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神奈川県に関連のある仕事人
1980年 生まれ 出身地 東京都
しょくひんきぎょうのけんきゅうしゃ食品企業の研究者
古田千恵ふるたちえ
子供の頃の夢: 獣医師
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
たんぱく質・アミノ酸の研究を通じて世界中の子供たちにおいしくて栄養のある食品を提供する。
自己紹介
好奇心旺盛です。自分の知らないことを知ったりするのが好きです。また今は二人の女の子の母親です。休みの日はこどもたちとおもいっきり遊んだり、家事をしたりしています。
出身高校
桐朋女子高等学校
出身大学・専門学校
東京農工大学農学部獣医学科

※このページに書いてある内容は取材日(2019年08月05日)時点のものです

世界中の人たちにおいしくて栄養のある食品を

世界中の人たちにおいしくて栄養のある食品を

わたしあじもとかぶしき会社という食品会社で,栄養が足りていない世界中の子どもたちのためのせいひんについて,研究を行っています。また,あじもと社は,世界中の国々で食品を商品としてていきょうしているので,それらの国の人々がおいしく,健康になるための食事メニューをていあんしたり,商品をつくったりする研究もしています。

わたしは小学校1年から約6年間をアメリカでごして,中学校1年のときに日本に帰国。ちょうどそのころ,文筆家のはたまさのりさん(ムツゴロウさん)の本が大好きで,しょうらいじゅうになりたいと思うようになりました。じゅうにもいろいろあって,わたしは動物病院で動物のりょうをするのではなく,動物の研究にきょうがありました。動物のさいぼうでんを研究して,人の役に立つことがしたいと考えていたのです。
じゅうがく部のある大学に進学し,6年間は勉強づけの日々。「じゅうせい学研究室」という研究室にしょぞくして,種によってちがう,動物のはいらんすうについて研究していました。

食を中心にさまざまな研究ができるあじもと社へ

食を中心にさまざまな研究ができる味の素社へ

大学時代はとにかく毎日,研究で,それが楽しくてしかたがありませんでした。研究というのは,自分で「こうじゃないか」というせつを立てて,実験をり返し,せつしょうめいする作業です。思い通りの結果にならないことのほうが多いのですが,それでも,自分のせつ通りの結果が出ると,すごく達成感があるし,うれしく,そのよろこびに向けて,コツコツと地道な研究を続けることにじゅうじつ感を感じていました。

大学卒業後も,研究者として働きたいと決めていましたが,どんな場所で働くかということを考えなくてはなりません。大学で研究を続ける,国や自治体の研究機関で働く,ぎょうけんきゅうしょくとしてしゅうしょくする,という選択肢がありました。 その中で,あじもと社にしゅうしょくした理由は,第一に食品の研究はわりと早く結果が形になりやすいということです。同じメーカーでも,せいやくメーカーでは,薬の開発に何十年という時間をかけます。それにくらべると,食品ならば研究成果を早く商品にすることで,より多くの人たちのためになるのではないか,と考えました 。 もうひとつ,わたしのやりたいような研究ができるかんきょうが整っていたこともあります。しょうらいけっこんして子どもを育てながら,仕事が続けやすいこともポイントでした。 さらに,あじもと社の商品は,食品だけでなく健康,動物,医薬品原料など,さまざまな分野に広がっています。その分,いろいろなことにチャレンジできるのもりょくでした。

アフリカで栄養が足りない子どもたちのために

アフリカで栄養が足りない子どもたちのために

入社して最初の2年は,サプリメント商品のゆうようせいひょうする仕事をたんとう。そのひとつが,アミノさんを使った栄養じょ食品「アミノバイタル(R)」のシリーズの「アミノバイタル(R)パーフェクトエネルギー」です。これはスポーツをするときに後半まで切れない全力のパフォーマンスのはっささえるために開発された商品です。どうしたらそのような働きがじつげんできるのか,ざいや配合の組み合わせなどを研究していました。
その後,あじもと社の100周年事業「ガーナ栄養かいぜんプロジェクト」にプロジェクトメンバーとして参加することに。アメリカのボストンにある大学に1年間りゅうがくしながら,アフリカの栄養不良の子どもたちのための栄養じょ食品「KOKO Plus(ココプラス)」の研究を行いました。 このプロジェクトへの参加は,わたしにとって「より多くの人においしくて栄養があるものをとどけたい」という,あじもと社に入社したときのゆめじつげんする大きなチャンスでもありました。

アメリカの大学でのもう勉強と,ガーナでの試験じゅん

アメリカの大学での猛勉強と,ガーナでの試験準備

アメリカでは,さいせんたんの国際栄養学を学びながら,大学内にあるこくさいNPOと協力してガーナでの研究プロジェクトのじゅんを進めていきました。大学のじゅぎょうは英語でせんもん用語が多く,帰国子女のわたしにとってもとてもむずかしかったですね。
ハードな勉強の合間に,ガーナのプロジェクトも進めなくてはなりません。長期休みを利用して,ガーナを何度かほうもん。生後6カ月から18カ月の子どもをたいしょうに,「KOKO Plus」の栄養こう試験をするじゅんを進めていきました。
「KOKO Plus」というのは,たんぱくしつとアミノさんのリシン,ビタミン・ミネラルなどのりょう成分をふくむ栄養じょ食品です。ガーナではkoko(ココ)とばれるトウモロコシを用いたおかゆが,でんとう的なにゅう食として子どもたちにあたえられています。トウモロコシは,たんぱくしつ,リシンというアミノ酸,ビタミン・ミネラルがきょくたんに少ない食べ物です。そのため,トウモロコシ主体のkokoだけでは,アミノさんのバランスがくずれてたんぱくしつが不足することに。その結果,子どもたちはまんせい的な栄養不足で,身長がびない低身長となってしまうのです。

村を歩き回って,協力してくれる赤ちゃんさが

村を歩き回って,協力してくれる赤ちゃん探し

栄養がほうな「KOKO Plus」をにゅう食にぜれば,子どもの成長に必要な栄養バランスが十分整うことになります。その「KOKO Plus」のこうたしかめるというのが,ガーナで行ったプロジェクトです。じっさいに1年間「KOKO Plus」を食べてもらったグループ,ビタミン・ミネラルを食べてもらったグループ,何も食べてもらわなかったグループ(すべてのグループの母親には栄養教育を行いました)に分けて,その成長をかくする試験を行いました。
試験のために最初にやったのは,協力してくれる赤ちゃんさがしです。1つのグループで300人,全部で900人の赤ちゃんを集めなくてはいけません。路地を歩き回ってさがしたり,お母さんたちが集まるような場所に出向いたり。村の村長さんに試験の協力をお願いしに行ったりもしました。 また,実際に試験をする現地の人にやり方を教育する,という仕事もありました。試験は長期間にわたるので,げんの人に定期的に,身長・体重をせいかくに測ってもらうトレーニングを行いました。

アフリカで実感した,本当の「ようせい

アフリカで実感した,本当の「多様性」

アフリカの人たちは,おおらかで楽天的。「こんなのかんたん。できる,できる」と言ってくれるのですが,なかなか言った通りにやってもらえないことも多くて(苦笑)。でも,これは試験なので,マニュアル通りにきちんとやってもらわないと意味がありません。そこを伝えるのに,苦労しましたね。 「どうしてちゃんとやってくれないんだろう」となやんだり,イライラしたりもしましたが,今となっては,とてもいいけいけんだったと思います。「文化がちがうということは,こういうこと」「本当のようせいって,こういうものなんだ」と実感できました。 わたしは1年間の参加でしたが,試験自体はその後も続き,最終的に3年かかりました。結果として,「KOKO Plus」を多く食べた子のほうが,身長が高いだけでなく,ふくつうなどのきゅうせいえんしょうになりにくい,ひんけつが改善されるということがわかっています。
(※げんざい,ガーナの栄養かいぜんプロジェクトはこうえきざいだんほうじんあじもとファンデーションへ活動を移管しています。)

ほこりとせきにんを感じる「食」をとどける仕事

誇りと責任を感じる「食」を届ける仕事

アメリカから帰国後,けっこん,出産をて,二人の子どもを育てながら研究所で働いています。今,主にやっているのは,海外の国でおいしくて健康になるメニューのための栄養せっけいをまとめる仕事です。アフリカのけいけんよりも,さらに「多くの人に,おいしくて健康になれるものを」というゆめに近づいている気がします。
食品メーカーとして,たんじゅんに「モノ」をていきょうするだけでなく,せきにんを持って多くの人に栄養をとどけることがわたしたちの使命だと感じています。これはSDGsのゴール2「をゼロに」,ゴール3「すべての人に健康とふくを」,さらにゴール12「つくるせきにんつかうせきにん」にも関係します。 そのためにも,わたしの研究をたくさんの人たちにかいしてもらうことが必要。それが,世界中にサスティナブル(持続可能)な健康をとどけることになると思います。食や栄養の仕事に関わる人間として,大きなせきにんを感じていますが,その分,やりがいもあります。

自分の「好き」を大事にしてかんせいばす

自分の「好き」を大事にして感性を伸ばす

アフリカでは,食べることの大切さという,ほんしつてきなことに気づかされました。日本で生まれ育ったわたしたちは,「食べたいのに食べられない」というけいけんがほとんどありません。アフリカの人たちにとって,食べることは美しいことです。そして,「食べられることは,本当に幸せなこと」なのです。それに気づいた今,食の研究にたずさわれることに,いっそうほこりと幸せを感じています。
しょうらい,なりたいしょくしゅくためにも,みなさんには,楽しいと思えることに全力投球する子ども時代をごしてほしいですね。勉強でも,遊びでもいいんです。楽しいこと,好きなことを一生けんめいめていたら,必ずチャンスがめぐってきます。
今はまだ,好きなことがわからない,という人は,自分のかんせいを大事にすることから始めてみてください。無理に好きなことをつくる必要はありません。いつか,ふと,自分がきょうを持てることが見つかるはずです。そのときに,自分の「好き」な気持ちをのがさないためにも,今のうちから,「自分が何を好きなのか」「どんなことが楽しいのか」をびんかんに感じ取るようにしてもらいたいですね。

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国分 拓
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取材・原稿作成:日経BP