社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2008年04月11日)時点のものです
僕(ぼく)は,花を使ったいろいろな作品をつくっています。いろんな人からいろんな仕事を頼(たの)まれるんですよ。例えば,大きな企業(きぎょう)から「たくさんの人を集めるイベントを開催(かいさい)するので,そのイベントに来た人が楽しい気持ちになるような作品をつくってほしい」といわれたりします。最近ではこういうこともあったんです。ある相撲(すもう)の横綱(よこづな)から「お世話になった行事の人が引退(いんたい)する。その人が裁(さば)く最後の取り組みに自分が出るから,必ず勝って花道で花を渡(わた)したい。そのための花をつくってほしい。」って。2時間近くも熱く話をしてくれたんですよ。こんな風に,花って,誰(だれ)かのことを思って,飾(かざ)ったり贈(おく)ったりするもんなんです。だから,つくる作品の種類や大きさはちがっても,僕(ぼく)の仕事は,人からそういう思いを聞いて,その思いを託(たく)されることが多いんです。
そういう思いを聞いたら,次はスタッフと話し合いながら,どんな形で実現(じつげん)するかを考えていきます。その話し合いでは,「こういう場所で,こういう目的で使うから,花にはこういうことが求められて……」って,大人らしくちゃんと筋道(すじみち)立てて話もするんですけど,でも,「オレは絶対(ぜったい)“三角”やと思うねん!」とか,もう自分しか分からんような,けど「これしかない!」という自分のイメージを話すことも多いんです。あとは,「ここに来るまでにこんなオモロイことがあってん」とか,仕事と直接(ちょくせつ)関係ないことを,休み時間の子どもみたいに話したりもしてるんです(笑)。でもね,言われたことだけを考えて,大人のアタマでマジメにつくっても,できたもんはなんかオモロナイ。感性(かんせい)をぶつけたり,ワイワイ雑談(ざつだん)しながらつくった方がいい作品ができるんです。
だいたいのプランができたら,次は,花や木,花を飾(かざ)る器や素材(そざい)を選びます。花や素材(そざい)を見ているうちに,インスピレーションが沸(わ)いてきてプランを変更(へんこう)するなんてしょっちゅうです。スタッフからはよく「赤井(あかい)さん,もう時間ないですよ!」と怒(おこ)られてますけどね(笑)。でも,時間が許(ゆる)す限(かぎ)りはいろいろやってみる。そうやって,できるだけいいもんをつくりたいんです。花や木を切って器などに飾(かざ)る実際(じっさい)の作業は,イベント会場など飾(かざ)る場所でやることが多いですね。大きいもんは,スタッフ10名くらいと一緒(いっしょ)につくります。主に僕(ぼく)は全体のバランスや色の調子などを判断(はんだん)して,「この枝(えだ)はもう少し短くしよう」とか,スタッフに指示(しじ)を出すのが役目。もちろん,自分でハサミで枝(えだ)を切ったりもしますけどね。そうやって全体の調子を見て判断(はんだん)するうちに,プランをガラッと変えることもあります。花って生き物なんで,時間がたつにつれて,どんどん表情(ひょうじょう)を変えていきますから。「ジャッジ(判断(はんだん))-結果」の繰(く)り返(かえ)しなんです。その場で調子を見て判断(はんだん)して,また作業して,形という結果が出たら,またそれを見て判断(はんだん)して……。フラワーデザインの「つくる」は,そういう「つくる」なんです。
イメージや形が浮(う)かばないときは,ホンマに苦労しますね。そういうときは,映画(えいが)を観に行ってガーッ泣いたり(笑),行く先を決めずにジョギングしたり。一度アタマと気持ちを空っぽにして,また考え出します。
作品ができたときは,すごい達成感を感じます。それは,イベントのシンボルとなるような大きな作品をつくったときも,小さなブーケをつくったときも同じ。どんな花も,「そこに来た人を喜ばせたい」とか「自分の思いを伝えたい」とか目的があります。それをかなえることが,僕(ぼく)にとって一番うれしいんです。
僕(ぼく)は,フラワーデザイン(僕(ぼく)は『装花(そうか)』といってますが)をするために,生まれてきた人間だと思っています。両祖父母(そふぼ)は花作り農家,両親は花屋をやっていたし,僕(ぼく)自身,花は遊び道具でした。飾(かざ)るのはもちろん,噛(か)んで味をみたりね(笑)。実家の店で使う飾(かざ)りをつくったり,家に飾(かざ)ってある花を勝手に変えたり。中学のときは,卒業式に胸(むね)に飾(かざ)る造花(ぞうか)がカッコ悪かったんで,自分でドーンとめちゃめちゃ大きいやつを生花でつくったんです。それ見た友だちが「カッコええな」っていうからみんなの分もつくったりしてたんですよ。だから,この仕事をするのは,僕(ぼく)にとって,とても自然なことなんです。
子どもの頃(ころ)から決まりごとがキライでしたね!華道(かどう)を習っていたんですが,先生が言うのとは全然違(ちが)うものをつくったりしてました。「花瓶(かびん)に逆(さか)さまに花を突(つ)っ込(こ)むとどうなるやろ?」とか(笑)。今でも,ポリシーとか「花はこう飾(かざ)るべきや」みたいな,そういう決まりごとをつくらないようにしています。それが,僕(ぼく)のポリシーかな。
将来(しょうらい)のこととか,あんまり心配せんでもええと思いますよ。無責任(むせきにん)かも分からんけど(笑),僕(ぼく)なんか好きなことばっかりやって,それを仕事にしていますから。それより,最近,「夢(ゆめ)が小さくて,目標ばっかり大きい」という子が多いのが気になるなあ。逆(ぎゃく)でしょ。「夢(ゆめ)は大きく,目標は小さく」。すぐに達成できないような大きな夢(ゆめ)を追いかけるほうが,絶対(ぜったい)に楽しいでしょ。で,その夢(ゆめ)を叶(かな)えるための小さな目標を決めて叶(かな)えて,そうしたらまた次の小さな目標を決めて叶(かな)えて・・・ってやっていいたほうがいい。目標って叶(かな)うから嬉(うれ)しいし,次もがんばろう,って思えるでしょ。それなのに中途(ちゅうと)半端(はんぱ)に目標を大きくしてしまうと,叶(かな)うまでに時間がかかってしまって,疲(つか)れてしまったり,あきらめちゃったりするじゃないですか。だから「今日一日笑顔で過(す)ごす」とかちょっとがんばれば叶(かな)う目標を決めて,それを確実(かくじつ)に達成する。そうしたら変に疲(つか)れてしまうこともないし,自分の夢(ゆめ)に向かってずっと前向きに進んでいけると思うんです。僕(ぼく)の夢(ゆめ)ですか?花の世界で,誰(だれ)もやったことがないことをいろいろやってみたい。例えば,「月に初めて花を飾(かざ)った人になる」というのも,夢(ゆめ)のひとつです。