仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1981年 生まれ 出身地 東京都

大塚おおつか 耕一こういち
子供の頃の夢: サッカー選手
クラブ活動(中学校): サッカー部
仕事内容
「世界で一番楽しいそう屋」を目指し、建物のせいそうを行う会社をけいえいする。
自己紹介
めいろうかいかつで、とても真面目なせいかくです。
出身高校
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2026年07月16日)時点のものです

にちじょうせいそうでは落とせないよごれを落とす

日常の清掃では落とせない汚れを落とす

わたしが社長をつとめる「こうえいビルサービス」は、オフィスビルやマンション、学校といった建物のせいそうを行う会社です。せいそうには「にちじょうせいそう」と「定期せいそう」の2つがあり、にちじょうせいそうは毎日のトイレそうや、ゆかに落ちているゴミをきれいにするといった軽いせいそうのことです。それに対してわたしたちが強みにしているのは「定期せいそう」で、これは機械や強いせんざいを使い、にちじょうせいそうでは落とせないよごれを落とし、リセットするものです。「ディープクリーニング」という言い方をすることもあります。
とりわけとくにしているのはカーペットクリーニングで、わたしの父が社長をつとめていたとき、カーペットクリーニングのこくさいライセンスである「IICRC」のにんていを日本で初めてしゅとくしています。「IICRC」は、せいそうぎょうかいのレベルを向上させるためにアメリカでせつりつされたえいだんたいで、40か国以上に6万人をえるにんていじゅつしゃがいます。アメリカの建物はカーペットが多いので、カーペットせいそうの先進国です。そこのじゅつをしっかりしゅうとくし、じゅつを持ち続けていることがまんです。
また、石材のとくしゅせいそうとくで、例えば大理石についてしまったシミやワイン、油を落とすといった、いっぱんせいそう会社ではむずかしいとされているらいにもたいおうしています。他のせいそう会社でことわられた、とか、うまくきれいにならない、といったなやみをかかえた方が、口コミで光永ビルサービスのことを知り、ごらいいただく、ということがとても多いです。

人が活動していない時間帯にせいそうを行う

人が活動していない時間帯に清掃を行う

お客さまかららいが来たら、まずはげんに行ってよごれのじょうきょうと建物のけいじょうかくにんし、見積もりを出してごていあんをします。そこからさまざまな調整を行い、受注することになったらじっさいせいそうに入る、という流れです。
人のいない時間帯に作業をしなくてはいけないので、オフィスビルではほんてきに土日に作業をします。アパートやマンション、公共せつの場合は、平日にせいそうすることもあります。また、6月のプール開きの前には学校のプールせいそうも行いますし、長期きゅうの時期にはこうしゃないせいそうを同じ時期になんけんも続けて行うこともあります。ときには、お寺のせいそうを行うこともあります。せいそうを行う回数は場所やお客さまとのけいやくによって変わり、毎月行く場合もあれば、年に数回ということもあります。
商業せつなどは開店前にしゅうりょうしなくてはいけないため、作業開始は朝早いことが多く、朝4時台や5時台にげんに集合することもあります。せいそう時間はげんによってことなり、2時間で終わることもあれば、一日かかることもあります。早く終わる場合は一日の中でふくすうげんを入れていることも多く、しゅうりょう後に次のげんに向かいます。
わたし自身は8時から8時半の間に出社して会社や付近のそうをしたあと、メールチェックをし、その後は人と会ったり、会合に出ていたりすることが多いです。働いているスタッフのぎょうの様子はインターネットを利用したれんらくツールでかくにんし、月に1回は必ず顔を合わせたミーティングを行います。

つねに仕事のひんしつを高くたもつことの大変さ

常に仕事の品質を高く保つことの大変さ

せいそうぎょうは肉体労働ですから、体力的な大変さはもちろんあります。こくしょや寒さの中で作業をしなければならないこともあります。特に冬は寒い中で水を使った作業をしなければならないので、それは大変なところです。
またもう一つの大きな苦労は、ひんしつつねに高くたもつことのむずかしさです。わたしたちは先代から、プロとして「ひんしつぜったい」とおしまれていますが、それをつねするのは大変ですし、新しいスタッフにもそれをかいしてもらい、しんとうさせる必要があります。けいけんしゃの方が入ってくることもありますが、ぜんしょくの方法とちがい、「こんなことやったことない」と言われることもあります。
また、なるべく短時間で集中したせいそうを行うため、他のせいそうぎょうではあることが多い「午前中のちゅうきゅうけい」などを取らず、連続で作業を続けることも多いです。でも、流れを止めないことが結果的に短時間でせいそうが終わることにつながるので、光永ビルサービスはそのやり方でせいそうを行っています。早く終わればその分、早く帰ってゆっくり休めますから。

きれいになることでよろこんでいただける仕事

きれいになることで喜んでいただける仕事

何よりのよろこびは、お客さまが目の前でよろこんでくれることです。よごれている場所がきれいになることは、ほんてきにはお客さまもそうするほうも、どちらもうれしくなることです。むずかしい作業が必要なよごれや、落とすのが大変だろうな、というよごれを落とすためには、さまざまな方法を考えます。その方法がうまくハマり、落ちたときの達成感はたまらないですね。
けいえいしゃになってうれしく思うことは、わたしげんに行っていないところで、スタッフのづかいやていあんひょうされることです。じっさいにあったことですが、外が暑いときにお客さまがげんに来られることがあり、スタッフが冷たい飲み物とチョコレートを用意してお待ちしていたそうです。また、以前「他の会社にたのんでいたけど、きちんとやってくれなくて……」というなやみで光永ビルサービスにごらいいただいたお客さまがいたのですが、スタッフがきちんとせいそうを行い、しかも「無理にやらなくていいですよ」と言われていた屋上のせいそうもスタッフからごていあんして行ったことで、本当によろこんでいただいたことがありました。
わたしから「そうしなさい」と言ったわけでもないのに、スタッフがそういうこころづかいをして、それをお客さまが本当によろこんでくださる。それはわたしもすごくうれしいですし、けいえいしゃとして本当にやりがいを感じます。

人とのえんがつながって、今がある

人との縁がつながって、今がある

仕事であっても、家族であっても、結局は人だな、ということをよく思います。わたしたちの会社はお客さまとのごえんを何より大切にしています。というのもえいぎょうを特にかけているわけではなく、ごえんの中でごしょうかいいただいた方々からのお仕事がほとんどだからです。また、そうぎょうしゃも、父も、げんに出ながらけいえいを行っていましたが、今はわたしげんはスタッフにまかせて、外に出ていろいろなごえんをつなぐ動きができます。それも、げんのみんながせいそうをしっかりやってくれているからですし、じょうがいることで、けいえいとマネジメントを分けて行えるようにもなりました。本当にいろいろな人に助けられて成り立っているな、と実感します。
また、仕事のうえでは「たいえられるようにすること」を大切にしています。わたしたちはだれもいない建物に入らせてもらって作業をさせていただくので、そもそもお客さまからしんらいしていただいています。だからこそ、作業の結果でたいえられるようにしたいと思っています。
もう一つ、ほんではありますが、本当に目の前のことをいっしょうけんめいやるということを、最も大切にしています。

ホテルで働く中で気づかされた、せいそう

ホテルで働く中で気づかされた、清掃の価値

光永ビルサービスはが立ち上げた会社ですが、わたし自身はもともと、ぜったいぎたくないと思っていました。というのも、せいそうぎょうというのはぜったいになくならない仕事なので、「変わらないままやっている仕事」に見えていたからです。父は「お前の好きなことをやれ」と言ってくれたので、サービス業にきょうを持ち、大学卒業後はザ・リッツ・カールトンというがいけいのホテルに入社しました。大阪で1年働き、東京にリッツ・カールトンが開業するときに開業メンバーとなり、そこから5年働きました。リッツ・カールトンでは一流のサービスを学び、本当にいいけいけんができました。でもあるとき、けいえいじんの一人にばれて話をしていたとき、「おおつか君、リッツ・カールトンが大事にしているものってなんだと思う?」と聞かれました。お客さまのニーズを先読みすることをはじめ、リッツ・カールトンで学んだことをたくさん挙げましたが、「合ってはいるけど、どれもちがう。『せいそうと安全』だよ」と言われました。それは365日1秒たりとも、99.99%ではダメで、つねに100%でなければならないと。その言葉を聞いて、せいそうの持つってすごいんじゃないか?と気づかされましたし、なんでせいそうぎょうという家業をきらって出ていってしまったんだろう、と思いました。それで父とに頭を下げ、会社に入れてもらったのが2013年のことです。

大学のアメフト部で学んだ、チームをまとめるむずかしさ

大学のアメフト部で学んだ、チームをまとめる難しさ

中学校、高校のときはほんかくてきにサッカーをしていましたが、せつして高校のちゅうでラグビーに転向し、大学ではアメフト部に入りました。大学のアメフト部のキャプテンになったとき、立場が上の人が決めた意見で行動する、トップダウンの部活にはしたくないと思い、しゅせいを大切にするチームうんえいをしました。チームうんえいはうまくいきましたが、チームのせいせきるわず、下部リーグのせんに行くか行かないかというぎわで、本当に大変なシーズンでした。
しゅせいを大事にしたいけれどもうまくいかなかった、というくやしさや学びが、しゅせいを重んじる社風でうまくいっているリッツ・カールトンという会社をぼうするきっかけにもなり、結果的に今につながっています。また、トップダウンのしきにしたくないという思いは今も変わっておらず、会社うんえいにも生かされていると思います。

当たり前のうらにあるものや、にちじょうにあることの大切さに気づいてほしい

当たり前の裏にあるものや、日常にあることの大切さに気づいてほしい

わたしは今、「Kizukuプロジェクト」という活動をしています。これは子どもたちといっしょに街のせいそう活動をするプロジェクトで、ゴミ拾いを通じて、さまざまなことに気づいてほしいという思いがあります。例えば自分の住んでいる場所がいつもきれいなのは、だれかが毎週決まった曜日にゴミをかいしゅうしたり、そうをしてくれたりしているからです。その当たり前のうらにあるものに気づいてほしいし、何不自由なく、ゆたかに幸せにらせていることのうらにあるものにも気づいてほしいです。かんしゃする機会がえれば、社会はもっとゆたかになると思います。
今の世の中は、ものごとのや、フォロワー数、ねんしゅうなどの数字にが置かれがちですが、そういったなことでなくても、目の前には大事なことがたくさんあると思います。あいさつだったり、ありがとうというかんしゃだったり、あやまることだったり。そうということを通じてそういった大切なことに気づき、みなさんが人生をゆたかにしていってくれることを心から願っています。

私のおすすめ本

ミヒャエル・エンデ
目の前の忙しさに負けて忘れてしまいがちな、人生において大切なことに気づかせてくれる本です。今は「タイパ」とか「コスパ」とかよく言われますが、AIや技術の進歩でどんどんできることが増えてしまい、限られた時間の中でできることが人間のキャパシティを超えているような状況です。そんな中で大切にしていかなくてはいけないことが、何十年も前に書かれていることに驚かされますし、何度読み返してもいい本だなと思います。
西岡 常一
家業を継ぐにあたって「清掃」の意義や価値に気づくなかで、いろいろな本を読みあさっていたときに出合いました。著者の西岡さんは宮大工で、法隆寺の解体大修理で棟梁を務めた方です。お寺の建物に使用する木材にはそれぞれ癖がありますが、それをしっかりと見極めて組み上げることで強い建物ができる。経営者としての在り方みたいなことを学んだ一冊です。

もっと知りたいこの仕事人

取材・原稿作成:川口 有紀(フリート)・東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫