人の命をあずかる,責任ある仕事
飛行機を操縦するコックピット
体調管理も仕事のうち
パイロットの仕事は,月曜日から金曜日の9時から17時まで,というような,決まった働き方ではありません。4日間勤務して3日間休むなど,自分が担当する飛行機によってバラバラです。また,国内や海外など,自分の担当する飛行機がどこに向かうのかによってもスケジュールが違います。
私の場合は,だいたい月に2〜3回がヨーロッパやアメリカなど長時間の飛行,そのほかは国内線や東南アジアなど近距離の飛行,というペースが多いですね。朝早くに飛ぶ飛行機を担当する場合,早朝3時に起きて空港に向かう,というようなことも珍しくありません。また,海外では時差もあるので,普段から体調管理や睡眠をしっかりとることも,パイロットの大切な仕事のひとつです。
入社後,2年間はアメリカでパイロットになる訓練を
パイロットになるための採用試験は,専門の大学で学んでいる人や,理系の人でないと受けられないということはありません。もちろん女性もOKで,JALでも女性のパイロットが活躍しています。
JALでは,パイロットして採用されると,2年間は,アメリカにあるパイロットの養成学校でさまざまな訓練や勉強をします。飛行機を操縦するために必要な知識,英語を話す力,小型飛行機の免許を取っての飛行訓練も行います。寮での生活で,パイロットを目指すのですが,仲間と支え合いながらとても楽しく充実した訓練生時代を過ごせました。
自分で飛行機を操縦して初めて空を飛んだのも,アメリカでの訓練生時代です。みなさんが想像するような大きなジェット機ではなく,小さなプロペラ機でしたが,自分の操縦で空を飛べたことに,とても「自由」を感じてワクワクしたのを今でも覚えています。
厳しい訓練と試験を乗り越えて
「世界中を訪れたい」という夢を実現できる仕事
一人前になるまでに時間も努力も必要なパイロットですが,そんな毎日を乗り越えられたのは,パイロットになって世界のいろいろな国をみてみたいという夢があったからです。大学時代から,いろいろな国に行く仕事がしたいと考えていたのですが,最初は「パイロット」という職業は思い浮かばず,商社に入ろうと考えていました。空港からも遠く離れた地方都市で生まれ育ち,飛行機やそれに関係して働く人も身近ではなかったので,ほとんどイメージがありませんでした。たまたま友人から「海外に行くなら,パイロットになる方法もある」と言われて,初めてパイロットという職業を意識しました。
就職活動中に,実際にパイロットとして働いている先輩の話などを聞くうちに,そのやりがいをもって働く姿に感動して,かっこいいなと憧れるようになりました。その結果,世界中を飛び回り,誇りと責任を持って働くパイロットになりたいと強く思うようになったんです。
読書が教えてくれた,知らない世界を知る喜び
小学生の頃の私は,外で野球とサッカーをするのが大好きな子どもでした。一方で,本を読むのも好きで,ヘルマン・ヘッセやコナン・ドイルなどの海外の小説が大好きでした。特に自然についての描写などが気に入って,よく読んでいたように思います。そういう小説が,いろいろな空想のヒントになって,自分だけの世界で空想を楽しんだりもしていました。
「いろいろな国に行ってみたい」と思うようになったのも,高校時代に読んだ『深夜特急』の影響です。この本は,作者の沢木耕太郎さんが,さまざまな国を旅する様子を描いたノンフィクションです。同じような体験に憧れて,大学時代はアルバイトでお金を貯めて海外旅行に行く,ということを繰り返していました。本の中だけで知っていた「海外」を実際に体験したことが,「もっといろいろな広い世界を見たい!知らない国を見てみたい」という思いにつながりました。
「やるべきときはちゃんと努力すること」で夢を実現
子どものうちは,自分が将来,どんな仕事をしたいのか,わからないという人も多いと思います。でも,今,将来の夢が見つかっていなくても,あせることはありません。今は,目の前にある,自分が夢中になれることを一生懸命やっていればいいと思います。それはスポーツだったり,友だちと遊ぶことだったりするかもしれません。それに夢中になっているうちに,いつの間にか次の扉が開いて,やりたいことが見えてくると思います。
また,これからの未来をつくるみなさんには,SDGsについても,ぜひいろいろ知ってもらいたいですね。JALでは,航空会社として飛行機の二酸化炭素を出す量をできるだけ減らすよう,さまざまな努力をしています。パイロットが飛行機の操縦をするときに,燃費をよくするために,着陸後にエンジンを片方だけ止めて地上走行するのもそのひとつです。これから飛行機に乗る機会があったら,「この飛行機は環境のために,どんな工夫をしているのかな?」と,考えてもらえたらうれしいです。空の旅がもっと楽しいものになると思います。