日本財団

海・川の仕事人

聞き書き甲子園 事例・ワークシート

「聞き書き甲子園」の活動紹介

「聞き書き甲子園」は,全国の高校生が,森・川・海の「名人」を訪ね,その知恵や技,生き方を「聞き書き」し,記録・発信する活動です。高校生は,造林手,炭焼き職人,木地師,漁師,海女など,自然と関わるさまざまな職種の名人と出会います。そして一対一でインタビューし,その人の語り口をそのまま生かしながら,作品をまとめます。

名人が働く現場を見て,仕事に対する姿勢を学び,将来の夢や進路を考えるきっかけになったと語る高校生もいます。あるいは,農山漁村の課題と向き合い,環境保全や地域活性化の活動に主体的に取り組むようになった高校生もいます。「聞き書き」はキャリア教育として,また,ESD(持続可能な開発のための教育)やアクティブ・ラーニングのひとつの手法としても評価されています。

小・中学校の授業での実践

近年,「聞き書き」を,小・中学校の総合的な学習の時間に取り入れたいという相談を,先生方から受けることが多くなりました。たとえば,岡山県備前市立日生中学校では,長年,牡蠣養殖の体験学習に取り組んできました。しかし,「体験だけを続けても学びがない」ことを先生方が懸念し,漁師の「聞き書き」に取り組むことになりました。

「聞き書き」にご協力いただいたのは,日生町漁業協同組合(日生町漁協)の漁師さんたちです。日生町漁協は,30年以上前からアマモ場の再生活動にも取り組んでいました。「海のゆりかご」ともいわれるアマモ場の再生活動がはじまった経緯と,日生の伝統漁法である壷網漁との関係。近年盛んな牡蠣養殖のこと。消費者とのつながりやこれからの漁業への思いなど,さまざまな話を漁師さんから聞く中で,中学生たちは,これまで「ただ眺めていた海」を,より身近に「自分ごと」として感じるようになり,さらに海の環境を良くするために,漁師さんたちと一緒にアマモ場の再生活動にも取り組みたいと考えるようになりました。そして全学年が活動に取り組むようになったのです。

「聞き書き」の成果は,新聞やポスターにまとめるとともに,演劇にして舞台で上演しました。ひとりひとりが実際に「聞き書き」した漁師を演じ,その喜びや苦悩,願いを代弁し,伝えたのです。「聞き書き」が生徒の主体的な学びのきっかけとなるとともに,地域の多くの方々の共感も得て,備前市が里海・里山を中心に地域資源を生かしたまちづくりを進めるきっかけともなったのです。

「聞き書き甲子園」をはじめ,小・中学校での「聞き書き」と海洋教育の取り組みについては,以下の冊子にまとめています。どうぞご覧ください。

聞き書き&調べるワークシート

聞き書き甲子園や小・中学校の総合的な学習での取り組みのノウハウを生かしたワークシートをご用意しました。
ワークシートは2種類あります。ぜひ,授業でご活用ください。

  • 聞き書きワーク①~⑤:
    聞き書きのインタビューをするためのワークシートです。
  • 調べるワーク ①~⑤:
    「海・川の仕事人」の特集に掲載されているインタビュー記事を読んで,わかったことをまとめたり,調べたり,考えるためのワークシートです。
助成:公益財団法人 日本財団
協力:NPO法人 共存の森ネットワーク,愛南漁業協同組合
取材・執筆:大浦 佳代/イラスト:友永 たろ,川島 星河,広野 りお