仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

山梨県に関連のある仕事人
1952年 生まれ 出身地 和歌山県
やまねけんきゅうかヤマネ研究家
湊せんせいみなとせんせい
子供の頃の夢: あまり考えていなかった
クラブ活動(中学校): 漢文研究会
仕事内容
ヤマネの生態を研究する
自己紹介
のんびりと過ごす

※このページに書いてある内容は取材日(2006年11月22日)時点のものです

ヤマネ研究と環境(かんきょう)教育

ヤマネ研究と環境(かんきょう)教育

ヤマネって知っていますか?夜行せい哺乳類ほにゅうるいで,ハムスターや野鼠のねずみのように小さな生き物です。体重はなんと18g,DVD1まいくらいの重さなんですよ。そして,数千万年も昔から存在そんざいしている天然記念物なのです。ヤマネは1年の半分も冬眠とうみんしている「ねぼすけ」で,落ち葉の中,ちたみきの中,鳥が昔使っていた巣の中,どこでもてしまうんです。まれたらどうするんだよ~ってこっちが思わず心配しちゃうけど,実はたくましいやつなんです(笑)。ぼくは清里にあるヤマネミュージアムの館長として,そんなヤマネの研究を通じてヤマネや森を守る活動をしています。ヤマネの生活をもとに,どんな木をどれくらい切っても大丈夫だいじょうぶか,どんな森を作っていったらいいかなどを,色んな人と協力しながら考えて決めていきます。また,研究の結果をまえながら,日本や世界での環境かんきょう教育(生き物や自然を守る人を育てる教育)について考えたり,「田んぼの学校」の仕事をしたりしています。ヤマネの目を通して森やこの世界を見ることが,ヤマネを守り,森を守り,わたしたち人間を守ることにつながるんですよ。

知れば知るほど面白い「ヤマネ」

知れば知るほど面白い「ヤマネ」

ヤマネを目の前で見た時や,ヤマネについて分からなかったことが分かった時はものすごくうれしいですねぇ。ぼくたちはヤマネを森でつかまえて,体重やおすめすか,どんなものを食べてどこでてどんな風にえだの上を歩くのか,いつ冬眠とうみんしているかなどを,巣箱を見たり,夜行せいのヤマネに合わせて夕方から夜明けまでヤマネを追いかけたりして調べます。小さな動物なので,みなさんがコンサートなどでっている光るぼうの中に入っている発光体をヤマネの身体につけて追いかけるのです。突然とつぜん目の前に下りてきたり,木の上の方に行ってしまったり,とってもスリリングですよ(笑)。また,ヤマネの教室を開いた時,ヤマネに全然興味きょうみがなかった子達がどんどんヤマネにはまっていく姿すがたを見るのもうれしいものですね。

多くの人の支えがあってできる仕事

多くの人の支えがあってできる仕事

ヤマネの研究では,行動に関しては宮崎みやざき大学さん,遺伝いでんに関しては北海道大学さん,栄養に関しては山口大学さんなど,動物に関する様々さまざまな分野の専門家せんもんかの方と協力して仕事をしています。また,ヤマネ研究をもとに環境かんきょうを守る活動と環境かんきょう教育を行う「出張しゅっちょうやまねミュージアム」というものを2006年12月にエコプロダクツてん幕張まくはり)と世界銀行情報じょうほうセンターで,2007年1月は上野動物園,2月は大阪おおさかのキッズプラザ,3月は新宿御苑ぎょえん開催かいさいする予定です。この活動は,開催かいさい先の多くの方々かたがたの協力やアースウォッチというボランティア団体だんたいなど,多くのスタッフにささえられています。ぼくひとりで成り立つ仕事ではなく多くの人々ひとびとの協力があって初めてできる仕事ですから,ささえてくださる方々かたがたにいつも感謝かんしゃしています。

先が見えないって面白い!

先が見えないって面白い!

ぼくが大学2年生の時,大学でヤマネ研究や自然保護ほご教育をしている教授きょうじゅに出会いました。なんだかヤマネの研究って先が見えないなって気がして,ぼくにとってはぎゃくにそれが面白くて,その教授きょうじゅの下でヤマネの研究を始めたんです。大学を卒業してからも小学校の先生の仕事をしながら大学院にも行き,ヤマネの研究をしたり田んぼや森で環境かんきょう教育をしたりしていました。生きがいにできる職業しょくぎょうだと思って小学校の先生になったのですが,本当にぼくにとって教師きょうしという職業しょくぎょうは子ども達と共に生きることができる最高の仕事で24年間続けました。その後「ヤマネ研究の実績じっせき展示てんじするから来ないか」とさそってもらったのをきっかけにヤマネミュージアムを設立せつりつし,館長として働ことになりました。「給料はるけど環境かんきょう教育ができるし,やまねの研究に専念せんねんできる!」と思って決断けつだんしたんですよ。「財団ざいだん法人」や「NGO」というのは,お金をかせぐことを目的とする「企業きぎょう」とはちがうので,ほとんどの場合はお給料も少ないんですよ。でも,とってもやりがいがある仕事ですねぇ。

教師と研究者の二足のわらじ

教師と研究者の二足のわらじ

ぼくはヤマネの話す言葉の研究を10年ぐらいやっていました。何も分からない状態じょうたいから研究を始めて1年くらいでヤマネが超音波ちょうおんぱを出すということがやっと分かったんです!でも,超音波ちょうおんぱを録音する機械は高くて,録音用のテープが10分しか録音できないものでも6千円~8千円。「ヤマネが声を出した~」って喜んではいましたけど,お金がかかる…(苦笑)。それから,ボールペンのペン先のようなマイクは1で23万円くらい。それを落としてこわしてしまった時はショックでした…。当時,初めてもらったお給料は8万円弱でしたから。昼間は小学校の教師きょうしをしていたので,大学から研究費をもらえる大学の先生とはちがい,全部自分でお金をはらって研究をしていたんです。当時は紀伊きい半島の南の方に住んでいたので,研究場所に移動いどうするだけでも大変でした。金曜に仕事を終えて夜12時間ずっと運転して。それでも,8年間で3頭しかつかまらなかったヤマネが清里では1日3頭つかまえられる!だから頑張がんばりましたよ。ほとんどれず,病院の先生に体調を考えるようおこられた時もありました。でも,ヤマネを知ることは面白く,もっと知りたい!という研究への情熱じょうねつがあったからこそずっと続けられたんだと思います。清里には12年通いました。自分でも,しつこく頑張がんばったなぁと思いますね。

ビジョンとコラボレーション

ビジョンとコラボレーション

ぼくが大切にしていることは大きく分けて2つあります。「ビジョンを持つこと」と「コラボレーションすること」です。つまり,「自分のゆめと社会的なゆめを持って,色んな人と協力すること」。何がしたいの?どんな世の中にしたいの?を見つけて,色んな人と協力して実現じつげんさせていく。でも,自分のやりたいことが分からない人の方が多いですよね。最初は分からなくても,まよったり考えたり色んな人に出会ったりする中で見つけていけばいい。一人で出来ることは小さいけれど,色んな人と協力することで大きくなっていける。小さい山は遠くから見えにくいですが,高い山は遠くからも見える。ビジョンも一緒いっしょです。高いビジョンを持てば多くの人が集まってくる。みんなで協力すれば,大きなビジョンも実現じつげんできる!集まった人には,いつも感謝かんしゃの気持ちをわすれないようにしたいですね。

動物と共に生きる道

動物と共に生きる道

わたしたち人間が作った道路で森が2つに分断ぶんだんされてヤマネが行き来できなくなってしまっている場所があります。これはヤマネだけのことではなくて,色々いろいろな動物達が,自分達の住んでいた森の中を自由に行動できなくなっています。道路をわたろうとして,車にはねられてしまう動物も少なくないのです。そこで,「アニマルパスウェイ」という動物のための道(橋)をつくる活動をしています。ぼくたちは,ヤマネが森と森を安全に行き来できるように「ヤマネブリッジ」という橋を,建設けんせつ会社の人と一緒いっしょつくりました。ヤマネ以外の小動物たちもこの橋を使って森を行き来するようになりました。海外でもヤマネブリッジを見本にアニマルパスウェイがつくられています。でも,このヤマネブリッジをつくるのにはたくさんのお金がかかります。海外では何億円というお金をかけてつくった例もありますが,ぼくたちは100万円以内でつくることにも取り組んでいます!人と動物が共に生きる道をもっと広めていかなければならないんです。

辛(つら)かった経験があるからこそできる仕事

辛(つら)かった経験があるからこそできる仕事

小さいころは生き物や自然が好きで,特にちょうが大好きだったんです。海へ魚を取りに行ったり,田んぼにメダカをりに行ったり,とにかく何かをりに行くのが大好きでした。友達と一緒いっしょの時もあったけど,一人でごすことも好きでしたね。でも,ぼくには「つらいこと」がいっぱいあったんです。小学校6年くらいから「どもり(言葉の障害しょうがい)」が続いて,発声練習や呼吸法こきゅうほうなどの教室通ったけど治りませんでした。朗読ろうどくの時間は本当につらかったです。クラスのみんなはだれも笑わなかったけど,シーンと沈黙ちんもくされることもつらかった。成績せいせきもビリだし,リーダーシップもなくって,教師きょうしになったことが信じられないくらいです。ヤマネと出逢であってから良くなったのかもしれません(笑)。実は世の中には「どもり」の経験けいけんがある人は1%くらいしかいないのに,環境かんきょう教育の職場しょくばには,20%くらいも「どもり」の経験けいけんがある人がいます。つら経験けいけんをしたことがあって,人の気持ちが分かるようになった人が教育には向いているのかもしれませんね。

しゃがんでみれば,世界が見える

しゃがんでみれば,世界が見える

ぼくから伝えたいことは2つあります。1つ目は「人っていいもんだよ」ってこと。周りの人に対して「こいつはこんなダメだ!」「こんなひどいやつだ!」と決め付けてしまわないで,その人の持つ良いところを見てみて下さい。人はだれしも良いところを持っているものですから。色んなものや人に会って,自分自身の良いところも見つけてみてください。2つ目は「しゃがんでみれば,世界が見える」ってことです。ぼくは小さなヤマネを通して,森や人,世界を見ています。草むらでも,しゃがんでじっと見てれば地面に広がる世界が近くなりますよね。いつもとはちがう世界です。自然は意外と身近にあって,見方さえ変えれば不思議のドアが開きます。学校の校庭でも近くの公園でも,しゃがんで見れば世界が見えますよ。

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