※このページに書いてある内容は取材日(2017年06月07日)時点のものです
IT関連のさまざまな問題に幅広く対応
私は「三谷商事」という会社の「情報システム部」の部長で,部門全体の責任者です。私たちの部署ではコンピューターのシステムやネットワークを作ったり,ソフトウェアを開発しています。そして,それがうまく運用できるようにお手伝いをします。お客さまは主に官公庁や企業,病院など。また,多くの小学校や中学校にもIT機器やネットワークを導入しています。IT業界は日々進化していますし,要望もお客さまによって本当にさまざまで,それぞれに合った提案をしています。
仕事ではまず,営業の担当者がお客さまのところへうかがい,聞いてきた内容をシステムエンジニア(SE)に伝え,使いやすいシステムを作ったり,トラブルの対応にあたります。営業とSEは常に協力しながら,お客さまの仕事の内容まで細かく分析し,どうしたら問題を解決できるか,より作業がしやすくなるかを一生懸命考えます。メーカーでも同じことをやっていますが,うちの会社はモノを仲介する商社なので,自分の会社の商品に限定されることなく,お客さまの要望に最も合う商品や方法を自由に選べるというのが強みです。
部下を指導する管理者としての仕事
私は30年ほど会社に勤めていて,今は事業部長として約300人の部下たちを管理・指導しています。若いころは営業マンとしていろいろな会社に出かけては,コンピューターを売ったり,情報システムの仕組みを提供したりしていました。営業で直接お客さまに説明する時は,自分ひとりが頑張ればいいし,その後も担当のSEと一緒に考えていけば何とかなります。しかし今は,社員一人一人と話したり説明したりすることはできません。私がしなければならないのは,社員たちがそれぞれ仕事をしやすいような仕組みを作ること。自分が直接動かなくても会社全体の仕事がうまく回るよう,かじ取りをする役目です。社内のシステム作りはもちろん,頑張ろうと思えるよう雰囲気を盛り上げたり,社員が迷っているようだったらアドバイスをして,方向性を一緒に考えます。
人を動かすのは,自分が動くより何倍も難しい
みなさんは,「部長とか社長とか管理職になると,自分が直接,細かな仕事をしなくてもいいから楽そうだな」なんて思っていませんか? でも正直,自分でやる方がよっぽど楽です。部下とはいえ,大勢の“他人”を動かすのですから,なかなか思い通りにはいきません。若手の社員たちが何を考えているかを探り,自分の考えを知ってもらうために,普段からできるだけ社員たちの動きを見て,励ましたり褒めたりなどの声かけをするようにしています。
私は東京の支店と福井を行ったり来たりしており,また夜はお付き合いや接待でお酒を飲むことも多く,なかなか職場の自分の机でゆっくりできる時間はありません。でも,そうした中から最近の情報を仕入れたり,面白い人と知り合ったりできて,そこから新しい仕事の話が生まれることもあります。それを会社に持ち帰り,情報として部下たちに伝え,事業に結び付けることも私の大切な仕事です。
難しいからこそ意欲がわく。目標をクリアする快感
営業の現場にいる時も,管理職になった今も,目標を設定し,それに向かって頑張って達成するのが楽しいんです。その楽しさは,目標が難しければ難しいほど大きくなります。うまくいくためにどうしたらよいかを,いつも考えていますね。寝ていて夢の中で「これだ!」とアイデアが浮かんで,すぐに起きてメモを取ったり,トイレで考え込んでなかなか出てこられなかったりということもしょっちゅうです。
若いころはとにかく毎日お客さまのところへ足を運んで,誠心誠意,対応していました。また,新人時代は先輩にお酒を飲みに連れて行ってもらって,そこで仕事のことを深く教わったり,社外にもいろんな仲間を作るようにしていましたね。仕事も一生懸命やり,そして会社の外でも一生懸命遊び,人脈を作っていたことが,その後,いろいろな場面で役に立ちました。
ITの業界はどんどん進化し,できることも広がっています。要望以上のものが出来て,お褒めの言葉をいただいた時は嬉しいです。今は,取引先の方に部下を褒められた時が,自分が褒められる以上に嬉しいですけどね。
“風を読む”ことが重要
私が勤める三谷商事は,商社です。商社は「何かが欲しい人」と「何かを売りたい人」を結び付けるのが仕事です。取り扱う商品はさまざまで,三谷商事でもセメントや生コンクリート,ガソリンなども取り扱っています。会社は,安く仕入れて高く売れると利益が多くなります。でも,みんなと同じように動いていても売り上げは伸ばせないので,いつも情報収集のアンテナを張っているわけです。
自分の仕事をやっているだけでは,入る情報は限られています。だからこそ,積極的に外の人と交流することが大切だと思います。私は退社後に趣味のスポーツをしたり,多くの人と話したりしました。そこから,人々の考えを知ることが多かったです。世の中は常に変化していて,昨日までと同じことをしていてはいつの間にか時代遅れになって,商品を買ってもらえなくなります。“風を読む”とも言うんですが,今,世の中でどういうことが求められているのかをキャッチすることは,どんな仕事でも大切です。そのためには,常識にとらわれない感性が必要。「考えが固まらないように」と,自分自身に言い聞かせています。
目の前の仕事を楽しんでやることが大切
東京の大学を卒業して実家のある福井に戻る時,本当はテレビ業界に興味がありました。ちょうど三谷商事がケーブルテレビの事業を始めたと聞き,「これは面白そうだ」と思って入社しました。でも,ケーブルテレビの会社は,本体の商社とは別の関連子会社だったんです。とんだあわて者ですね。
三谷商事はコンピューター時代の到来を見越して,早くから情報の分野に力を入れていて,私はそこに配属されました。当時の私は情報産業という分野が何をするのかもよくわからず,まったく知識がありませんでした。ですから,入ってから勉強して,知識を身につけました。今はIT系の仕事をしたいという人は,最初から高校や大学,専門学校で学んできて,それなりに知識も豊富ですね。でも,何より大切なのは,目の前の仕事を楽しんでやることです。ほとんどのことは,一生懸命やっていると自然に楽しくなってくるんですよ。
これと決めたら全力を尽くして手に入れる
子どものころは東京に住んでいました。昔からこだわりが強いというか,「これ!」と思ったら何が何でも手に入れたいという子どもで,合体ロボのおもちゃが欲しいときは,3つのパーツを1人では買ってもらえないから,弟と妹をその気にさせて兄弟3人で親におねだりしたり。欲しいものがどうすれば手に入るかを,とことん考えるんです。この「目標を定めてそれに向けてあらゆる手を尽くす」というのは,仕事にもつながっているかもしれません。
子どものころから1人でいるのが平気なタイプで,人のことは気にならない性格でした。 どちらかというと,仲のいい,決まった友達とよく遊んでいましたね。6年生の時,母の実家がある福井に転校しても,すぐにみんなと仲良くなれましたよ。中学校は,バスケットボール部。高校では,ギターをやってバンドを組んだり,手当たり次第に本を読んだり。やっぱりいつもの仲間とつるんでいるより,好きなことを1人でやっている方が好きだったですね。
目の前の好きなことに全力投球を!
私は世代も上ですので,私が経験したことが皆さんの時代にそのまま当てはまることはないと思います。でも,ただひとつ思うことは,専門的な知識を深めることも大切だけど,広い知識を持つことはもっと大切だということです。人生はどこでどう変わるかわからないからです。私自身も目指した業界とは少し違う世界で働くことになりましたが,それまでやってきたことや身につけた知識は,その後,いろんな場面で役に立ちました。
まずは目の前のことに全力投球することですね。勉強だけではなくて,興味をもったこと,例えば運動でも趣味でもいい。その仕事に進まなくても,一生懸命やった経験とそれで味わった達成感というのは,どんな仕事をすることになっても,自分を支えてくれると思います。目標達成の手段はひとつではありません。ありきたりのやり方にとらわれず,いろんな方法を考えてみることも大切です。