プロジェクト相関図

月に持っていくドリームカプセルは,特別なカプセルです。
打ち上げロケットの温度や振動を受けても壊れないようにしたり,毎日,昼は100℃,夜は-170℃になる月の表面に,何年も置いておいても大丈夫なように,日本の会社の,最先端の技術を集めて作られています。

  • 海内工業株式会社
    代表取締役 海内 美和

    企業情報

    板材を精密に切断,曲げ加工を行う精密板金加工を得意としており,金融機器や医療機器などの高精度を要求される内部機構部品を製造する企業。ステンレスバネ材,銅合金,チタンなど,扱いが難しいと言われる素材でも蓄積された職人技で精密に加工する。

    プロジェクトでの役割

    ドリームカプセル,ドリームリング,メッセージプレートの素材の選定や調達のほか,ステンレスバネ材やチタンなどの難加工材を加工している。ドリームカプセル内部の収納ケージや月面へリリースする際の機構制作を担当。

  • 株式会社由紀精密
    代表取締役 大坪 正人

    企業情報

    神奈川県茅ヶ崎市を拠点に,主に産業部品の設計と切削加工を行う研究開発型の町工場。50年以上にわたり培ってきた精密切削加工の技を活かし,航空旅客機,人工衛星,医療機器など幅広い分野における産業部品を生産。

    プロジェクトでの役割

    ドリームカプセル,ドリームリング,メッセージプレート素材の切削加工,メッセージプレートへのレーザーマーキングなど。寸分の誤差も許されない,精密な加工を担当。

  • 電化皮膜工業株式会社
    代表取締役 廣門 伸治

    企業情報

    「めっき」化工に代表される,金属の表面処理を専門とする会社。金属の硬度や耐磨耗の向上,錆の防止のための表面処理や,アルミニウムへの染色なども得意とする。

    プロジェクトでの役割

    ドリームカプセルを青色にする表面処理を担当。日中110℃,夜間マイナス170℃という月面の過酷な環境下に耐えられる,青色アルマイトという染料を注入した表面処理を実施。

ロケットを飛ばすのは1回きり。ドリームカプセルを月に届けた後,何か問題が起こっても,そう簡単には調整できません。たった一度のチャンスで失敗しないように,事前にあらゆるテストをする必要があります。大学の教授や研究所の力を借りて,このテストを行いました。

  • 東京大学 大学院工学系研究科
    中須賀 真一 教授

    機関情報

    気流や構造材料に関する研究設備を備え,東京大学の工学系の中で航空宇宙を専攻とする教育研究機関。中須賀教授の研究室は,3機の超小型衛星の打ち上げに成功しており,その分野では世界をリードしている。

    プロジェクトでの役割

    熱輻射測定,構造解析,熱解析,ロケット打ち上げ時の振動による共振防止のための解析,検証などを担う。

    メッセージ

    宇宙の中で地球と大きく違う環境のひとつとして,熱があります。太陽の光が当たるとものすごく高温になるし,地球の側になるとものすごく低温になる。こういった環境で実際につくったものが動くかどうかという確認をしなければなりません。そのためには,そういったものがどういう温度になるかということを計算しなければいけない。これが熱解析ですね。
    また,打ち上げの時に激しい振動環境,加速度環境がドリームカプセルに与えられる。その環境では,物体がどういう挙動を示すのかという計算をするのが構造解析です。これは必須の作業ですね。

  • 九州工業大学 宇宙環境技術ラボラトリー
    岩田 稔 助教

    機関情報

    宇宙環境技術ラボラトリーは,リモートセンシング,高速大容量通信,高精度測地などといった次世代の宇宙利用の達成に必要な耐宇宙環境技術の研究開発を行う機関。岩田稔助教は宇宙材料劣化に関する研究を行っている。

    プロジェクトでの役割

    宇宙環境テスト,試料テストなどを担当。ドリームカプセルを着色する青色アルマイトのアウトガステスト(新しい素材を宇宙に持っていく際,周りの機器に影響を与えないか調べるテスト)を行いNASAの基準値をクリアした。

    メッセージ

    今回は無人で持っていくという話を聞いておりましたので,アウトガス試験をしていくということになります。
    空気がない状態にものが置かれると,表面からは,ガスが放出されるんです。
    今回のように金属の表面に青く染色していますので,その染色した材料が,真空中に気化してガスを発生させる可能性があるということですね。
    そのガスが他のものにくっついて,迷惑をかけるということがあるのです。アウトガス試験とは,そういう影響について調べるための試験です。

月に持っていくドリームカプセルは,特別なカプセルです。
打ち上げロケットの温度や振動を受けても壊れないようにしたり,毎日,昼は100℃,夜は-170℃になる月の表面に,何年も置いておいても大丈夫なように,日本の会社の,最先端の技術を集めて作られています。

  • 着陸船・ロケット開発
    アストロボティック・テクノロジー社
    (Astrobotic Technology Inc.)

    企業情報

    米国ピッツバーグを拠点とする宇宙ロボット技術や宇宙ミッションを低価格で提供する宇宙開発企業。急成長している宇宙産業分野において,惑星探査・科学研究から観光にいたるまで,さまざまな形で宇宙惑星へのアクセス手段を提供する。民間初の月面探査を競う,「Google Lunar X Prize」に参加中。

    プロジェクトでの役割

    ドリームカプセルを月面へリリースする着陸船の開発。成功すれば,民間で初めて月面着陸を可能にした無人着陸船の開発企業となる。

  • CEO ジョン・ソーントン

    メッセージ

    アストロボティックは宇宙ロボット開発企業です。
    当社の最初のミッションは月面着陸です。月に向けてペイロード(貨物)を打ち上げ,着陸させます。

  • ロバート・"レッド"・ウィタカー教授

    メッセージ

    私は幸運にも,テクノロジーや数々のミッションと冒険に恵まれた人生を送ってきました。
    そして今また素晴らしいプロジェクトが始動しています。
    しかしこれは,新しい世代の方たちのものです。若い人はぜひ立ち上がって,このプロジェクトに参加してください。
    永遠の存在である月に,あなたの力を少しだけ貸してください。人生で最高の冒険に参加できるチャンスですよ。

月にカプセルを取りに行くのは,数十年先。おとなになった皆さんが,いろいろな勉強をして,いろいろな技術を身につけて,月に置いてあるドリームカプセルを取りに行く日が来るかもしれません。「夢のメッセージを書いてこのプロジェクトに参加した世界中の子どもたちが,ドリームカプセルを月に取りに行く――。プロジェクトを立ち上げたチームのメンバーは,そんな未来を願っています。