森・川・海のつながり
漁師さんが守る森
昔から,日本の海辺には「魚つき林」と呼ばれる森林があります。「魚が寄りつく林」という意味で,漁師さんたちが大切に守り育ててきました。健全な森では,木の根がしっかりと張るため土壌が雨水をため込み,少しずつろ過して海に流します。大雨でも土砂が海に流れ込むことがなく,海の生き物は守られます。また海岸の木陰が魚などの隠れ場所になるとも考えられてきたようです。
河口から内陸にさかのぼった,川の上流や水源の神様に,漁師さんたちが信仰を寄せる例もよくみられます。漁師さんたちは,山の栄養分が川を通って海に流れ込み,海藻や魚介類を育てることをよく知っているのです。
現在でも,漁師さんたちによる植林活動が,全国で広く行われています。
川は大地の血管
川は「大地の血管」にたとえられます。海水が蒸発した水蒸気がやがて雲になり,陸地にぶつかって冷やされ,雨や雪になって降ります。山に降った雨は川となり,細い流れが集まってしだいに太い流れになり,大地を潤し,やがて海へと注ぎ込みます。地球の水の循環の中で,川は重要な役割をはたしているのです。
川はただの水の通り道ではありません。大地のミネラルや木々の落ち葉などの栄養分も運びます。海では,川が運ぶ栄養分で育つ植物プランクトンや藻類を食物連鎖の基盤として,多くの生き物が命のドラマを繰り広げています。
海と川は,両方向の関係
川と海のかかわりは,一方通行ではありません。海と川を行き来する生き物が,たくさんいるのです。ウナギ,モクズガニ,シロウオ,それに「清流の女王」ともいわれるアユも,1年間という短い一生のうち半分を海で,半分を川ですごします。
サケも,生まれた川に戻ることでよく知られています。渓流で釣れるヤマメも,じつはサクラマスというサケやマスの仲間です。川の上流でふ化して半年後に海に下り,海で小魚などをたっぷり食べ,40〜50cmにまで育って川に戻ってきます。サクラマスはぐんぐん川をさかのぼり,はるか上流の渓流で産卵すると一生を終えます。海の栄養で育ったサケやマスは,川で死ぬことで,海の栄養分を陸地に届けているともいえます。
水は地球上を循環し,生き物の命も互いにつながり合い循環しています。海の環境保全は「森・川・海のつながり」という,大きな視野で考えることが重要です。