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文部科学省 初等中等教育局教育課程課
学校教育官

米原 泰裕

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2015年12月9日)時点のものです】

起業家教育を進める第一歩

最近,自分に自信が持てず,また、意欲面でも課題がある,といった子どもに関するデータが出ています。これから先30年を考えても,グローバル化,情報化は加速度的に進み,社会も大きく変わるでしょう。変化の大きな時代を生き抜く力を養うためにも,起業家教育が今後ますます大切になってくると思います。
しかし,現状では起業家教育とは何かがまだまだ学校現場の先生方に伝わっていないと感じます。起業家を育成するための教育と思われているのではないでしょうか。起業家教育による起業家精神や起業家的資質能力の育成とは具体的にどういうことか,経済産業省が作成した事例集『起業家教育のススメ』に大変分かりやすくまとめられたことは,大きな意義だと思います。先生方には起業家教育の実践の第一歩として,十分に参考にして頂きたいと思います。

学校と社会の協力が不可欠

事例集作成に御協力くださった起業家の方々や経済産業省は,現在活躍されている起業家の方々に続くような子どもが出てきて欲しい,そしてその子どもが成長して日本経済を牽引するような力になって欲しい,といった思いを強く持たれています。文部科学省としては,起業家になるかどうかは子供たちの選択ですが、子供たちに起業家教育を通じてチャレンジ精神や課題解決能力、創造性などを養って欲しいと考えています。
起業家教育を進める中でとりわけ重要なのは,学校現場の力に加え,地域社会や企業人など,学校外の力もお借りして取り組む姿勢です。「社会に開かれた教育課程」という言葉を最近用いていますが,学校と地域社会は,今後より連携・協力して子供たちへの教育を充実させていくことがとても重要です。

カリキュラムマネジメントの視点を

これからの社会をつくる子どもたちが,自らの人生を切り開くために必要となる力とは何か,教育課程(カリキュラム)の中で明確にすることも大切です。そして,学校教育の目標や育てたい子ども像を学校内外で共有し,その目標や理想に向けて連携することが必要となります。地域の実状や学校の実状を理解し,その中で子どもたちにどういう力を育むのか,それを前提に教科,科目をきちんと配置して頂きたいと思います。これはカリキュラムマネジメントの発想です。例えば,算数ならば算数だけで完結するのではなく,内容事項によっては理科と連携するなど、教科における学習の充実はもとより教科の内容について相互の関連や横断を図っていただきたいと考えています。
ここでは先生方にも起業家精神が求められている,と見ることもできるかもしれませんね。決められたことの中から,いかに目の前の子どもたちに合わせて教育課程や授業を組み立て,質の高い授業を行うか,先生方のアイディアと実践力を発揮して頂く場面だと思います。

学習指導要領と起業家教育が描く今後の子どもの能力

現行の学習指導要領の目標を踏まえ,起業家教育は起業家精神,チャレンジ精神,創造性,探究心,起業家的資質能力,情報収集分析力,判断力,コミュニケーション力の向上を目標に,さまざまな実践が行われています。
現在、次期学習指導要領の改訂に向けた検討を行っていますが,未来で活躍することが期待される子供たちに教育課程を通してどのような資質・能力を身につけていただくかか,という観点から検討しています。そして,三つの具体的な資質・能力の柱を示しています。①何を知っているか、何ができるか。②知っていること・できることをどう使うか。③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか。以上の3点です。
これからは,これまで以上に予測が難しい社会になっていくでしょう。これまで経験したことのないような課題を持つ社会で,子どもたちは生きていくことになります。そこで活躍するために必要となる力は何か,先生方自身も一生懸命に考え,子どもたちを指導していただきたいです。子どもたちの生きるこれからの社会を強く意識した教育が必要なのです。今後の社会の変革を見据えると、起業家教育を通じて育成しようとしている子どもたちの主体性やコミュニケーション能力,チャレンジする心などがますます重要となると考えます。