私わたしは、株かぶ式しき会社電算システムという会社で、システムエンジニアとして働いています。システムエンジニアの仕事は、コンピューターを動かすためのシステムを設せっ計けいすることです。私わたしたちが設せっ計けいするシステムは実にさまざまで、例えば、商品を購こう入にゅうしたりサービスを利用したりした人が、料金を支し払はらってお釣つりを受け取れる自動精せい算さん機きに使われているシステムや、パソコン上の事じ務む作業を、ロボットを使って自動化するようなシステムなどを手がけています。
最近では、文字や画が像ぞう、音声などを自動的につくることができる生成AIなど、新しい技ぎ術じゅつが次々と登場し、電算システムでは、そうした最さい先せん端たんの技ぎ術じゅつを活用したシステムの開発にも、力を入れています。また、幅はば広ひろい分野のお客さまから依い頼らいをされるため、業ぎょう務むを的てき確かくに行うシステムを設せっ計けいするには、それぞれの分野で行われている仕事の内ない容ようや専せん門もん的てきな用語など、多くのことを理り解かいしなければなりません。最新の技ぎ術じゅつを用いて社会をより便利にするシステムを設せっ計けいするために、システムエンジニアには常つねに社会の流れにアンテナを張はっておくことが求められます。

システムを設せっ計けいするときは、まずお客さまから、どんな場面でどのように動くシステムが欲ほしいのかを具体的に聞き取ります。そして、聞き取った内ない容ようを実じつ現げんするための方法や技ぎ術じゅつを考えて、システムを設せっ計けいします。設せっ計けいした内ない容ようは、“仕様書”と呼よばれる書類にまとめ、仕様書に基もとづいてシステムに必要なプログラムを組み立ててもらえるよう、プログラマーに指し示じを出します。そのため、一日の仕事はまずお客さまから届とどくメールを確かく認にんし、スタッフにその日に行う作業内ない容ようや変へん更こう点てんなどを伝えることから始まります。
プログラムの組み立てが始まったら、仕様書通りに進められているか、決められた日にちまでにできあがるかなど、作業全体を管理するのもシステムエンジニアの仕事です。つくったシステムは、できたところから実じっ際さいに動かしてみて、正せい常じょうに動くか、間ま違ちがいがないかなどをしっかりとチェックします。お客さまにも確かく認にんしてもらった後、さらに希望を聞いて、修しゅう正せいや改かい善ぜんを加えることもあります。

電算システムでは、2010年から、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデジタル端たん末まつで見ることができる「デジタル教科書」の開発をスタートしました。私わたしも2020年からその仕事に携たずさわり、毎年、小学校から高校まで、たくさんの学校で使われるデジタル教科書を開発しています。
デジタル教科書の制せい作さくにあたっては、まず紙の教科書に掲けい載さいされている文章や写真がそのままデジタル端たん末まつで見られるように、システムに組くみ込こみます。さらに、教科書を制せい作さくしている会社の希望を聞いて、内ない容ようをより分かりやすく伝えるためのアニメーションや動画、音声などが流れるようにしたり、タッチすると文字や画が像ぞうが拡かく大だいされるようにしたりと、紙の教科書にはない内ない容ようや仕し掛かけも加えていきます。紙の教科書では１ページ分でも、デジタル教科書にすると、必要な音声や写真など、準じゅん備びするデータは膨ぼう大だいになります。紙の教科書に掲けい載さいされている内ない容ように加えてこうしたデータを組くみ込こむために、プログラミング言語による“コーディング”という作業を行って、プログラムを組み立てます。最後に、できあがったものがすべて正しく動くかをテストし、全ページを完成させます。

デジタル教科書は、元になる紙の教科書が私わたしたちのところに届とどいてから開発が始まります。新しい教科書は９月ごろに届とどき始め、４月から始まる新学期に間に合うように完成させなければいけないため、１～２月が最も忙いそがしくなります。どんなに忙いそがしくてもミスが起こらないように、手作業では間ま違ちがいが起こりそうな難むずかしい箇か所しょの作業には、コンピューターで自動的に組くみ込こめるようなプログラムを取り入れるなど、効こう率りつ的てきに正せい確かくな作業ができるように、工く夫ふうしています。しかし、どんなに気をつけて開発しても、テストをすると思ったように動かないこともあり、毎回、難むずかしさを感じます。失敗した部分は、うまくいかなかった原げん因いんを分ぶん析せきし、もう一度プログラムを組み直して改かい善ぜんします。
さらに開発の途と中ちゅうでも、社会の動きなどを受けて、教科書の内ない容ようが最新の情じょう報ほうに変へん更こうされるときがあります。そうした場合でも、４月の新学期に遅おくれるわけにはいかないため、完成予定の時期が近づくと、作業はいつも時間との戦いです。緊きん張ちょう感はありますが、すべての教科書が予定どおり完成したときには、大きな達成感があります。

私わたしは毎年、小学校、中学校、高校で使われる約30書目のデジタル教科書を開発しています。そのため、２人の息子むすこも私わたしが開発したデジタル教科書を実じっ際さいに使っています。息子むすこたちに「このデジタル教科書はママがつくったんだよ」と話したり、授じゅ業ぎょう参観などで学校へ行った際さいに、児童・生徒のみなさんがデジタル教科書を使って勉強している姿すがたを見たりすると、とても誇ほこらしい気持ちになります。学校の先生と話した際さいも、「デジタル教科書には、授じゅ業ぎょうの内ない容ようを補ほ足そくする情じょう報ほうがたくさん取り入れられていて、とても助かっています」と言ってもらい、この仕事をしていてよかったと心から感じました。
今、学校では紙の教科書とデジタル教科書の両方が使われていますが、これからはデジタル教科書が使われる機会がより多くなるかもしれません。最近のデジタル教科書には、自分の読みやすい文字の書体や色、背はい景けい色しょくなどを選ぶことができたり、漢字の読よみ仮が名なのオン・オフを選べたりといった、多くの人にとって使いやすくなるような工く夫ふうが次々と取り入れられています。私わたしも、実じっ際さいにデジタル教科書が使われる場面を想そう像ぞうしながら、より便利なデジタル教科書を開発していきたいです。

デジタル教科書を開発するためには、プログラマーだけでなく、音声や画が像ぞうなど必要な情じょう報ほうを作成する人、できあがったページが正せい常じょうに動くか確かく認にんする人など、１つの教科書に10～20名ものスタッフが携たずさわります。そうしたスタッフをチームとして束ね、お客さまとの間を橋はし渡わたしすることが、システムエンジニアの大切な役やく割わりです。
そのため、お客さまと打ち合わせをするときには、希望を聞きもらさないように、確かく認にんしたいことをまとめて話すように工く夫ふうしています。スタッフに指し示じをするときも、お客さまの意図がしっかりと伝わるように、分かりやすい言葉で説明をします。
どんなシステムも、すべてのスタッフが一丸とならなければ、いいものをつくることはできません。全員のやる気を高めるためにも、まずは私わたし自身がマイナス思考にならないように心がけ、スタッフには前向きになれる言葉をかけるようにしています。また、常つねに「ありがとう」の精せい神しんを持って接せっすることを大切にしています。

私わたしが学生のころは、まだパソコンが広く普ふ及きゅうしておらず、自じ宅たくにパソコンがある人も少ない時代でした。しかし、私わたしの父はもともと機械が好きだったため、いち早くパソコンを購こう入にゅうし、私わたしにも「好きなときに使っていい」と言ってくれました。最初のころはゲームをするくらいでしたが、どんどんパソコンを触さわるのがおもしろくなっていきました。
高校生になると、インターネットを通じて多くの人と情じょう報ほう交こう換かんや交流ができるさまざまなサービスが登場し、会ったことがない人や遠くに住む人たちとコミュニケーションができることに衝しょう撃げきを受けました。そこで「私わたしもこんなことができるものをつくりたい」と思い、システムの開発を学ぶことができる大学へ進学することに決めました。
電算システムに就しゅう職しょくした後は、まずシステムをつくるために必要なプログラムを組み立てられるようになれるよう、プログラマーとして経けい験けんを積みました。仕様書を見ながらプログラムを組み立て、動作を確かく認にんするテストをクリアして納のう品ひんするというシステム開発の流れを理り解かいし、１人でできるようになってからシステムエンジニアになり、お客さまの思いをカタチにするためのシステム設せっ計けいを行っています。

私わたしがパソコンのおもしろさを知ってシステム開発の道へ進んだように、将しょう来らい、進む道が分からないと悩なやんでいる人は、まず好きなことや得とく意いなことを見つけることから始めてみてもいいかもしれません。
システム開発の仕事については、「理り系けい科目が得とく意いじゃないとできないのではないか」「男だん性せいが多いのではないか」などといったイメージを抱いだいている人も多いですが、この仕事は得とく意い科目も性せい別べつも関係ありません。電算システムでは、私わたしのように女じょ性せいもたくさん活かつ躍やくしていますし、文ぶん系けいの勉強をしてからプログラマーやシステムエンジニアになった人もいます。システムエンジニアの仕事は、お客さまから聞いた情じょう報ほうからどんなシステムが必要かを考える創そう造ぞう力りょくや、多くのスタッフに伝えるための国語力が必要なので、文ぶん系けいの人も活かつ躍やくできる仕事だと思います。
必要なスキルは就しゅう職しょくしてからも十分に学ぶことができるため、「パソコンを使った仕事に興きょう味みがある！」「やってみたい！」と思ったら、ぜひシステムエンジニアの仕事にチャレンジしてほしいと思います。