社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2006年10月19日)時点のものです
教師(きょうし) として,3年生のクラス担任(たんにん) をしながら生物と化学を教えていますが,なるべく授業(じゅぎょう) に実験を取り入れるようにしています。実験では器具を手で触(さわ) ったり,薬の色や臭(にお) いを感じ,液体(えきたい) の変化を自分の目でじっくり観察し,心と体で“わかる”ことが大切だと思うからです。一方,実験には準備(じゅんび) と後片付(あとかたづ) けがつきもので,これが一苦労なんです。事前に器具を準備室(じゅんびしつ) から実験室に運び,薬を分量ごとに分けたりと,それが1クラスで何グループもあるので時間がかかります。たった1時間の実験授業(じゅぎょう) でも,準備(じゅんび) は2,3時間,その後の後片付(あとかたづ) けも1,2時間ないと終わりません。しかし,生徒達の「わあ,すごい」「実験楽しいね」「実際(じっさい) に目で見てよくわかりました」という言葉にいつも励(はげ) まされ,「頑張(がんば) って準備(じゅんび) するぞ!」「皆(みな) に楽しく勉強してもらおう!」とやる気が出ます。
教師(きょうし) の一日は,朝8時15分に始まります。職員室(しょくいんしつ) で打ち合わせをした後,自分のクラスに行き,ホームルームで出欠を確認(かくにん) して連絡(れんらく) 事項(じこう) を伝えます。その後,生物と化学の授業(じゅぎょう) を一日に3,4時間行います。3年生を受け持っているので,教科書や実験の授業(じゅぎょう) の他に,受験前には試験に出そうな問題をひたすら解(と) く授業(じゅぎょう) も行います。放課後は,テニス部の顧問(こもん) として部活の様子を見たり,休日には試合の引率(いんそつ) に行きます。3年生の担任(たんにん) をしているので進路指導(しどう) の時間があり,生徒と面談をして今興味(きょうみ) を持っていること,どんな大学に進学したいかを話し合います。下校時刻(じこく) 頃(ころ) から職員(しょくいん) 会議が始まり,長引くと4時間ぐらいになることもあります。一日のうちに色々(いろいろ) な仕事をこなすので忙(いそが) しいですが,同じことの繰(く) り返(かえ) しではなく変化があるところがいいですね。
教師(きょうし) という仕事に就(つ) くためには,大学で教員免許(めんきょ) を取ることが必要です。私(わたし) は生物専門(せんもん) の教師(きょうし) ですが,教員免許(めんきょ) の内容(ないよう) は「中学,高校の理科」。つまり,理科に関すること全てを教えられなくてはいけません。小学校,中学校の理科とは違(ちが) って,高校は「生物」の他に「物理」「化学」があり,一つ一つがそれぞれ奥深(おくぶか) く専門(せんもん) 知識(ちしき) の勉強が必要です。5年前,学校から「化学」も教えてほしい,と言われました。私(わたし) はそれまで生物しか教えたことしかなかったので,「知識(ちしき) 不足で授業(じゅぎょう) が成り立たなくなっては困(こま) る・・・・・・」と思い,新しく化学の授業(じゅぎょう) を教えるために猛勉強(もうべんきょう) を始めました。仕事から帰宅後(きたくご) ,夜中を勉強時間にあて必死に内容(ないよう) を詰(つ) め込(こ) み,毎日の睡眠(すいみん) 時間は4,5時間ぐらいでした。中途(ちゅうと) 半端(はんぱ) にはしたくない,やるときはしっかりやりたい,という性格(せいかく) が自分の仕事に対する姿勢(しせい) を固めていると思います。
学校生活は毎日変化があって楽しいですよ。同じ授業(じゅぎょう) をA組,B組,C組で行っても,ものすごく驚(おどろ) いてくれるクラスもあれば,逆(ぎゃく) に無反応(はんのう) だったりと差があり面白いですね。部活で皆(みな) が一つの目標に向けてコツコツと練習している姿(すがた) は,まるでテレビドラマを生で見ているような気分!日焼けした顔にさわやかな汗(あせ) ,真剣(しんけん) なまなざしは,結果がどうであれ本当に輝(かがや) いてキラキラしています。若(わか) いって素晴(すば) らしい。皆(みな) の笑顔からパワーをもらっています。高校生活3年の間に体格(たいかく) も考え方も大人になっていき,その成長を間近で見ることができるのが嬉(うれ) しいです。特に,高校3年生は,卒業の進路を考える上で,今後の人生をどう進んでいくのか自分で決断(けつだん) しなければならない重要な時期。生徒と話をしながら,人生の節目に対して生徒と教師(きょうし) が一緒(いっしょ) になって踏(ふ) み出(だ) して行けることにやりがいを感じています。
私(わたし) は小学校と中学校で理科,高校では生物の授業(じゅぎょう) が一番楽しかったので,将来(しょうらい) は生物に関わる仕事に就(つ) きたいと考えていました。しかし,「生物関係」の薬品に携(たずさ) わる仕事や栄養士などは,自分には無理かもしれないと迷(まよ) いがあったんです。そんな時,母が「資格(しかく) を持つと強いよ」,「長く働ける仕事がいい」とアドバイスをくれ,「生物が好きなら生物の先生はどうかしら」と。教育学部のある大学の生物学科に進んだのですが,中学校に教育実習に行った時「先生は大変だけど楽しい」と気持ちが固まり,生物についてより深く知ってもらいたくて,中学よりも専門(せんもん) 性(せい) の高い授業(じゅぎょう) のできる高校教師(きょうし) を目指すことに決めました。しかし,当時は教師(きょうし) の採用(さいよう) がとても少なく,大学卒業後すぐには高校教師(きょうし) になれませんでした。専門(せんもん) 学校の栄養士志望(しぼう) のクラスで助手をしたり,非常勤(ひじょうきん) 講師(こうし) として2つの高校をかけもちしていたこともあります。その後,現在(げんざい) の高校の教員試験を受けて合格(ごうかく) し,正式な教師(きょうし) になることができました。
私(わたし) は生徒よりも10歳以上(さいいじょう) 年上ですが,生徒達を上から下に見るということは絶対(ぜったい) にしません。一人の人間同士として付き合っていきたいと思っています。常(つね) に,生徒とともに一緒(いっしょ) に歩む,目標に対して一緒(いっしょ) に挑(いど) む,と気持ちでいます。しかし,それは“友達のようになる”いうことではありません。間違(まちが) っているのでは?と思うことも,ちゃんと本人に指摘(してき) できる,ということが重要です。「まあいいや」と見過(みす) ごさず,その生徒のことを真剣(しんけん) に考え,社会に出ても通用しないことはきちんと注意して,伝えることが大切だと思っています。
私(わたし) は,小学校2年生まで石川県金沢(かなざわ) 市に住んでいました。家の近くにちょうど川があり,タモを持ってよく出かけていました。動物も大好きでしたね。特に犬が可愛(かわい) くてしかたなく,幼(おさな) い頃(ころ) は獣医(じゅうい) さんになりたいと思っていました。本もよく読んでいたことを覚えています。好きだったのは「ドリトル先生物語」のシリーズです。また,学校の授業(じゅぎょう) はとても楽しかったと記憶(きおく) しています。勉強自体は,好きでも嫌(きら) いでもなく,ガリガリ勉強したというわけではありませんでしたが,週に2回塾(じゅく) に通っていましたよ。
最近,「自分がやりたいことがない」と相談してくる生徒がいます。私(わたし) はそういう時には「じゃあ,何をやっている時が楽しいか,そこから考えてみたら?」と話します。勉強に関しても,「この科目だったら,一番初めにテスト勉強を始めたいな」と思うものはどれだろう?と考えてみる。自分の生活を振(ふ) り返(かえ) り,「一番楽しいもの」に順位をつけてみると,だんだんとわかってくるものがあると思いますよ。私自身(わたしじしん) ,子どもの頃(ころ) に動物が好きだったことが今の職業(しょくぎょう) につながっていますが,みなさんも「これって面白いな」「これだったらずっとやっていけるかも」ということが見つかって,そこから未来に少しずつ繋(つな) げていけるといいですね。