海洋プラスチック
プラスチックごみ,何が問題?
今,大量のプラスチックごみが海に流れ出し,環境問題になっています。いわゆる「海洋プラスチック」の問題です。
海洋プラスチックは,観光や漁業などの産業に損失を与えるほか,海の生態系にも影響を及ぼします。多くの生き物が食べ物と間違えて食べ,今やプランクトンの体内からもプラスチックが見つかっています。プラスチックには有害な化学物質を吸着する性質があり,食物連鎖によって人体への影響も心配されています。
人工的に作り出されたプラスチックは分解されにくく,いつまでも海に留まり続けます。しかも,劣化すると砕けて,細かな「マイクロプラスチック」となり,これを回収するのは不可能です。また,海岸に漂着するごみはごくわずかで,大部分は広い海を漂い,やがて深海に沈みます。深海のごみも,人の手で拾うのは困難です。
なぜプラスチックが海へ?
プラスチックは原油から作られます。安価で加工しやすいこともあり,1950年代から大量生産され,多くが使い捨てにされてきました。日本はとくに,食品などの容器包装用プラスチックの使用量が多く,1人当たりの使用量は世界第2位です。
ごみは回収され適切に処理されているはずですが,ごみ捨て場で散乱したごみやポイ捨てされたペットボトルなどが,海へと流れ出ます。自然災害によって流出することもあります。また,日本はプラスチックごみの一部を「資源」として東南アジアの国々や中国に輸出してきました。しかし,受け入れ国で環境汚染の原因となり,海に流出するケースもあったことから国際問題に。そのため,受け入れ国の国内法や国際条約で,プラスチックごみの輸出入は禁止されつつあります。
市民と企業が連携してごみの再生へ
今,各地で海岸の清掃活動が行われています。ただ,漂着ごみは塩分や水分を含んでいるため焼却できず,多くが埋め立てられています。しかし埋め立てる場所にはかぎりがあり,土壌汚染のおそれも指摘されています。
そこで最近,海洋プラスチックを再生する新しい技術や仕組みが注目されています。大手飲料メーカーなど,さまざまなメーカーが,再生した海洋プラスチックを含む商品を開発し,販売を始めています。じつは海洋プラスチックを再生するには,海岸でプラスチックを拾い集めた後,成分ごとに分別し,洗うといった手間がかかります。そこで,清掃活動をする市民とプラスチック再生に取り組む企業が連携し,社会全体で海洋プラスチックの再生に取り組む,新たな仕組みも生まれつつあります。