仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1989年 生まれ 出身地 愛知県
鬼頭きとう 和江かずえ
子供の頃の夢: 船長
クラブ活動(中学校): バレーボール部
仕事内容
こくさい航路の大型貨物船に乗り,船のそうじゅうや貨物の管理をする。
自己紹介
食べることが大好きで,どんな国の料理でも食べます。料理をするのも好きで,少しずつレパートリーをやしています。航海中,フィリピン人のコックさんに和食の料理法を教えることもあります。

※このページに書いてある内容は取材日(2019年05月30日)時点のものです

さまざまな大型貨物船に乗る仕事

さまざまな大型貨物船に乗る仕事

わたしは,海運の会社であるかわさきせんかぶしきがいしゃで,航海士として働いています。海運とは船を利用したうんのことで,物を運ぶ貨物そうと,人を運ぶりょかくそうがあります。また,こくさい航路で世界中をめぐる外航と,日本国内の沿えんがんを行き来する内航にも分けられます。わたしが乗っているのは,世界の海をめぐる外航の貨物そうせんです。
貨物船にもいろいろな種類があります。わたしはこれまでに,コンテナ船,自動車船,LNG船に乗りました。コンテナ船とは,どんな荷物でも“コンテナ”とばれる大きな箱に入れて運べる船です。自動車船は,いろいろなタイプの自動車のほか,しんかんせんの車両も運べます。LNGというのはえき天然ガスのことで,LNG船には,球形の大きなタンクがならんでいます。このほかにもかわさきせんには,原油などを運ぶタンカー,小麦や大豆,てっこうせきなどを運ぶばら積み船など,さまざまな大型貨物船があります。

船のそうじゅうや貨物の管理をする

船の操縦や貨物の管理をする

大型貨物船は,全長がおよそ300メートルあり,東京タワーをよこだおしにしたくらいの長さですが,乗組員は20人くらいしかいません。船の乗組員は,めんきょを持ってせきにんのある立場でぎょうを行う「しょくいん」と,しょくいんよりを受けてこうはんやエンジンのせいじっしたり,乗組員の食事をつくったりする「部員」とに分類されます。しょくいんは,行うぎょうにおいて船長,機関長,航海士,機関士に分けられます。
わたししょくである航海士は,おもにそうせん(船をそうじゅうすること)や貨物の管理をたんとうしています。機関士は,船のエンジンをはじめ,船内のあらゆる機械類の管理を受け持ちます。航海士と機関士は,「かい」という国家かくをもつとくしゅのうしょくです。かいには等級があり,船の大きさや航行するかいいきによって,乗船が必要なかいの等級と人数が国のほうりつで定められています。
わたしが乗る外航の大型貨物船には,しょくいんとして船長と,一等航海士,二等航海士,三等航海士の3人の航海士が乗ります。げんざいわたしは二等航海士です。その他のしょくいんとして,機関長と,一等機関士,二等機関士,三等機関士の3人の機関士が乗ります。部員は10人てい,そのうちコックは2,3人います。
船長は船の最高せきにんしゃで,安全な航海のためのをとり,船外とのれんらくも船長が行います。一等航海士から三等航海士は,交代でそうせんりをする「航海当直」を行い,そのほかにも次にあげるようなやくわりがあります。一等航海士は,貨物の管理と船体せいせきにんしゃです。二等航海士は,船長のとして航海計画を立てるほか,航海計器の管理,医薬品の管理などもたんとうします。三等航海士は,しょうぼう・救命せつの管理てんけんなどがやくわりです。船長のとうそつのもと,各航海士が自分のやくわりせきにんをもち,安全な航海のために力を合わせています。

1日2回,4時間の航海当直

1日2回,4時間の航海当直

船は24時間,休みなく進みます。「航海当直」は4時間ごとの3こうたいせいで,当直を受け持つ時間帯は決まっています。ベテランの一等航海士は,海上が見えにくい夜明けの4時~8時と,にちぼつの16時~20時をたんとうします。三等航海士は8時~12時と20時~24時,二等航海士は0時~4時と12時~16時のたんとうです。航海している場所に合わせて,船の中のこくを調整することもあります。
航海当直はこうはん部員と2人で行います。かじにぎるのはこうはん部員で,航海士は航海計画にしたがい,そうがんきょうなどで進路をりながら,こうはん部員に英語のせんもん用語で号令を出し,こうはん部員はそれにしたがってかじを取ります。たとえば右へ5度かじを切るときは「スターボード(みぎかじ),ファイブ(5度)!」と発声します。
自動車はハンドルを切ったらすぐに曲がりますが,船はかじを切ってから曲がり始めるまでに時間がかかります。進路が変わるまでにかかる時間と船の進み方を頭の中で計算して,数百メートル手前から号令を出すこともあります。けいけんと訓練が必要な仕事です。
港に着くと,航海士は貨物を積んだりげたりする「やく」の仕事が待っています。これも4時間ごとのこうたいせいです。やくは,こうわんせつやくの会社や代理店などとやりとりしながら進めます。安全かつてきかくに,しかも短時間で終えなければならず,気がけません。

じゅうじつしている船内の生活

充実している船内の生活

かわさきせんでは,1回の乗船期間はおよそ6か月です。半年分の衣類や生活ざっを持って乗船するので,荷物が多くて大変です。
船内での生活は,なかなかかいてきです。部屋はビジネスホテルのようなしつで,シャワーとトイレがついています。船はれてふないするというイメージがあるかもしれませんが,大型船なので,それほどれることもありません。
二等航海士のわたしの1日は,0時の航海当直から始まります。4時に一等航海士とこうたいしたら,さいげんいんになるようなものがないか,船内の見回りをします。それからは自由時間で,わたしは6時ごろます。11時に起きて,12時から16時まで2回目の航海当直。そのあとは自由時間です。17時半から夕食をみんなといっしょに食べて,シャワーを浴び,よくじつ0時の航海当直までみんします。
船内での休日は月に2日ほどです。航海当直は船長が代わってくれます。自由時間には,本を読んだりDVDを見たりしていますね。最近の船では太平洋などの広いかいいきに出てしまってもえいせい通信により電話やメールができ,家族や友人とのコミュニケーションには不自由しません。

せきにんのある仕事

責任のある仕事

船の上で働いている人数が少ないため,一人一人のせきにんは重いです。航海当直では,当直中の航海士1人で大きな貨物船のそうせんせきにんを負います。シンガポール・マラッカかいきょうやヨーロッパの沿えんがんかいいきなど,船が航行できるかいいきせまいのに他の船が多く通航している場所を航行するときは,しんけいがすりるような思いがします。最終的な船のせきにんは船長にあり,夜中に船長を起こしてたいおうしてもらったこともあります。
海運のやくわりの大きさには,やりがいを感じています。日本では,生活に必要なものの多くを海外からにゅうしています。また,にゅうした原料から工業せいひんなどを作り,そのせいひんしゅつも行っています。しゅつにゅうひんの99%以上が船によって運ばれていることは知っていますか?日本人の生活をささえている大型貨物船の安全な運航には,大きな使命とやりがいを感じています。
しかしこの使命を果たすには,ぜったいを起こしてはなりません。わたしたち航海士のちょっとしたミスが,命にかかわるかんきょうかいにつながりかねません。とくに,原油をまんさいしたタンカーやえき天然ガスなどを運ぶガス船では,航海士にじゅつはんだんりょく,強いせいしんりょくなど,高いのうりょくが求められます。乗船中は,つねに気持ちをめています。

外国のこうでの楽しい上陸

外国の寄港地での楽しい上陸

仕事でさまざまな国に行けるのも,この仕事の大きなりょくです。わたしが入社後に初めて乗ったのはコンテナ船で,こくさい航路の花形ともいわれるおうしゅう航路でした。イギリス,ベルギー,ドイツ,オランダの港々にこうするたびに上陸して,市街地を歩き,げんふんを味わいました。ただ,こう時間は長くても1日半,短いと半日足らずです。大きな港は市街地からはなれているので,町とのおうふくだけで時間がいっぱいということもあります。
安全に楽しむためには,注意しなければならないこともあります。夜に出歩かないようにしたり,国によってはできるだけはだかみかくしたりする場合もあります。その国をかいすることも大切です。

外航の船長さんにあこがれて

外航の船長さんにあこがれて

わたしは小さいころから,「しょうらいは船長になる」と決めていました。それは,近所に外航の船長さんが住んでいたからなんです。外国のかおりがするしんで,あこがれましたね。
そのゆめを持ち続け,中学卒業後に,船員を養成するこうとうせんもんがっこうに入学しました。当時は校内で学ぶのは4年半で,最後の1年は実習船での航海実習です。卒業後に,こうじゅつけんしんたいけんごうかくすれば,さんきゅうかいかくがとれ,大型貨物船に航海士として乗船できます。
わたしこうとうせんもんがっこうを卒業後,2010年10月に,かわさきせんに入社しました。かわさきせんかいじょうきんは,6か月の乗船と3か月のきゅうかえすサイクルです。ただし,仕事はかいじょうきんだけではなく,オフィスで働くりくじょうきんがあります。海上と陸上の両方のけいけんを積み重ねることで,船のけいけんつちかったしきけいけんをもって,陸上で仕事をするさいに,船の安全な運航のための手助けができるようになるという考え方からです。

ゆめを持ち続ければ,必ずかなう

夢を持ち続ければ,必ずかなう

子どものころから体を動かすのが好きで,放課後は近所の公園でどろんこになって遊んでいました。けっこも得意で,小学校ではずっとリレーのメンバーでした。その一方で読書も大好きでした。毎日のように,学校の図書館で本を借りてきて読んでいました。
わたしはどちらかというと,おっとりとしたせいかくなので「自分のこのせいかくは,船乗りには向かないのでは?」と,おもなやんだこともあります。節目のひとつが,こうとうせんもんがっこうの3年生を終えたときでした。4年生に進む道と大学へんにゅうの分かれ道で,「船はあきらめて大学に行こうかな」と,まよいました。けれどやっぱり子どものころからいだいていた「船長になりたい!」という気持ちが強くて,結局,その道をすすむことにしました。
ゆめじつげんするまでには苦労もあるだろうし,なやむことも多いと思います。でもゆめえがき,その思いを強く持ち続けていれば,なやみになやんだ末に,ちゃんと道が開けるものだと思います。それを信じて,みなさんも自分のゆめを持ち続けてほしいなと思います。

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取材・原稿作成:大浦 佳代・東京書籍株式会社/協力:公益財団法人 日本財団,NPO法人 共存の森ネットワーク