ブルーカーボン
地球温暖化の原因
産業革命以降,地球の平均気温は約1℃上がり,このままだと2100年には,産業革命以前と比べ最大4℃上昇する,という予測もあります。
地球温暖化の原因は,二酸化炭素(CO2)を主とする「温室効果ガス」の排出です。CO2は,植物の化石である石炭や原油などの「化石燃料」の使用や,森林を伐採することなどで排出されます。植物は光合成でCO2を取り込み,炭素(C)にかえて体内に貯えますが,化石燃料を燃やしたり森林を伐採したりすると,植物が体内に閉じ込めていた炭素が,CO2となって大気中に放出されてしまうのです。
陸のグリーンカーボン,海のブルーカーボン
森林など陸の植物が貯える炭素を「グリーンカーボン」といいます。いっぽうで最近,海にも地球温暖化をおさえる働きがあることがわかってきました。海藻などの海の植物も光合成をしてCO2を吸収し,体内に炭素を貯えているのです。これは「ブルーカーボン」と呼ばれ,新たなCO2の吸収源として注目を集めています。
ブルーカーボンは,沿岸の浅い海に分布しています。コンブなどがしげる「海藻の藻場」,種子植物であるアマモの仲間がしげる「アマモ場」,植物プランクトンが豊富な「干潟」,そして熱帯や亜熱帯の河口に分布する「マングローブ林」などです。
また,枯れた海藻などは海底に堆積しますが,この堆積物もブルーカーボンです。陸地とは違い海底は風化しにくいため,植物が堆積する海底は,巨大なCO2の貯留庫になっています。たとえば瀬戸内海のアマモ場の調査では,枯れたアマモが海底に積もり,数千年単位でCO2を閉じ込めていることがわかりました。
CO2削減の目標達成に向けて
2015年に採択された「パリ協定」では,2100年の気温上昇を産業革命以前と比べて「2℃より十分低く保つとともに,1.5℃に抑える努力を追求する」という目標を定めました。そして各国がCO2排出削減の努力目標を国連に提出し,達成に向けて前進することを義務づけています。日本は「2030年度のCO2排出量を2013年度に比べ26%減らす」目標を提出。さらに2020年には「2050年にはCO2排出量を実質ゼロにする(カーボンニュートラル)」と,国際社会に宣言しました。
これらは,とても高い目標です。達成には,自然エネルギーへの転換などのほか,CO2を吸収する植物を増やすことも不可欠です。そして,森林などグリーンカーボンに加え,藻場や干潟などのブルーカーボンを増やす努力も必要になります。地球温暖化を食い止めるためには,海の緑の大切さも理解され,守られなくてはなりません。