への言い訳も含めているかもしれません。でも、自分の しんにある「人の役に立ちたい」という思いを失うことはなかったからここまで続けてこられました。そして、その思いを理解してくれていた妻や家族の力も大きいですね。芯がぶれなければ、自分も頑張れるし、周りの人たちも力になってくれる。そうすれば、Be Happy、きっとみんなが幸せになれます。