社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2016年09月01日)時点のものです
私(わたし)は,一枚(まい)の革(かわ)から切る,縫(ぬ)うといった加工をして,靴(くつ)やカバン,財布(さいふ)などの商品を作って,販売(はんばい)しています。また,お客様から依頼(いらい)があれば靴(くつ)の修理(しゅうり)もしています。この仕事で使用する革(かわ)は,牛はもちろんのこと,豚(ぶた)や馬,ダチョウなどさまざまな種類があります。珍(めずら)しいものでは,現在(げんざい),象の革(かわ)を使って靴(くつ)を作っています。また,例えば同じ牛の革(かわ)でも加工の仕方などによって多くの種類に分かれます。それぞれの革(かわ)に特徴(とくちょう)があって違(ちが)った魅力(みりょく)があります。また,革(かわ)製品(せいひん)は使っているうちに馴染(なじ)んで柔(やわ)らかくなって,だんだん深い色合いになっていきます。それが「味」になってどんどん愛着が湧(わ)いていきます。お客様のいつも近くにあって,長く使える商品をお客様に直接(ちょくせつ)お届(とど)けできることに誇(ほこ)りを持っています。また,それと同時に中途(ちゅうと)半端(はんぱ)な商品は作れないという責任感(せきにんかん)を持って働いています。
私(わたし)が作っているものは靴(くつ)やカバン,財布(さいふ),小物などがメインですが,お客様から「こんなものを作ってほしい」という要望があればできる限(かぎ)りなんでも作ります。作ったことがないものだからといってお断(ことわ)りすることはしたくありません。お店で商品の展示(てんじ),販売(はんばい)もしていますが,半分以上はお客様の注文を受けてから作る「オーダーメイド」です。素材(そざい)を選んだり,デザインを考えたりお客様とお話ししてどのような商品を作るか考えていきます。お客様にとってより良い商品を作るためには,お客様と上手くコミュニケーションをとることも大切な仕事です。
お客様は,商品を買っているのではなく,私(わたし)の職人(しょくにん)としての技術(ぎじゅつ)を買っていただいているのだと考えています。注文が多い時には数週間待っていただくこともあります。できる限(かぎ)り早く商品をお渡(わた)ししたいと思います。しかし,そのために手を抜(ぬ)くことはできません。私(わたし)は,自分が納得(なっとく)した商品しかお客様にお渡(わた)ししません。また,今の私(わたし)ではこの商品が100%だとしても,次はそれを超(こ)える商品を作りたいと考えています。現状(げんじょう)に満足してしまうと人は成長できません。「もっと技術(ぎじゅつ)や知識(ちしき)を磨(みが)きたい」「こんな工夫ができないか」「新しい商品に挑戦(ちょうせん)したい」などといつも考えています。「向上心」は職人(しょくにん)として最も大切なものだと思います。これからもこの気持ちを決して忘(わす)れず挑戦(ちょうせん)し続けていきたいです。
私(わたし)が作っている商品は大量生産ができません。オーダーメイドで作った商品は世界にひとつだけのものであり,職人(しょくにん)にとっても,一つひとつの商品に思い入れがあります。その商品は職人(しょくにん)にとっては,まるで自分の分身のようなものです。その商品をお渡(わた)ししてお客様に喜んでいただいた時はなんといってもうれしいです。そして,そのお客様がまた私(わたし)のお店に来ていただいて,自分が作った商品を使っていただいている姿(すがた)を見たときは「かわいがってもらっているな」と思わずニンマリしてしまいます。
私(わたし)は高校生のころ,とにかくスニーカーが好きでした。部活動でバスケットボールをしていたこともあってバスケットシューズを中心にスニーカーのデザインや機能(きのう)に興味(きょうみ)を持つようになりました。進路を考えた時に自分の好きなことを仕事にしたいと考え,靴(くつ)づくりを学ぶために東京の専門(せんもん)学校に進学しました。3年間,学校で靴(くつ)づくりを学んでいくうちにだんだんと革靴(かわぐつ)を好きになっていました。卒業後はファッションブランドなどの革靴(かわぐつ)を作る会社に就職(しゅうしょく)してそこで革靴(かわぐつ)の職人(しょくにん)としての経験(けいけん)を積みました。そのころには革靴(かわぐつ)はもちろんですが,その素材(そざい)である革(かわ)も好きになりました。独立(どくりつ)してからは革靴(かわぐつ)を作ることで学んだ技術(ぎじゅつ)を活かして靴(くつ)以外の革(かわ)製品(せいひん)もつくるようになり,出身地である愛媛(えひめ)県西条(さいじょう)市に戻(もど)って自分のお店を持ちました。
私(わたし)の子どものころはイタズラばかりしていて,先生によく叱(しか)られていました。勉強はあまり好きではありませんでしたが,図工や美術(びじゅつ)はとても好きでした。子どものころから手先は器用だったと思います。そこだけは先生に褒(ほ)められていたことを覚えています。皆(みな)さんには,できれば自分の可能(かのう)性(せい)を広げるために,勉強もスポーツも遊びもバランス良く色々(いろいろ)なことを経験(けいけん)してほしいと思います。私(わたし)のように勉強が嫌(きら)いでも自分の「好き」や「得意」を活かして手に職(しょく)をつけるという生き方もあります。きっと皆(みな)さんにも苦手なものや嫌(きら)いなものがあると思います。それを克服(こくふく)することも大切ですが,これだけは「誰(だれ)にも負けない」,「誰(だれ)よりも好き」というような個性(こせい)を伸(の)ばしてもらいたいと思います。
学校のテストみたいに「人生はこういう風に生きるもの」なんて正解(せいかい)はどこにもありません。また,その正解(せいかい)を教えてくれる先生もいません。皆(みな)さんは自分だけの人生を楽しんでもらいたいと思います。私(わたし)の仕事もそうかもしれませんが,リスクの大きいことを始めたいと考えたとき,周りの人たちに賛成(さんせい)してもらえないかもしれません。私(わたし)が無責任(むせきにん)にすすめることはできませんが,人生は一度きりです。「やりたいことはやる」後悔(こうかい)しない生き方を選んでほしいと思います。一生懸命(いっしょうけんめい)やった結果がダメだったとしても,それを恥(は)ずかしがったり,後悔(こうかい)したりしないで下さい。その決断(けつだん)と経験(けいけん)に胸(むね)を張(は)って前向きに生きてほしいと思います。