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経済産業省 経済産業政策局 新規産業室
新規事業調整官

石井 芳明

  • 【このページに書いてある内容は取材日(2015年12月3日)時点のものです】

社会構造の変化が要請する起業家教育

近年,あらゆる場面で国際競争がますます激しくなっています。社会構造が変化し,今ある仕事がコンピュータやAI(人工知能)に次々に置き換わっていくかもしれません。さらに,少子高齢化が進めば労働人口も減りますから,生産性を上げていかなければなりません。こうした社会の到来に向けて,子ども達にはますますたくましくなっていってもらいたいと思っています。決められたレールの上を歩くだけではなく,レールから外れても新しいレールを自ら探すような,さらには新しいレールを自ら作り走るようなたくましさです。社会構造の変化に柔軟に対応しながら,新しい価値観を生み,雇用も増やし,そして何より活気溢れる社会になるとの期待を込めて,起業家教育を推進しています。

チャレンジ精神と柔軟な思考,態度を持った大人へ

起業家教育は,起業家を育てることを目標としている,としばしば誤解されます。しかし,私たちは,小中学生に起業して欲しいとか,学校を卒業してすぐに起業できるようになることを目標とはしていません。
私たちは起業家教育を通じて,子どもたちがゼロからイチを作り出すようなチャレンジ精神を身につけてもらいたいと思っています。将来子どもたちは,色々な仕事に就くことになるでしょう。大企業の中で新しい事業を立ち上げたり,現状に甘んじることなく改革をしたり,組織の大小や事業の内容に関係なく,柔軟な考えや態度でさまざまなことにチャレンジできる子どもたちを育てたいのです。

「子ども自身が社長」となり,チャレンジを実体験する

これまでにも起業家教育は,さまざまな実践が行われてきました。例えば,起業家の方々による出前授業です。話を聞き,調べ学習をすることで,その背景や実情を子どもたちに理解してもらいます。
あるいは,学校の中に「子ども会社」を作り,企画から関わった商品を販売してもらいます。この活動では,子ども達は自ら考え,生き生きと意欲的に活動する姿勢が見られ,先生方からも好評でした。
こうした実践を通して子どもたちに学んで欲しいことは,マニュアル通りの行動ではなく,子ども自身が社長になって企画から生産,販売まですべてゼロからやってみるというチャレンジ精神そのものです。

省庁の垣根を超えた共感

通常の業務が忙しい先生方だけで起業家教育を実践することは,限界があると思いました。また,起業家とのつながりも少ないということもあるかもしれません。
そこで経済産業省は文部科学省と協力しながら,起業家教育を推進していくための環境整備を行っています。例えば,起業家の方を学校現場に紹介する,起業家体験プログラムを実施している企業を紹介する,また商店街の店主の方々との交流をサポートするなど,学校と学校外との橋渡しをしています。これからの時代に合わせた教育を共に作りたいという思いを両省で共感しながら,取り組みを進めていきたいと考えています。

「格好いい大人」とたくさん出会って欲しい

最近の日本の子どもたちは,自己肯定感が低いといいます。「自分に自信がありますか」との問いに,アメリカや中国の子ども達の80~90%が「ある」と答えますが,日本の子ども達は40%ほどで,しかも歳を重ねるごとに割合は減少していきます。学力向上ももちろん大事ですが,生きていく自信を伸ばす教育も求められているのだと思います。そのためにも,起業家教育をきっかけに,「格好いい大人」に多く出会って欲しいと思います。起業家に限らず,近所の商店主など,地域や社会の大人たちの体験をたくさん聞き,たくさんの大人の考えに触れ,「自分にもできそう」「自分も頑張れるかもしれない」と自己肯定感を高め,自分に自信を持ち,チャレンジ精神を育てていって欲しいですね。