日本と世界の漁業
日本の漁業の歴史
海に囲まれた日本では,縄文の昔から集団で漁が行われてきました。江戸時代には現在の漁法がほぼ整ったといわれています。明治以降,国の奨励金による近代技術の導入で漁船は大型化し,遠洋漁業が発達して日本の漁業は急速に発展しました。
第2次世界大戦後しばらく,占領軍によって日本の操業海域は制限されました。しかし1952年に制限が撤廃されると,日本は再び世界の海を目指し,1972年に漁業生産量世界一の水産大国になります。ところが1982年から国際条約により,排他的経済水域内(陸から200海里=約370km)内で他国の漁船は操業できなくなります。このため日本の遠洋漁業は縮小しました。
しかし,日本の排他的経済水域は世界第6位の広さです。資源を守りながら新しい時代の漁業が工夫されています。
日本漁業の今と世界
現在の日本の漁業生産量は436万トン,生産額は1兆5856億円です(2016年)。生産量はピークだった1984年の3分の1,生産額はピーク時の1982年の半分です。漁業者も減りつつあり,15万3千人(2017年)。そのうち4割が65歳以上です。しかし年間2千人が新たに漁師になっています。情報通信技術を取り入れたり,流通や販売の工夫をしたり,海の環境を守るための活動をしたり,時代に合わせて生き生きと働く若い漁師も増えています。
世界で見ると,日本の漁業生産量は,2010年代には世界第8位前後です。現在の世界一は中国です。漁船漁業だけでなく養殖業の成長も著しく,2016年には世界の漁業生産量の40%を中国が占め,2位のインドネシア(12%),3位のインド(5%)に大差をつけています。
世界規模で進められる資源の保護
世界各国が漁業を行うようになると,資源の保護が課題となります。そのため,各国が協力して資源管理に取り組んでいます。たとえば太平洋クロマグロの資源管理は,日本を含む沿岸諸国が加盟する「中西部太平洋まぐろ類委員会」で決定されます。太平洋クロマグロは,2014年に国際自然保護連合のレッドリストに掲載されました。これを受けて同委員会は,とくに資源に影響する30kg未満の漁獲量を半分に減らす決定をしました。
漁業を持続可能にするための努力が,世界各国の協調のもとで進められています。