日本財団

海・川の仕事人

〈箱めがね漁〉
の仕事

岩手県釜石市
よろず ゆたかさん

わたしいわけんかまいしりょうをしています。漁船に乗ってアワビやウニなどをとるいそりょう,ホタテガイとワカメのようしょくぎょうに加え,夏には小型のていあみりょうもしています。かまいしは入り組んだリアス海岸で,岩場が続いています。岩場にはかいそうしげり,アワビやウニのよい漁場です。ホタテガイとワカメのようしょくでは,えさをあたえません。ホタテガイはプランクトンを食べ,ワカメは光合成と海水にふくまれる栄養分で育ちます。かまいしの海は栄養たっぷりのゆたかな海なんです。

いそりょうは,げんをとりつくしてしまわないよう,漁法と漁具,漁期,とっていい量やサイズなどのルールがきびしく決められています。かまいしでは,木箱の底にガラスをはめた「かがみ(箱めがね)」という道具で海中をのぞき,3mの竿さおを最大4本半つないだ先に,アワビ漁ではフック型のカギ,ウニ漁では小さなタモあみをつけて,岩からものをはがしてとります。ちょうりゅうに負けずに竿さおあやつじゅつが必要で,とくにアワビ漁では,岩にそっくりのアワビを見つける目のよさとかんも求められます。

漁業は自然が相手です。ようしょくぎょうは生き物をあつかうので思いやる気持ちが大切で,よく観察して手をかけてあげます。するとその分いいものが育って,努力がむくわれます。でも自然は人間の思いどおりにはならず,2011年のおおなみでは漁業に関するすべてを失いました。わたしりょう仲間と助け合い,何とか漁業をさいかいさせました。自然にはさからえません。うまくつきあって海からめぐみをいただく,これがかえなみにあってきたさんりくりょうの生き方だと思います。

助成:公益財団法人 日本財団
協力:NPO法人 共存の森ネットワーク,愛南漁業協同組合
取材・執筆:大浦 佳代/イラスト:友永 たろ,川島 星河,広野 りお