港の産業
それぞれの港には得意分野がある
それぞれの港には得意分野があります。漁港はもちろん漁業・水産業に特化した港です。港湾は,それぞれの得意分野から,おおまかに「商港」「工業港」「軍港」「マリーナ」などと呼ばれます。商港は,生活雑貨や食料品を積んだコンテナ船や旅客船が多く出入りする港です。東京港,横浜港,名古屋港,大阪港,神戸港,博多港など多くの港が商港です。
工業港は工業地帯の港で,川崎港,鹿島港,四日市港,水島港などがあります。原油,石炭,鉄鉱石,ボーキサイトなどを船で運び入れ,隣接する工場で精製や加工をします。
軍港は,自衛隊やアメリカ軍の基地がある港で,横須賀港,舞鶴港,呉港,佐世保港,那覇港などがあります。またマリーナは,ヨットをはじめレジャー船が利用する港です。
大きな港湾は,複数の顔をもつこともあります。東京港の代表的な顔は商業港ですが,商港区,工業港区,漁港区,マリーナ港区などに区分けされ,効率よく利用されています。
魚市場を中心に発展する水産都市
「みなと町」という言葉がありますが,大きな港のある町では,港を中心に町が栄えます。大きな漁港がある町は「水産都市」と呼ばれることもあります。魚が水揚げされる魚市場を起点に,魚を売買する仲卸業,製氷業,活魚車や冷蔵車などの運送業,水産加工業,冷凍・冷蔵の倉庫業などが,つながりあって発達します。また,朝市や魚食の文化が観光客を呼びこむ町もあります。
漁業を支える業種もさまざまで,漁業協同組合,製網業や漁具屋,魚を入れる箱を扱う箱屋,造船所や船の計器類を扱う業者などのほか,漁船に食糧や生活物資を補給する業者,船に真水を給水する業者もあります。さらに,大きな港には船員のための銭湯が必ずありますし,息抜きをする飲食店街もにぎわいます。
港湾のさまざまな産業や機関
商業港では,船のコンテナを積み下ろす巨大クレーンが並ぶコンテナターミナルなど岸壁の荷揚げ施設を起点に,物流の業種がつながっていきます。運送業,貨物を運びこんで保管や分類をする倉庫業のほか,輸出入に関わる書類を扱う代理店業などもあります。
国際貨物を扱う港には,動植物と食品を調べる国の検疫機関があり,病害虫を防ぎ食の安全を守っています。また密輸品や偽造品を監視し,関税を徴収する税関もあります。
工業港には,原油の精製業,製鉄業,プラスチックなどを作る化学工業や,石炭や天然ガスを燃料にする火力発電所などが立地します。ほかにも,穀物が運ばれる港には製粉工場や家畜の飼料工場が立地するなど,輸入品目によって港周辺の産業も変わってきます。
港の安全や管理に関する仕事も多く,海上保安庁や消防署の仕事をはじめ,大きな船の運航や離着岸に欠かせない水先人やタグボートの仕事,海面のごみを集める清掃船の仕事,海底にたまった砂を掘るしゅんせつ船の仕事など,さまざまです。