仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1985年 生まれ 出身地 沖縄県
子供の頃の夢: 農家
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
多種多様な人に話をいてもらうオンラインサービス「LivelyTalk(ライブリートーク)」をかくし、うんえいする。
自己紹介
自然が大好きで、自分で育てた野菜やった魚を料理して食べるときに、この上ない幸せを感じます。りは海より川で、あゆなどの魚をって楽しんでいます。運動やそうも好きですが、ひまがあればていたいと思う日もあります。

※このページに書いてある内容は取材日(2023年12月14日)時点のものです

くこと」を仕事に。よりよい社会を目指して、会社を起業

「聴くこと」を仕事に。よりよい社会を目指して、会社を起業

わたしは2020年にかぶしきがいしゃLively(ライブリー)を立ち上げ、代表とりしまりやくつとめています。わたしたちの会社がていきょうしているのは「LivelyTalk」というライブコミュニケーションサービスです。LivelyTalkは、話をいてほしい人(メンバー)と(ホスト)をつなぎ、気軽にトークを楽しんでポジティブな気持ちになってもらうためのオンラインサービスです。このサービスは、話をいてほしい人がお金をはらってトークルームに参加する仕組みになっています。げんざいせいゆたかで多様なけいけんを持つ100名以上のホストがざいせきしており、さまざまな年代のお客さまの話をいています。2022年に運用を開始して半年で、1,000回のトークをじつげんしています。
日本ではカウンセリングのようりつは6%ていとも言われており、だれかに話をいてもらうことはあまりいっぱんてきではなく、自分の弱さを相談することはずかしいと思っている人も少なくありません。「話をいてもらうことは自分を整えるために必要である」とポジティブにとらえる人がもっとえて、にちじょうてきだれかに話をいてもらうことでつねに自分をよいじょうたいたもつ人がえていく、そんな社会になればいいなという願いを持って、サービスをていきょうしています。

お客さまにいつでも「よかった」と思っていただくために

お客さまにいつでも「よかった」と思っていただくために

わたしの仕事は、主に「さいよう」「教育」「こうほう」の3つです。「さいよう」はホストのさいようです。定期的に説明会を開き、おう書類をかくにんしたり、く力がそなわっているかどうかを面談でかくにんしたりしています。さいようした方の「教育」については、よりよいかたじっせん方式でどうしています。さらに、会社の「こうほう」にもたずさわっています。会社の事業をプレゼンテーションするイベントに参加し、サービスにきょうを持ってくださる会社や自治体をさがして働きかけたり、くことの大切さを伝えるけんしゅうじっしたりしています。人前で話すことに少し苦手しきはありますが、会社をはってんさせるために必要なことなので、せいいっぱい、取り組んでいます。
どの仕事も大切ですが、ホストのしつを高めることが会社の強みになると考えており、とりわけ「教育」に力を注いでいます。ホストとしてさいようした方には、初めに約3時間のけんしゅうを受けてもらい、その後も教育コンテンツで学ぶ機会をつくるなど、話をく力を高められるふうをしています。わたしはいつもサービスをおすすめするさいに「ホストをげんせんしてさいようし、しっかりと教育しています」と伝えていますが、ホストに話をいてもらう体験があまりよいものでなかったら、次もお願いしたいと思ってもらえないですよね。いつでも「よかった」と言っていただけるように、ホストの姿せいややる気、かいぜんしようという気持ちを高められるように気をつかっています。お客さまからよい声がとどいたときなどは、必ずホストに伝えるようにしています。

よりよい働き方のせんたくやしたい

よりよい働き方の選択肢を増やしたい

わたしは大学を卒業後、リハビリのせんもんしょくである作業りょうほうとして働いていました。けっこんして子どもが3人生まれた後は、仕事からはなれていました。
その後、オンラインでお客さまの話をく仕事を始めたところ、とても楽しいと感じたことが、会社を起業するきっかけになりました。しっかりと耳をかたむけて話をくことで相手の心を満たすという役目に、大きなやりがいを感じました。社会で働きながらお金をいただくことで、同じように社会で働く夫との立場や発言の重みが同等になったような気がして、自分自身のをもっとみとめられるようになりました。
周りをわたすと、働く上でのせんたくが少なかったり、昔のわたしと同じように自分のについてなやんだりする子育て中のお母さんがたくさんいました。そうした人たちがもっと気軽に働ける仕事があればよいのにと思ったときに、「話をく」仕事が、働き方のせんたくの一つになればと思ったんです。「話をく」仕事は家でできますが、社会ではしょくぎょうとして広く知られておらず、かくりつされていないと感じていました。そのため、もっと社会に広めて、かつやくできる人をやしたいと思ったんです。その思いが「くコミュニケーションにチャンスをつくり、どくらす」というメッセージをめたLivelyのそうせつにつながりました。

頭の中におもえがいたサービスを、ゼロから立ち上げる大変さ

頭の中に思い描いたサービスを、ゼロから立ち上げる大変さ

LivelyTalkのサービスをゼロから立ち上げるまでは、必要なこと一つ一つをかべのように感じました。というのもわたしは起業する前、いっぱんぎょうでのきんけいけんも、しん事業をつくるけいけんも、ましてやけいえいけいけんもなく、このサービスを立ち上げたいと思っても何から始めればいいのか、まったくわからないじょうたいだったのです。
そこでまず、自治体がうんえいする起業えんせつで3か月間、事業計画書の作り方からマーケティングのことまでを勉強しました。次にじっせんが大切だと考えて、そこで出会った会社のけいえいしゃに働きかけて、けいえいを学ばせてもらうためにしょうで働かせてもらったこともあります。結果として、その方がわたしの事業に共同けいえいしゃとして参加してくれることになり、げんざいまでその方とわたしの2名で働いています。けいえいやマーケティングのしきおぎなってくれたのは、ありがたいことでした。
けれども、二人ともウェブサービスにたずさわったことがなかったので、その点はこうさくしました。会社を起業し、サービスのプラットフォーム(ウェブサイト上の場)ができ上がる前に「話をく仕事をしませんか?」とホストをしゅうし、「この時期から始めます」とホスト希望者にげていました。しかし、システムが予定通りにでき上がらず、希望者の熱量が冷めてしまう、というトラブルもありました。プラットフォームができるまではお客さまをびこむこともできず、落ち着かない日々をごしました。サービスの開発にはきんも必要なので、さまざまなじょきんについて勉強するなど、きん集めにもいっしょうけんめい、取り組みました。

くこと」にを見いだしてもらえる体験がうれしい

「聴くこと」に価値を見いだしてもらえる体験がうれしい

大変なこともありますが、ホストやお客さまのよろこぶ声をくと「このサービスをつくって本当によかった」と思います。
人の話をくのがとくな人は、どちらかというとひかせいかくの人が多いのではないかと思います。そのため、「話をく」という自分のとくなことが生かされると「相手の話をくことで、こんなによろこんでもらえるんですね」と大きな自信を持ってもらえます。わたしは、く力は人を幸せにする力、社会のどくやす力だと思っているので、き上手な人がかつやくできることをよろこばしく感じます。また、「ホストの方が自分の話に共感して、いっしょに泣いてくれました」という声をお客さまから聞いたり、お客さまが「本当にいい体験でした」と言って何度もリピートしてくれたりすると、どくやされるけいけんをしていただけて本当によかったと思います。
わたしたちは「話をく」仕事を社会にしんとうさせるために、「このサービスをどのくらいの人数に使ってほしいか」というけいえい上のすう目標を立て、目標達成のために日々、努力しています。共同けいえいしゃとは、たとえ大変なことがあっても「だれかにやらされているわけではなく、やりたくてやっているから、そもそもハッピーだよね」という話をしています。

まず、うんえいする自分たちが生き生きと楽しそうに

まず、運営する自分たちが生き生きと楽しそうに

LivelyTalkの「lively」とは生き生きと、という意味の言葉です。共同けいえいしゃとは「まずわたしたちがlivelyな気持ちでいないと、周りにそういった気持ちが広がらないよね」という話をしています。わたしたちうんえい側が生き生きと楽しそうにすることによって、の仕事にきょうを持っている人も「LivelyTalkのホストになりたい」と思ってくださるし、ユーザーからも使いたいと思われる。だから自分たちがつねに元気なじょうたいでいるように心がけています。
スタートアップぎょうせつりつから間もない、新しいぎょう)なので事業をどうに乗せることも目標の一つではありますが、たとえうまく行かなくなることがあっても、そこでられるものもぜったいにたくさんあると思っています。そのためちょうせん自体がすごく楽しいですし、学びのある日々にかんしゃしながら事業にのぞんでいます。
サービスをうんえいする上では、長期的な目線を持つように気をつけています。というのも、わたしは物事を短期的な目線で考えがちで、かつストイックなせいかくのため「今日、ぜったいにこれをやりきらないとねむらないぞ」というような気持ちで、よく仕事をしてしまうんです。でも、共同けいえいしゃには「会社けいえいちょうきょマラソンなので、100mダッシュのように仕事をしても意味がないよ」と言われます。その言葉を心にきざんで、自分にも会社にも人にも長期的な目線を持とうと考えています。ホストを育てるさいには、自分のようにストイックな姿せいを求めてしまいそうなときもあるので、少し立ち止まって「その人には、何が必要なのか」というてんで考え直して言葉をかけるなど、 長い目で人を育てることをしきしています。

く力ってすごい」という原体験が、今の仕事につながっている

「聴く力ってすごい」という原体験が、今の仕事につながっている

小さなころから人の輪に入っていくひとなつっこい方で、とても活発なタイプでした。中学時代は県内でゆうしょうするほどのテニスのでんとうこうで、テニス部のキャプテンをしていました。部員どうのけんかも時々あったので、部員の話をよくいてチームがえんかつに回るように気をつかっていました。
大学に入るために勉強をしていたときに、今の仕事につながるいんしょうてきな出来事がありました。それは、当時92さいだったが交通にあったときのことです。パワフルだったは入院りょうとリハビリをて家にもどって来たのですが、家のとんから起き上がろうとせず「生きていても仕方がない」と言ったのです。わたしはとてもショックを受けて「体がかいふくしても心が元気じゃなければ、人生を生きているとは言えないのかもしれない」と強く感じました。そのとき自分にできることは話をくことだと思い、が元気だったころの話をかえいていました。するとそのころの活気を思い出したのか、たきりだったが、すわったりえたりしてわたしを待つようになり、最終的に、いつも通りにリビングでごすようになったのです。そのときに感じた「く力ってすごい」という体験が、今の仕事につながっていると思います。

目の前の出来事にしんけんに向き合っていれば、道は開けてくる

目の前の出来事に真剣に向き合っていれば、道は開けてくる

よく「やりたいことはどうやって見つけるんですか?」と聞かれることがありますが、わたしの子どものころをかえってみると、めいかくにやりたいことはありませんでした。成長するていで「テニスの強い高校に行きたい」「農家になりたい」という希望を持つこともありましたが、周りの反対意見をくつがえすほどの熱意はなかったように思います。最初にりょうしょくいたのも、「手にしょくをつけるとしゅうしょくしやすいから」と母親にすすめられたことがきっかけでした。
そんなわたしですが、目の前の出来事にすごくいっしょうけんめいに取り組んでいたら自分の進路が見えてきたので、みなさんも心配することはありません。今は気づいていなくても、すでに好きなことやとくなことは自分の中にそんざいしていて、いずれその道にみちびかれるのではないかと思っています。だからやりたいことをあせってさがさなくても、目の前にあることを大切に、しんけんに向き合うことをおすすめします。自分の人生を好きなように生きることが何よりも大切だと思います。

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取材・原稿作成:星野 祐子(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行