仕事人

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北海道に関連のある仕事人
1972年 生まれ 出身地 東京都
こうかいし航海士
ほし 直樹なおき
子供の頃の夢: 昆虫博士,プロ野球選手
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
練習船の航海士(兼助教)
自己紹介
東京とうきょうから(いろんな意味いみで)はなれたくて北海道ほっかいどうきました。色々いろいろかんがえの人に出会であいま自分じぶんがいます。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2016年04月30日)時点のものです

年間ねんかん177日をふねごす

年間177日を船で過ごす

わたし北海道大学ほっかいどうだいがく所有しょゆうする練習船れんしゅうせん「おしょろまる」で航海士こうかいしとしてはたらいています。練習船れんしゅうせんとは,学生や研究者けんきゅうしゃたちが乗船じょうせんし,研究者けんきゅうしゃ研究けんきゅうし,学生が教育きょういくけることのできるふねです。最近さいきんとくに,さかなをどう効率的こうりつてきに,持続的じぞくてきにとるかという「水産科学すいさんかがく」にかんする研究けんきゅうや,環境かんきょう地質ちしつかんする研究けんきゅうおおおこなわれています。また,うみかんするさまざまなデータが収集しゅうしゅうできるよう,最新さいしん機材きざい装置そうちんでいて,実験室じっけんしつなどもあります。北海道大学ほっかいどうだいがく関係者かんけいしゃだけではなく,練習船れんしゅうせんたない大学の関係者かんけいしゃ乗船じょうせんし,一緒いっしょ研究教育活動けんきゅうきょういくかつどうおこなうこともあります。
航海こうかい期間きかんは, 2日間で近海きんかい航海こうかいする「体験航海たいけんこうかい」, 60日間かけて北極海ほっきょくかいほうまで航海こうかいする「洋上実習ようじょうじっしゅう」までさまざまです。それぞれの航海こうかいでは,乗船じょうせんする先生がうみでどのような研究けんきゅうをして,学生にどのような教育きょういくをするかといった内容ないようめ,希望者きぼうしゃつの実習じっしゅうおこないます。内容ないようによって乗船じょうせんする先生や学生はことなりますが,わたしはどの航海こうかいにもかなら参加さんかしますので,1年間ねんかん合計ごうけい177日乗船にちじょうせんします。
そのほかにも毎年必まいとしかならず1ヶ月間「ドック」とばれるふね健康診断けんこうしんだんに立ちいます。国の検査けんさ安全あんぜん確認かくにんし,いたんだ部分ぶぶん工事こうじをして,綺麗きれいにペンキをって航海こうかいそなえます。

ふねねむらない

船は眠らない

勤務時間きんむじかんは8時間じかんですが,4時間勤務じかんきんむを2かいすることになっています。わたしとくに「ゼロヨン」勤務きんむといって,午前ごぜん0から4午後ごご12から4勤務きんむをしています。うみふね状態じょうたいは24時間絶じかんたえず変化へんかし,みちが見えているわけでもありません。さまざまなデータをみながら,ふね状態じょうたいや天気の様子ようすなどを観察かんさつ(「ワッチする」といます)し,安全あんぜんふねすすめます。また,「24時間調査じかんちょうさ」といって24時間じかんかけておこなうデータ収集しゅうしゅう実験じっけんもありますので,その対応たいおうのため勤務時間きんむじかんびることもあります。
ふねには大きく三つの役割やくわりった人がっています。ブリッジ(船橋せんきょうふね操縦室そうじゅうしつです)でふねうごかす人,エンジンを整備せいびする人,食事しょくじづくりや広報こうほうなど事務的じむてき仕事しごとをする人です。航海士こうかいしは,ふね安全あんぜん運行うんこうさせ,目的地もくてきちまで時間通じかんどおりに,効率的こうりつてき到着とうちゃくさせることが最大さいだい使命しめいです。安全あんぜん確保かくほ大前提だいぜんていに,天候てんこうなどさまざまな状況じょうきょうみ,みなとかえすのか,その停泊ていはくしてつのか,などといったことを判断はんだんする場面ばめんにもおお遭遇そうぐうします。

通勤時間つうきんじかんは「5びょう」?

通勤時間は「5秒」?

陸上りくじょうであれば,苦手にがてな人がいればわない,ということもしやすいですよね。しかし,ふねの中ではそれができず,人間関係にんげんかんけい苦労くろうする船員せんいんもいます。しかし,人間関係にんげんかんけいさえうまくけば,部屋へやを出て階段かいだんを上がると職場しょくばで,通勤時間つうきんじかんは5びょうふね仕事しごと最高さいこうです。「ゼロヨン」勤務きんむからだらすのは大変たいへんですが,航海こうかいわるとまとまって休みをとることができますから,めりはりをつけてはたらくこともできます。また,物酔ものよいしやすい人にとっても大変たいへん職場しょくばかもしれませんが,わたしにはそれもないので,とても快適かいてきごしています。

快適かいてきになったふねでのらし

快適になった船での暮らし

今乗いまのっている「おしょろまる」は5代目だいめのもので,2014年から使つかわれはじめています。食事しょくじもしっかりとれますし,お風呂ふろもきちんと入れます。さらに航海士こうかいし個室こしつ部屋へやで一人になる時間じかん確保かくほできます。食事しょくじについては,法律ほうりつで「ふね乗組員のりくみいんには三食さんしょくきちんと食事しょくじ提供ていきょうしなければならない」とさだめられていますので,うみの上でもあたたかくておいしい食事しょくじができるのです。
さらに最近さいきんではインターネットもできるようになりました。以前いぜん無線むせんやファックスを使つかってりくの人たちとやりとりしていましたが,いまではEメールをおくれます。友人ゆうじん結婚式けっこんしき出席しゅっせきできないこともおおかったので,うみの上からおいわいの電報でんぽうおくったこともありました。このように,ふねでのらしはりくらしにちかづいてきていて,とても快適かいてきになってきているのです。以前いぜん男性だんせいばかりでしたが,最近さいきんでは女性じょせい乗船じょうせんもとてもえてきていて,船内せんない様子ようすはだいぶわってきていますね。

家族かぞくはなれる時間じかんなが

家族と離れる時間が長い

航海士こうかいしをしていて心苦こころぐるしいことがあります。それは,家族かぞく万一何まんいちなにかあったとき,すぐにけつけられないことです。航海士こうかいしになりたてのころ,父親ちちおやからもよくそうわれました。そうした覚悟かくごって,しっかり仕事しごとをするようにともわれました。そして,だからこそふねりているときは,可能かのうかぎおおくの時間じかん家族かぞくごすようにしています。
最近さいきん外国人がいこくじん研究者けんきゅうしゃ乗組員のりくみいん乗船じょうせんすることもえました。船員せんいん全員日本人ぜんいんにほんじんというふねのほうが,もしかしたらめずらしいのかもしれません。文化ぶんか価値観かちかんことなる人とふねらすことは,非常ひじょう大変たいへんなことです。そういったちがいを無理むりわせようとするのではなく,おたが尊重そんちょうし,「ける」という気持きもちでいることが大切たいせつです。一方いっぽうで,「け」すぎてばらばらにならないよう注意ちゅうい必要ひつようです。ふねの中では情報じょうほう命令めいれいがきちんとつたわらないといけませんし,チームワークを発揮はっきしなくてはならないときもおおいからです。

「おしょろまる」との再会さいかい

「おしょろ丸」との再会

大学1年生のころ,たくさんの人と出会であいました。わたし水産学部すいさんがくぶでしたが,べつ学部がくぶのある先輩せんぱいから,「水産学部すいさんがくぶにいるなら航海士こうかいしになるべき」とアドバイスをもらいました。そして3年生のころ,航海士こうかいし目指めざ勉強べんきょうする先輩せんぱいたちにったのですが,その方々かたがた本当ほんとうにかっこくて,自分じぶん先輩せんぱいたちのようになりたいとつよおもうようになりました。同時どうじうみふねすごさ,きびしさ,魅力みりょくなども存分ぞんぶんおしえてもらいました。
大学卒業後だいがくそつぎょうご,1年半ねんはんほど無職むしょくとなりました。そのあいだいろいろなふねるアルバイトをしながら,うみのことをふかるとともに,そこでたくさんのあたらしい仲間なかまができました。あるとき大学の先輩せんぱいから,漁業取締船ぎょぎょうとりしまりせん違法いほうりょうまるふね)の船員募集せんいんぼしゅう紹介しょうかいされ,航海士こうかいしとして採用さいようされました。30だい船長せんちょうになり,仕事しごと充実じゅうじつしていましたが,40だい,50だいになるとふねからりて,りくでの仕事しごと中心ちゅうしんになることがわかっていました。わたしはずっとふねっていたいという気持きもちがつよかったのと,漁業取締船ぎょぎょうとりしまりせんでは母港ぼこう転々てんてんとしてなかなか函館はこだてのこした家族かぞくごす時間じかんつくれていませんでした。そういった中,「おしょろまる」で航海士こうかいしをしていた先輩せんぱいから「もどってこないか」とこえをかけてもらい,航海士こうかいしとして,学生の教育きょういくおこなう大学の助教じょきょうとして採用さいようされ,現在げんざいいたっています。

どうしても東京とうきょうから出たかった

どうしても東京から出たかった

わたし東京都西部とうきょうとせいぶ小平市こだいらしというところでそだちました。小学校,中学校では野球やきゅうをやっていました。野球仲間やきゅうなかまとよく,野球以外やきゅういがいあそびもしていました。かえってみると,うみ機会きかいはあまりなく,むかしからずっとうみ大好だいすきだった,身近みぢかだったというわけではありませんでしたね。読書どくしょ苦手にがてでしたが,『シートン動物記どうぶつき』や『ファーブル昆虫記こんちゅうき』はみ,とくに虫がきでした。学校の勉強べんきょうでは理科りかきでした。
やがて進路しんろえら時期じきになり,当時とうじはやりたいことやきたい仕事しごとなどは具体的ぐたいてきまっていませんでした。それでも「東京とうきょうから出たい」という気持きもちはつよっていました。そこで,東京とうきょうからなるべくはなれられるよう,沖縄県おきなわけん琉球大学りゅうきゅうだいがく北海道大学ほっかいどうだいがくを見学にってみました。すると,「どうしても北海道大学ほっかいどうだいがくに入りたい」「ここしかない」とおもうようになりました。挑戦ちょうせんすること3回目かいめでようやく合格ごうかくし,北海道ほっかいどうくことができました。

一生懸命考いっしょうけんめいかんがえることが大切たいせつ

一生懸命考えることが大切

みなさんには,一生懸命考いっしょうけんめいかんがえること,そしてかんがえるための時間じかんつことを大切たいせつにしてほしいです。われたことをするだけではなく,「なぜそれをするのか?」「いまよりもっとくできないか?」とかんがえる。「なぜ勉強べんきょうするのか?」とかんがえるなど,立ちまってじっくり自分じぶんあたまかんがえ,いろいろなことに対応たいおうできる力,応用力おうようりょくをつけてほしいです。
また,うみのことをもっとってほしいです。日本はうみかこまれ,うみ資源しげん利用りようしたり,ふねでたくさんのまわりのものがはこばれてきたり,うみとかかわらない人はいないのです。ときには大きな災害さいがいこすうみですが,恩恵おんけいけています。ぜひうみすごさを共感きょうかんしてもらい,それをつたえられる人になってほしいともおもいます。実際じっさいいまうみ研究けんきゅうにはたくさんの分野ぶんや専門家せんもんか参加さんかしています。理系りけい分野ぶんやかぎらず,文化ぶんか社会制度しゃかいせいど法律ほうりつなどの専門家せんもんか研究けんきゅう参加さんかしています。たくさんの人の知恵ちえで,うみのことをもっとぶかり,つたえていく仲間なかまに,みなさんもくわわりませんか。

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