漁師になるには
漁業は多様性に富む仕事
「漁師」と聞くと,筋骨たくましい「海の男」をイメージするかもしれませんが,じつは漁業はとても多様性に富んだ仕事で,漁師さんの働き方,生き方はさまざまです。
実際,船酔いする漁師さんはけっこういますし,機械化により,筋力のさほどない人でも漁業はできます。伝統的な海女さんや夫婦で漁をする人だけでなく,最近は1人で漁船に乗って海に出る女性もいます。
通信技術の発達で,漁村は世界と直接つながるようになりました。ネット通販や飲食店との契約,加工販売などに挑戦する漁師さんも出てきています。また,鮮度保持の工夫や,資源や環境を守る取り組みを発信して,自分がとったり育てたりした水産物をブランド化するなど,努力を消費者にまで伝える動きも進んでいます。
漁業の規模と働き方
漁業には,遠洋漁業,沖合漁業,沿岸漁業があり,漁場や働き方が異なります。遠洋漁業は,大きな漁船に数か月から1年も乗り,世界の海で魚を追います。沖合漁業は,数日から数週間の航海を繰り返します。沿岸漁業は日帰りで,漁業の種類によっては海上の作業は日に2,3時間で,陸の仕事のほうが多いことさえあります。
経営の形や規模もさまざまで,遠洋漁業や沖合漁業の多くは,漁業の会社が経営し,漁師さんは給料をもらって働いています。沖合漁業や沿岸漁業では,数人が乗り組む中小企業のような漁船もあります。日本で一番多いのは,家族や1人で漁をする独立漁師で,漁だけでなく操船や機器類の知識と技術,経営能力も求められます。
雇用か独立経営かで異なる道のり
漁師への道はいくつかあります。まず「雇用」か「独立経営」か,で分かれます。雇用の場合は,他の職業のように求人を探します。求人情報は全国漁業就業者確保育成センターのサイトなどで得られるほか,漁業の会社側と顔を合わせて相談できるマッチングフェアも東京・大阪・福岡などで毎年,開催されています。
独立漁師になるには,研修制度(1年~数年)を利用するのが近道です。多くの漁法には漁業権が必要で,漁業協同組合(漁協)に加入しないと実質的に漁はできないためです。漁協に加入するには,1年以上の漁業の実績が必要です。研修中は,師匠となる漁師さんのもとで技術を学び,その間は生活費が助成されます。修了後には,漁協などが漁船や漁業権の取得など,独立の準備をしてくれるのが一般的です。
漁師は高齢化が進み,移住者の受け入れに積極的な漁村地域は増えています。漁師になりたい場合,自分の適性に合わせて働き方を選べば,漁師への道は必ず開けるはずです。