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神奈川県に関連のある仕事人
1979年 生まれ 出身地 広島県

鈴木(すずき) 雅剛(まさよし)
子供の頃の夢: 社長
クラブ活動(中学校): バスケットボール部
仕事内容
いまよりもいい社会を未来世代に残すために、社会に新しい仕組みをつくる。
自己紹介
外ではしっかりしていると言われますが、家ではいろいろ抜ぬけていると言われます。休みの日は、仕事ときどき釣つり。ルアー釣つりは、魚がどこにいるのか、どうすれば魚に興きょう味みを持ってもらえるのかを考える必要があります。釣つりをするときの頭の使い方がマーケティング(商品やサービスを売るための仕組みをつくること)と同じなので、楽しいだけでなく、勉強にもなっています。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2022年01月17日)時点のものです

「社会課題を解かい決けつするビジネス」しかやらない会社

「社会課題を解決するビジネス」しかやらない会社

私わたしは株かぶ式しき会社ボーダレス・ジャパンの代表取とり締しまり役やく副社長を務つとめています。私わたしたちの会社の特とく徴ちょうは、「社会課題を解かい決けつするビジネス」しかしないことです。社会課題解かい決けつに取り組む非ひ営えい利り団だん体たい(NPO)との違ちがいは、寄き付ふ金きんで運うん営えいするのではなく、事業として利り益えきを出して運うん営えいしている点です。
日本を含ふくめ世界には、貧ひん困こん、差別、環かん境きょう破は壊かいなど、さまざまな社会課題があります。たとえば「いくら作物を育てて売っても、生活が楽にならない農家」「外国人だからといって、家を借りられない人々」など、困こまっている人たちがたくさんいます。そういった社会課題を解かい決けつする事業のことを「ソーシャルビジネス」と呼よび、そのための会社を立ち上げる人のことを「社会起業家」といいます。ボーダレス・ジャパンでは、解かい決けつしたい社会課題を持つ社会起業家たちを生み出し、サポートする仕組みをつくることで、社会課題の解かい決けつに取り組んでいます。その仕組みとは、「資し金きんや人材、ノウハウ(専せん門もん的てきな知ち識しきやコツ)といった、会社の運うん営えいに必要な資し源げんをグループで共有する」というものです。この仕組みを運用し、15年目となる現げん在ざいまでに、世界15か国、45社で構こう成せいされるグループに成長しました。
最初は、創そう業ぎょうメンバーで新しい事業を生み出していましたが、それでは生み出せる事業の数は限かぎられています。より多くの社会課題を解かい決けつしていくためには、社会起業家を増ふやす必要があると考えました。また、社会を良くしたいと考えている人はたくさんいるにも関わらず、事業を立ち上げるには多くの困こん難なんがあるため、時間がかかったり、中にはあきらめてしまったりする人もいます。それでは、社会にとってあまりにもったいないので、事業を立ち上げるハードルを下げ、良い社会づくりを加速していくための仕組みをつくることにしたのです。

社会起業家のチャレンジを後あと押おしする「恩おん送り」のシステム

社会起業家のチャレンジを後押しする「恩送り」のシステム

新しい会社の立ち上げは、ボーダレスグループ全社の社会起業家たちで構こう成せいされる「社長会」で、会社を立ち上げたい人が、新会社のプランを発表するところから始まります。私わたしたちのグループは全社が並へい列れつの関係です。そのため「社長会」では社長全員が平等に一票ずつ持っており、全員が新会社の立ち上げに賛さん成せいすると、新しい会社を立ち上げることができます。一人でも反対した場合は、立ち上げることはできませんが、事業プランを練り直し、再さい度どチャレンジすることができます。全員の賛さん成せい票ひょうを得えることは難むずかしいと思うかもしれませんが、これまで「社長会」で議ぎ論ろんされたもので、実じつ現げんしなかった事業は一つもありません。それは、私わたしたちの会社には「チャレンジしたい人はチャレンジすべきだ」という考え方があり、「社長会」は事業をより良いプランに磨みがき上あげるためのものだからです。
新会社の立ち上げが決定すると、必要な資し金きん、人材、ノウハウなどの提てい供きょうを受けることができます。この資し金きんは、ボーダレスグループの社会起業家たちがそれぞれの事業で出した利り益えきを共同で貯ためている、共通ポケットから支し給きゅうされます。私わたしたちはこのシステムを「恩おん送り」と呼よんでいます。「恩おん返がえし」ではなく、「恩おん送り」というのがポイントです。「恩おん返がえし」はもちろん大切ですが、相手と自分の間の関係のみで終わってしまいます。そうではなく、「受けた恩おんを次の人に送る」からこそ、より多くの人が幸せになる、良い循じゅん環かんが生まれるのです。

たとえ失敗しても、再さいチャレンジができる

たとえ失敗しても、再チャレンジができる

私わたしたちは、社会課題解かい決けつのためのビジネスを、事業ごとに、あえて一つ一つの会社として立ち上げています。その理由は、社会起業家たちが自立自走しながら「自分の解かい決けつしたい課題を自分の責せき任にんで解かい決けつしていってほしい」と考えているからです。もしも、事業がうまくいかず、資し金きんがなくなってしまったら、その事業は終しゅう了りょうになります。しかし、一度失敗したら終わり、というわけではありません。もう一度挑ちょう戦せんしたいという意い志しを持っていれば、失敗から学んだことを生かし、再さい挑ちょう戦せんすることができます。なぜ再さい挑ちょう戦せんできるようにしているのかというと、まず、良い社会をつくるためだから。そして「社長会」で新会社の立ち上げを決める際さいに、「全員が賛さん成せいして」その事業を「自分ごととして」応おう援えんしているからです。新しい会社がうまくいかないのは、もちろんその社会起業家自身の責せき任にんでもありますが、「社長会」で賛さん成せいした全員の責せき任にんでもあります。そのため、新しい会社がうまくいかなかったときは、もっとサポートできることはなかったのか、と全員が責せき任にんを感じます。そして、再さいスタートすることになったときは、全員がそれまで以上にできる限かぎりのサポートをするわけです。
また、私わたしたちが立ち上げる会社の特とく徴ちょうとして、ほとんどの事業が「その業界のことをまったく知らない人が起業している」という点があります。その業界のことを知っていると、これまでの常じょう識しきにとらわれてしまいがちで、新しいものを生み出すことが難むずかしくなります。何も知らないからこそ、常じょう識しきを超こえるアイデアが生まれ、実じつ現げんしたときに世の中に大きな影えい響きょうを与あたえることができると考えています。

「ボーダレスアカデミー」で社会起業家の卵たまごを育てる

「ボーダレスアカデミー」で社会起業家の卵を育てる

私わたしの仕事は大きく分類すると三つあります。一つ目は社会起業家たちの相談に乗ることです。「事業で困こまったことがあり、突とっ破ぱするアイデアやノウハウが欲ほしい」といった相談が来るので、一いっ緒しょに考えたり、アドバイスをしたりしています。
二つ目はグループ全社の資し金きん、人材、法ほう律りつ業ぎょう務むを支ささえる「バックアップスタジオ」の運うん営えいです。ボーダレスグループでは、各社に経けい理りや人事、法ほう務むといった会社の経けい営えいに必要な部ぶ署しょを置くのではなく、「バックアップスタジオ」がまとめてその機き能のうを担になっています。ここでは、各社の資し金きん調達や働き方に関する制せい度ど設せっ計けい、働く環かん境きょうの整せい備びなどを行い、社会起業家たちが自分の事業に集中できるようにサポートしています。
三つ目が、社会起業家を育てる社会起業家養成所「ボーダレスアカデミー」のサポートです。吉よし本もと興こう業ぎょうの芸人養成所(NSC)の社会起業家版ばんだと考えてもらうとわかりやすいかもしれません。私わたしたちは、社会起業家を生み出してきた方法やその過か程ていで得えた知ち識しきを、グループ内に留とどめずに、広く公開することが社会を良くすることにつながると考えています。社会課題を解かい決けつしたいという思いを持っている人は、日本のさまざまな地ち域いきにたくさんいます。そういう人たちが一歩を踏ふみ出だすためには、自分らしい事業プランをつくり、これならできる、と自信を持つことが重要です。「ボーダレスアカデミー」では、事業がソーシャルビジネスとして成功するためのプランを一いっ緒しょに磨みがき上あげていき、しっかりとしたプランを完成させて卒業してもらうことを目指しています。また、卒業生が実じっ際さいに起業することになった場合、資し金きん面めんで困こまらないように、銀行に協力してもらい、起業のためのお金を借りやすくする仕組みをつくったり、経けい営えいをサポートしたりしています。

「これまでの当たり前」を乗のり越こえなければ、社会は変わらない

「これまでの当たり前」を乗り越えなければ、社会は変わらない

仕事をする中で大変なことは、既すでに定着したルールがある社会の中に、常じょう識しきを超こえた新しい仕組みを組みこんでいくことです。これまでの社会のルールが大きな壁かべになることがあります。しかし、その壁かべを乗のり越こえなくては、世の中は変わりません。とても大変なことですが、だからこそ、頭をひねってアイデアを出し、仲間と助け合いながら事業を進めていくことが重要だと考えています。
そういった壁かべを乗のり越こえて提てい供きょうした新しい仕組みが、困こまっていた人々の生活を大きく変えている状じょう況きょうを目まの当あたりにしたときには、大きなやりがいを感じます。現げん在ざいは、私わたし自身が直ちょく接せつ困こまっている人たちに会って仕事をしているわけではありませんが、たとえば、「生活に困こまっていた農家の方の生活がこう変わった」「ホームレス状じょう態たいになりそうだった若わかい子が就しゅう職しょくして自立できた」という話をグループの社長たちから聞くことがあります。そういうときに、自分たちみんなでつくった仕組みが社会を変え、喜よろこんでくれている人がいることを実感します。そして、さらに社会を良くするための努力をしていきたいと改めて思います。

失敗の芽をつぶしてはいけない

失敗の芽をつぶしてはいけない

仕事をする中で心がけているのは、「親ぶらない」ことです。社会起業家たちには苦労してほしくないので、つい、「親のように」指し導どうしそうになることがあります。しかし、そうしてしまうと、その瞬しゅん間かんから、指し導どうされる側は自分で考えなくなります。すべてを自分で決めなくてはならないのに、私わたしに答えを求めるようになり、心のどこかに逃にげどころができてしまうのです。また、人は失敗しなければ本当の意味で成長することはできないと思っています。うまくいかない状じょう況きょうを受け止め、自分一人ですべてをできるわけではない、と自分の弱さを受け入れてはじめてプライドを捨すてることができます。そして、周りの人に「助けてほしい」と言えるようになります。仲間からの助けを受けながら、最終的に成功することで、「ありがとう」と心の底から思えるようになるのです。結果、それまでよりも他者や社会に目を向け、事業をより良いものにすることに力を注いでいくことができるのです。そのため、先回りしてアドバイスをして、失敗の芽をつぶしてしまうことは良くないと考えています。
それから、私わたし自身が「清せい廉れん潔けっ白ぱく(心が清くて私し欲よくがなく、後ろ暗いことのまったくないこと)であること」も大事だと思っています。「社会を良くするためには共有・循じゅん環かんが大事です」という話をしているのに、自分だけが儲もうけて良い思いをするような行動をしていたらつじつまが合いませんよね。利り益えきを得えることは、事業を続けるうえで必要です。その利り益えきをどうやって生み出すか、何のために使うのか、を考えることがとても大切です。そして何より、利り益えきは自分一人で生み出したものではなく、仲間みんなで助け合って生み出したもの。そう考えると、自分が良ければいい、ではなく、自然と「社会や他者」を意い識しきして行動するようになります。

目指したのは、「働くことを生きがいにできる社会」

目指したのは、「働くことを生きがいにできる社会」

私わたしは大学生のころに塾じゅく講こう師しのアルバイトをしていました。そのころに感じたのが、「子どもと向き合うやりがいのある仕事なのに、塾じゅく講こう師しの同どう僚りょうの中にはお金を稼かせぐために仕方なく働いている人が多いのはなぜだろう?」ということでした。通つう勤きん電でん車しゃの中にも、つらそうな顔で仕事に向かう人がたくさんいます。人生の多くの時間を費ついやす「仕事」を通じて、人が苦しむのはおかしいと感じ、「働くことを生きがいにできる社会」を目指したいと思いました。そして「働く」を生きがいにしていく挑ちょう戦せんをするために、経けい営えい者しゃになることを決めました。
起業のための経けい験けんを積もうと入社した前ぜん職しょくで、ボーダレス・ジャパンの社長である田口一成と出会います。彼かれは当時「貧ひん困こんをなくしたい」と話しており、それならば、「社会課題を解かい決けつする会社を一いっ緒しょに立ち上げよう」ということになりました。彼かれは、私わたしがそれまでに出会った誰だれよりも純じゅん粋すいで思いやりがあって、そして新たな社会を実じつ現げんしていくスケールの大きな人です。こういった人こそが社会を変えていく人間だと感じたので、彼かれが前面に立って事業を推すい進しんし、私わたしが経けい営えいを支ささえるという役やく割わり分ぶん担たんをすることで、同どう志しとして共に歩み続けています。

大学2年で集中して勉強したことが、今の土台になっている

大学2年で集中して勉強したことが、今の土台になっている

子どものころは、山口県の玖く珂が町ちょうというところに住んでいました。好こう奇き心しん旺おう盛せいで、大自然の中で走り回っていたずらばかりしていました。中学では先生に怒おこられて「帰れ」と言われると、本当に帰ってしまうこともありました。筋すじが通らないことで怒おこられると納なっ得とくできず、反はん抗こうすることもあったので、生意気な子どもだったと思います。勉強はあまりしませんでしたが、短期集しゅう中ちゅう型がたで徹てっ底てい的てきにやるタイプです。目標から現げん在ざいにさかのぼって今やるべきことを考え、計画を立てて実行していました。
大学のころはアルバイトばかりしていたのですが、大学2年生の1年間だけは、集中して勉強をしました。経けい営えい学部でしたが、進しん化か論ろんや生物学、心理学などに興きょう味みがあり、好きな先生の授じゅ業ぎょうをたくさん受じゅ講こうしました。特に憲けん法ぽうの授じゅ業ぎょうで先生が話していた脳のう死しについての議ぎ論ろんには、勝手にレポートを書いて提てい出しゅつするぐらい、はまりました。この時期に集中して多くの本を読み勉強したことが、今の土台になっています。このころから興きょう味みがあるのは「人とは何か?」ということです。私わたしが今やっている経けい営えいも本ほん質しつ的てきには「人間を理り解かいすること」なのだと思います。人がどう変われば、地球や生き物を含ふくめたみんなの幸せを育めるのか。それを探たん究きゅうしていくことが私わたしのテーマになっています。

チャレンジすることでしか、やりたいことは見つからない

チャレンジすることでしか、やりたいことは見つからない

私わたしがみなさんに伝えたいのは「チャレンジをしよう」ということです。チャレンジというと、難むずかしいことに挑ちょう戦せんするイメージがあるかもしれませんが、ささいなことでも、今までやったことのない新しいことをやってみることは、すべてチャレンジです。興きょう味みを持ったり面おも白しろそうと少しでも思ったら、考えすぎずにできることからやってみたり、図書館に行って調べてみたり、大人に聞いてみたり、まずは行動してみてください。うまくいかないかも、みんなにどう思われるか心配、と誰だれもが不安になります。あなただけではありません。だからこそ、相談したり、実じっ際さいに行動したりすると、それに勇気づけられて応おう援えんしてくれる仲間が必ず現あらわれます。そして行動を通じていろんなことを知って深め、応おう援えんされていくうちに自信を持てるようになり、いつの間にか自分のやりたいことが見つかっています。
また、失敗をすることも大事です。失敗は決して悪いものではありません。うまくいかなかったという事実は、その理由を教えてくれます。理由がわかれば、うまくいく方法を考えて再ふたたびチャレンジするチャンスが得えられます。「失敗も成功のうち」なのです。私わたしも前ぜん職しょくでは、任まかされていた新しん規き事業の立ち上げがうまくいかなかった経けい験けんがあります。その失敗があったからこそ、「自分のためではなく、相手の視し点てんに立って考えなければうまくいかない」ということがわかりました。みなさんもぜひ、興きょう味みや関心のあることがあったら、頭の中で考えるだけでなく、失敗を恐おそれずに行動してほしいと思います。

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広中 平祐
数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した、日本の数学者の本です。壁にぶつかりながらも、自分のやりたいことを見つけ、物事を深く探求し、新たなものを創り出していく。その道のりが実際のエピソードとともに描かれています。苦難があっても自分が関心を持ったものを探究することこそが、とても愉しく、生きることそのものだと教えてくれる、素敵な本です。

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取材・原稿作成:國分 唯未(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行