仕事人

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福岡県に関連のある仕事人
1980年 生まれ 出身地 神奈川県
布川ふかわ 愛子あいこ
子供の頃の夢: 絵描きさん
クラブ活動(中学校): 華道部
仕事内容
イラストレーターとして絵をき,絵本作家として物語も作る。
自己紹介
気分や感覚やそうぞうといった,目には見えないことを大事にしています。子どものころは真面目なせいかくでしたが,大人になるにつれ,かたの力がけた気楽なせいかくになってきました。休みの日は家族で川や海などに出かけて自然のなかで遊んだり,直売所で大好きな野菜を買ったりしてごしています。今はベランダでハーブを育てていますが,ゆくゆくは小さな畑で野菜を育てたいです。

※このページに書いてある内容は取材日(2020年09月24日)時点のものです

イラストレーターとして絵をき,絵本作家として物語も作る

イラストレーターとして絵を描き,絵本作家として物語も作る

わたしの仕事は「絵をくこと」です。イラストレーターや絵本作家として活動しています。イラストレーターとしては,さまざまな商品のパッケージや,こうこくのためのポスターなどのイラスト,ざっさしなどをいています。絵本の絵だけをくこともあります。仕事は,メーカーやしゅっぱんしゃこうこくだいてんなどから,「新しい商品が出るのでパッケージのイラストをいてほしい」「来月号のざっさしいてもらいたい」というふうにらいがやってきてスタートします。パッケージやこうこくのイラストの場合は「商品を知ってもらうためのイラストをくこと」,さしの場合は「記事のないようを伝えるためのイラストをくこと」が目的になります。ですから,こうした場合は,商品や記事のイメージを大切にしてイラストをかなければいけません。お客さまからイラストのないようについて細かく指定されることも多く,ご要望をしっかり聞きながら,商品や記事のイメージを広げていくようにイラストをせいさくしていきます。
絵本作家としての仕事は,自分で新しい世界を作り上げていくような仕事です。ゼロからお話を考え,お話に合った絵をき,しゅっぱんしゃへんしゅうしゃさんから意見を聞いて,何度も何度もていねいにしゅうせいを重ねていきます。自分のきたいものやきたい世界を大切にしながら自由にそうぞうりょくふくらませ,じっくり物語をつくんでいくのです。一さつの絵本が完成するまで,だいたい1,2年,長い場合は3,4年ていかかります。イラストレーターの仕事がしゅんぱつりょくの仕事なら,絵本作家はけいぞくりょくの仕事というイメージでしょうか。へんしゅうしゃさんとへいそうしながら取り組む,きゅうそうのような仕事だと感じています。わたしが絵と物語の両方を手がけた絵本はまだ1さつだけですが,これから絵本作家としての仕事も広げていきたいと考えています。

絵本作家の仕事は,しゅっぱんしゃからのらいでスタート

絵本作家の仕事は,出版社からの依頼でスタート

わたしが初めて絵本作家として絵と物語の両方を手がけたのが,2020年5月にしゅっぱんされた『ひみつがあります』という絵本です。「かわいいみつ」を持った森の動物たちのお話で,もともとは『MOE(モエ)』という絵本のざっれんさいとしてスタートしました。
ざっれんさいは,しゅっぱんしゃへんしゅうしゃさんに声をかけていただいたことがきっかけで始まりました。イラストの仕事でお世話になっていたへんしゅうしゃさんが,「次は絵をくだけじゃなくて,お話も書いてみたら?」と熱心にさそってくださったのです。まずはへんしゅうしゃさんから,「みつを持った動物がたくさん出てくるお話なんてどうでしょう?」とおおまかなアイデアをいただいて,それをヒントにしてイメージを広げていきました。「家でこっそりこうすい作りにせいを出しているキツネなんてどうかな?」「なんにでもポケットをけてしまうカンガルーの親子がいたら,かわいいかもしれない」……。そんなふうに考えていって,まずはざっくりと,10ぴきの動物のお話を作りました。
へんしゅうしゃさんと何度もやりとりしながら物語のないようを固めていき,でき上がったら,次はラフ案の作成に入ります。物語に合わせてえんぴつでささっとおおまかな絵をいていき,下絵のようなものを作るのです。このとき,文字と絵の配置や,バランスなども考えます。
ラフ案ができたら,次はいよいよ絵のせいさくです。本番用の紙とえんぴつを使って,ていねいに,集中して下絵をいていきます。そのあと,わたしの場合はすいさい絵の具といろえんぴつすいせいのクレヨンを使っていていきます。でき上がったらパソコンにんで,最後にパソコン上でしゅうせいして完成です。
こうして完成した絵と文章は,へんしゅうしゃさんにデータでのうひんします。あとは,へんしゅうしゃさんとデザイナーさんの作業です。わたしの考えや思いに沿って,絵と文字をパソコン上のソフトでデザインしてもらいます。それが印刷されることで,絵本の形になっていくのです。

絵本作りに欠かせない,へんしゅうしゃのアドバイス

絵本作りに欠かせない,編集者のアドバイス

絵本のせいさくになくてはならないのが,へんしゅうしゃそんざいです。へんしゅうしゃは,本やざっを完成にみちびくコーチのようなやくわりにない,本のかくを立てたり,スケジュールを管理したり,デザイナーや印刷会社を手配したりと,はばひろぎょうを行います。他に,作品に対するアドバイスを行うこともへんしゅうしゃの大切な仕事です。「本作りのプロフェッショナル」のてんで,「こうしたらもっとよくなるのでは?」とか,「このないようでは読者に受け入れられないと思う」といった意見を伝えてくれるのです。
わたしも,『ひみつがあります』のときには,たんとうへんしゅうしゃさんに,あらゆる面で助けてもらいました。「お話を書いたことがなく自信がない」と伝えたら,「わたしたちがサポートするからだいじょう!」とはげましてくださったり,わたしが書いた文章を,よりてきになるように調整してくださったり。お話のあらすじ作りやラフ案作りのときは,特にこまめにせいさくぶつを見てもらい,つねに相談しながら作品せいさくを進めていきました。
『ひみつがあります』はひと月おきにけいさいされるかくげつざっれんさいでしたから,いっぱんてきな絵本よりもスピード感を持ってせいさくしていかなければなりませんでした。そんなじょうきょうのなかでなっとくのいくものがき切れたのは,しきけいけんほうたんとうへんしゅうしゃさんのサポートがあったからこそです。絵本作りは,決してひとりではできない仕事だと思っています。

キャラクターのせいかくらしをそうぞうし,ていねいに絵をき上げる

キャラクターの性格や暮らしを想像し,ていねいに絵を描き上げる

わたしが絵をくときに大事にしているのが,「キャラクターの持ち味をしっかりひょうげんすること」です。「この子はきっとちょうめんだからおなべなんかもちゃんとならべるんだろうな」とか,「この子はあまり細かいことを気にしない子だから,少しよごれた洋服を着ていそう」とか。絵本の場合も,こうこくイラストの場合も,キャラクターのはいけいにあるせいかくや行動をイメージして,キャラクターをきわたせるモチーフを大切にしながらむようにしています。よく人から「細部のみが信じられないぐらい細かい」と言われるのですが,「まなきゃ」と思っていたことはほとんどありません。「きたい!」というか「かずにはいられない!」という気持ちです。とにかくそうぞうすることやくことが楽しいんですよね。
もうひとつ心がけているのが,「自分が100%よいと思ったじょうたいのうひんすること」。少しでも不安なところや心配なことがあったら事前に必ずお客さまやへんしゅうしゃさんに伝えて,かいけつしてから仕上げるようにしています。「なんだかちょっとイマイチだな」とか「これはダメかもしれないな」というじょうたいでは,ぜったいに出しません。
くときは,紙と自分だけの世界のなかで,ぎゅーっと集中していています。集中しすぎてきゅうが浅くなってしまうこともあるぐらいです。だからこそ,「なっとくのいくものができ上がった!」と思ったときは,心からホッとします。このかいほう感が,本当に心地ここちいいんですよね。絵をく仕事のだいだと思っています。

よい仕事をするためには,しっかり休むことが欠かせない

よい仕事をするためには,しっかり休むことが欠かせない

集中して絵をいていると,ときどき,まってしまうことがあります。思うようにけなくなってしまったり,くことがおもしろいと思えなくなってしまったり……。そういうときは,思い切って,しっかりと休むことが大事です。わたしはいつも,好きなものを食べたり,川や海に出かけたりして,「あ,完全に仕事のことわすれてた!」というぐらいまで,めいっぱい遊ぶようにしています。そうすると,自然と絵がきたくなってくる。心の底から「あぁ,きたいな」という思いがわき上がってきて,なんだかうずうずしてくるのです。
お気に入りの画材を使うことも大切にしています。わたしは,すいさいせんようの紙を使っているのですが,これに出会うまでは,ずっとどこかにストレスを感じながら絵をいていました。ところが,いろいろな紙をためし,自分に合うすいさいに出会ってからは,なんのかんもなく心地ここちよく絵がけるようになったんです。絵をくうえで,道具についてはちょっとぜいたくしてでも,いろいろためしてみて,自分に合ったものを使うことが大事です。
クリエイターにとって,使う道具やらすかんきょうなどを自分好みに整えて,ストレスの少ないじょうきょうをつくるというのはとても大切なことです。よい絵をき続けるために,今後も「しっかり休む」「気持ちよくける道具をそろえる」といったことはしきしていきたいと思っています。

時間があればいている,「かずにはいられない」子どもだった

時間があれば描いている,「描かずにはいられない」子どもだった

わたしが「きさんになりたい」と思ったのは,ようえんのときのことでした。小さいころから,とにかく絵をくことが大好きで,親に「今日はどうしても絵がきたいから」とお願いしてようえんをお休みさせてもらって,一日中,絵をいていたこともありました。家族旅行から帰ってきたときも,つかれたからと横になるのではなく,「つかれた」と言いながら,まず紙とえんぴつを持ってきて,見たものや食べたものの絵をくような子どもだったんです。
わたしが小学生のころ,そんな様子を見ていた親に,「絵をきたいならげいだいとうきょうげいじゅつだいがく)に行くといいよ」と言われ,そこからばくぜんと「いつかわたしとうきょうげいだいに行くんだろうな」としきするようになりました。小学校,中学校と絵をき続ける毎日をごし,高校は,じゅつが活発なことで有名だった公立高校に進学しました。高校2年生のころからげいじゅつじゅつけいの大学受験をせんもんとするこうに通い始め,2年ろうにんして,とうきょうげいじゅつだいがくに入学しました。動物が好きだったこともあり,「じゅうさんになりたい」と思っていた時期もありましたが,結局,きとして,大好きな動物の絵をはじめ,さまざまな絵をいて生活していく道を歩んでいます。
かえると,「絵が好き」というより,「かずにはいられない」子どもだったように思います。時間があれば絵をいていて,くことが勉強にもリラックスにもなっていました。「絵をく」ということは,小さいころから,わたしの人生の一部だったのだと思います。

⼤好きなブックデザイナーさんにポートフォリオを送ってイラストレーターに

⼤好きなブックデザイナーさんにポートフォリオを送ってイラストレーターに

⼤学を卒業したあとは,どうやったら絵をく仕事にけるのかがわからず,ひとまずデザインしょでグラフィックデザイナーとしてアルバイトを始めました。⽂字や写真,イラストなどの材料を組み合わせて,商品パッケージや,こうこくポスターなどの形にまとめ上げていく仕事です。デザインをしながら,商品パッケージやポスターに使う花などのちょっとしたイラストは⾃分でかせてもらっていて,絵をく機会が少しずつえていきました。
その後,思うぞんぶん,時間を使って,よりなっとくのいくイラストをきたいと思い,⼤好きなブックデザイナーであるなおさんにポートフォリオ(作品集)を送りました。そして,これをきっかけに,しょせきそうのお仕事をいただきました。すごくうれしかったです。そのときにアルバイトをめて,イラストレーターとしてやっていくことに決めたんです。その後,ギャラリーでイラストを発表するてんらんかいをしたりもしたことで知ってくれる⼈もえ,仕事のらいじょじょえていきました。
わたしは,最初から絵をく仕事にいて,はなばなしくデビューできたわけではありません。しかし,あせらず,あきらめず,コツコツと「絵をく仕事をする⽅法」をさがし続けました。仕事を求めてつねに⾏動し続けたことが,げんざいにつながったのだと思っています。

「好き」という気持ちを大切にしてほしい

「好き」という気持ちを大切にしてほしい

わたしが学生だったころは,今以上に「絵で食べていくなんて無理だ」という空気がありました。先生やしゅうの大人たちに「好きなことを仕事にするのは大変なことだよ」「苦労するよ」と言われたことも少なくありません。しかし,行動し続け,じっさいに絵をいて食べていけるようになった今なら,「ちょうせんするはある」「なんとかなる」と言い切れます。
みなさんがまわりの大人に「できっこない」と言われても,かんたんに受け入れないでほしいと思います。ゆめていする大人たちは,大体はみなさんの人生に対してなんのせきにんも持たない人たちだから。自分だけが,自分の人生を作っていけるのです。だから,人がなんと言おうと関係なく,自分の信じることをやってほしいなと思います。
それからもうひとつ知っておいてほしいことは,人生にはよいときと悪いときがあるということです。いやな時期,つらい時期も必ずあるものだけれど,それがずっと続くということはありません。いつかのものになるし,「あれがあったから今がある」と思えるときが来ます。あまり無理せず,がんりすぎず,いやなことはなるべくやらずに,好きなことをやってみてください。休むことも大事なことです。そうするうちに,いつの間にか時間はぎていくものです。
「好き」という気持ちだけ見失わなければ,道はいつかひらけます。がむしゃらにがんるとか無理をするとかではなく,「好き」をあきらめず,気楽に日々を積み重ねていきましょう。それがいつか,仕事や未来につながるはずです。

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エンリケ・バリオス
少年ペドゥリートが宇宙人アミと出会い,さまざまな物事の成り立ちを教えてもらう物語。20代のころにたまたま読んで面白かったのですが,大人になって読み返すとまた当時とは違う気持ちになりとても面白く,単なる空想の物語ではなく,リアリティのあるお話だと感じました。自分の子どもにもいつか読んでもらって感想を聞きたいと思っています。
布川 愛子
好きなことを好きなだけするのは,最高にうれしい。好きなこと,行きたい場所,食べたいもの,がまんせずにとことん味わいたい。そんな気持ちを乗せて描きました。また,好きなことをしている動物たちを見ていると,こちらまで幸せになるのだな,と描きながら感じていました。キャラクターの世界を存分に絵と文で描いた,われながら大好きな作品です。

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取材・原稿作成:秋山 由香(Playce)・東京書籍株式会社