仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1988年 生まれ 出身地 大阪府
宇澤うざわ 裕樹ゆうき
子供の頃の夢: 獣医師
クラブ活動(中学校): 剣道部
仕事内容
ちくやペットの病気が国内にしんにゅうしてまんえんしないようたいさくを行う。
自己紹介
きょうを持ったことにぼっとうするタイプです。休日はしゅに全力を注いでいます。スポーツ観戦や、お笑い・えいかんしょう、スポーツジムで体を動かすことが大好きです。

※このページに書いてある内容は取材日(2025年06月24日)時点のものです

でんせんびょうの病原体や害虫などがまれるのをふせぐ「けんえき

伝染病の病原体や害虫などが持ち込まれるのを防ぐ「検疫」

わたしよこはまにある動物けんえきしょ本所のけいりゅうせつで、ちくぼうえきかんとして働いています。けんえきとは、でんせんびょうの病原体や害虫などが日本国内で広がることをふせぐために、こくさい空港や海港などで旅行者や貨物をけんし、必要な場合はかくしたりしょうどくしたりすることです。もしけんえきを行わなければ、海外から病気が日本にしんにゅうし、日本各地に広がって、人や動物、植物の健康にあくえいきょうが出たり、でんせんびょうにかかったちくさつしょぶんすることでちくさん農家にけいざいてきがいがもたらされたり、しょくりょうなんわれたりするのうせいがあります。
日本でしんにゅうが最もけいかいされているちくの病気は、こうていえきやアフリカぶたねつ、鳥インフルエンザなどです。中にはでんせんせいりつの高い病気もあり、こうした病気のしんにゅうやまんえんふせぐために、けんえきは必要けつです。
わたしは農林水産省動物けんえきしょしょぞくするちくぼうえきかんとして、「ちくでんせんびょうぼうほう」などのほうりつもとづき、しゅつにゅうされる動物や鳥が病気にかかっていないかのけんや、肉などのちくさんぶつけんなどを行っています。

※「あしたね」へんしゅう注:農林水産省では動物けんえきのほか、植物けんえきを行っています。また、こうせい労働省では人間をたいしょうにしたけんえきを行っています。

馬やぶたなどのちくからペットの犬やねこ、お土産みやげにくせいひんまで

馬や豚などの家畜からペットの犬や猫、お土産の肉製品まで

ちくぼうえきかんが主に働いている場所は、日本の出入り口となるこくさい空港や海港、こくさいゆう便びんきょく、そして外国からにゅうされた動物や日本からしゅつされる動物を一定期間く(かくする)けいりゅうせつです。
こくさい空港やりょかくせんターミナルでは、日本へのみがきんされている肉やにくせいひん(ハム、ベーコンなど)が手荷物に入っていないかを、ハンドラーがあやつる動植物けんえきたんけん(以下、「たんけん」)の力を借りながらけんします。死んだ動物の肉がけんえきたいしょうになっている理由は、たとえれいぞうれいとうされている肉であっても、その中に何か月も生き残るウイルスなどの病原体もあるためです。また、加工品については、十分に加熱されていれば病原体が死んでいるのうせいが高いと思われるかもしれませんが、十分に加熱されているかどうかをその場でかくにんすることがこんなんなため、しゅつこくせいが定められたじゅんどおりに加熱されているとしょうめいしている場合以外、みをきんしています。
全国の空港や海港における入国者のけいたいひんけんきんひん(肉やにくせいひん)が見つかったあんけんのうち、たんけんけんたずさわったわりあいは約51%(2024年のじっせき)と、だいかつやくしています。また、ちくぼうえきかんは入国者に積極的に声をかけて「にくせいひんんでいる場合はしんこくしてください」とうながします。さらに、ペットの犬やねこ、うさぎなどもけんを行います。
コンテナなどの貨物のけんでは、ちくさんぶつ、動物のえさとなるかんそうなどのりょうけんたいしょうです。げんぶつかくにんのほか、しゅつもとの国で行われたけんないようを書類上でチェックしたり、ほうりつや、しゅつもとの国と日本との間での取り決めたこうがっするかをかくにんしたりします。
こくさいゆう便びんきょくでは、ちくぼうえきかんが荷物のラベルをかくにんし、にくせいひんが入っているのうせいがある場合は、ゆう便びんきょくの立ち会いのもとかいふうして中身をかくにんします。ゆう便びんきょくでもたんけんかつやくしていて、ゆう便びんぶつの中にふくまれているにくせいひんの発見に一役買っています。

しゅつにゅうされる動物のけんをする

輸出入される動物の検査をする

けいりゅうせつは空港や港の近くにあり、主に牛やぶた、馬などのちくけんを行っています。動物は、しゅつもとの国でもけんを受けており、そのけんないようさいされたしょうめいしょなどのチェックも行います。日本にとうちゃく後、一定期間、動物をけいりゅうかく)して病気にかかっていないかをかくにんすることで、海外からのでんせんびょうの国内へのしんにゅうふせいだり、日本から海外にでんせんびょうかくさんさせないようにしています。
ほうりつにより、動物の種類ごとにけいりゅうせつないかれる日数が定められています。例えばにゅうされたぶたや牛などのぐうているいは15日、馬は10日です。必要なけんごうかくすると、入国をきょするしょうめいしょを発行してかいほうとなります。にわとりやアヒルといった鳥類や、ペットの犬やねこけんします。
動物に病気が見つかるなどの理由でけんごうかくだった場合は、けいりゅう期間をえんちょうして追加けんをしたり、元の国に返送したり、さつしょぶんしたりといったたいおうを取ることになります。一方、日本から海外へしゅつされる動物のけいりゅう期間はにゅう時より短く、ぶたや牛などのぐうているいは7日、馬は5日です。
わたしが働く動物けんえきしょ本所には100名ちょうしょくいんざいせきしており、そのうち約70名がちくぼうえきかんです。わたしは主に動物をけいりゅうしてけんし、しゅつにゅうできるかかくにんするしょで働いています。わたしは毎日朝8時半にしゅっきんし、みんなでミーティングを行った後、けんに使う機器をてんけんします。動物のさいけつを行う日は9時ごろからちくしゃに入って作業をスタートし、動物のじょうたいもよく観察します。さいけつが終わったらシャワーを浴びてから、マスクや白衣を身に着けて、けんかります。けん中は動物の病気が人にかんせんしないように、また人に付着しているせいぶつけんたいけん試薬にぜてしまわないように気をつけています。けんこうもくは、しゅつもとの国や動物の種類などによってことなります。例えば馬の場合は5こうもくていけんを5名ほどで行います。とくしゅな機械やちょうな試薬を使うけんは別のしょらいします。多いときは、1日で数百頭分を一気にけんすることもあります。

けんには集中力が求められる

検査には集中力が求められる

けんには、けつえきけんでんけんさいきんけんなど、さまざまなものがあります。けつえきけんでは、けつえきの中にひそせいちゅうけんきょうさがしたり、けつえきの中に病原体がいると光ったり色がついたりする試薬を使って病原体をさがしたりします。でんけんでは、試薬や機械を使って病原体のでんさがします。
けんには集中力が求められます。例えば、ピペットという実験器具はえきたいせいかくに計量できますが、正しくていねいあつかわないと計量されるえきたいの量がずれてしまうこともあります。また、けんたいけつえきやふんなど)には病原体がふくまれるのうせいがあるので、あやまって飛散させることのないようにしんちょうあつかいます。
けんは数時間で終わることもありますが、けんこうもくによっては午後いっぱいかかったり、1日中けんしつにこもって行ったりする場合もあります。けんに加えて、ちくしゃけいりゅう中の動物の健康じょうたいじょうがないかをかくにんするために、毎日観察しに行きます。定時の退たいきん時間は17時15分で、それまでに終わるように、みんなで協力し合って仕事に取り組んでいます。
ペットの犬やねこしゅつにゅうけんぬしの方々のどうが多くなる4月や8月、12月の前後に、機会がえます。また、ちくについては、暑い夏場はちくにとってたんが大きく、おぼん時期でもあるので、にゅうってかんさんになります。

時にはきびしいはんだんをせざるをないことも

時には厳しい判断をせざるを得ないことも

けんで病気がかくにんされた場合は、ほうりつもとづいて動物をさつしょぶんしなければならないこともあります。これもちくぼうえきかんの大切な仕事です。わたしさつしょぶんをしなければならなくなったことがあり、その動物の不運を思って悲しい気持ちになりました。しかし自分のじょうに流されて病気がかくにんされた動物の入国をきょしてしまうと、日本国内のさらに多くの動物やちくさんぎょうあくえいきょうおよぼすこととなるので、はらをくくって取り組みます。このせきにんある仕事を選んだ以上、時につらいはんだんけて通れません。
ちくぼうえきかんは国家こういんです。数年に一度、てんきんがあります。働く場所は主に全国の空港や海港、ゆう便びんきょくけいりゅうせつになりますが、東京のかすみせきにある農林水産省(本省)で働くこともあります。さまざまな仕事があり、きんが必要となるしょもあります。土地ごとにことなるじょうこうりょする必要もあり、どうするたびに、てきおうしようとがんらなければなりません。ただ、けっこんなどによる家庭のじょうこうりょしてもらうことができます。
わたしげんざいは神奈川で働いていますが、には東京や鹿児島、鳥取で働いてきました。てんきんは大変ではありますが、この仕事にかなければ住むことのなかったような土地に住み、ゆたかな自然や食文化にれ、さまざまな人に出会うことができて一人の人間として勉強になりましたし、かけがえのない思い出ができたとも感じています。

何事もなく、無事に送り出せるときはうれしい

何事もなく、無事に送り出せるときはうれしい

馬やぶた、牛などのちくからペットの犬やねこまで、仕事を通じてさまざまな種類の動物とえることがうれしいです。動物の顔を見るだけでむねがキュンとしますし、大きな動物もかわいいと思いながら日々せっしています。別のしょで働いていたとき、牛の助産をしていてようすいを浴びたことも何度もありますが、自分がよごされても平気ですし、人によっては気になるかもしれない動物のにおいや力の強さなどをふくめて、かわいいと思っています。
ぶたせつうんぱんされてきたときからこうしんおうせいでこちらにちかってくることが多いですが、馬はたいによってはせんさいで、さくおくの方でしょぼんとしていることもあります。そんな子が、毎日会っているうちに少しずつ心を開いてくれるととてもうれしいです。さくの前方に口先を出して「ねえねえ」と服をってくることも。かわいいのですが人間よりもはるかに力が強く、じゃれてかみついてくることもあるので、けがには気をつけています。
草食動物にはおだやかなイメージもありますが、前にすんでいた国ではないされていた動物が日本にやってきてせつに入れられる場合は、人間にれておらず、ちかっただけでイライラしたりこうげきしたりしてくることもあります。そのようなじょうたいの動物からさいけつするさいは、ヘルメットなどのぼうを身に着けてからのぞみます。さいけつさい、動物はにゅう業者の方々がさえてくれるのですが、そうした周りの人たちの安全にもはいりょしながらきんちょうかんを持って仕事に取り組んでいます。
せつに動物がたいざいするのは、ほんてきに10日から15日ていです。たんとうの動物に毎日のように会っていると愛着もいてくるため、はなれるときにさびしさを感じることもあります。しかし、元気にトラックに乗って出発する様子を見ると「けんが無事に終わり、何事もなく生きて出発できてよかった」と、うれしい思いがこみ上げてきます。

たいごとによく観察し、けいをもってせっする

個体ごとによく観察し、敬意をもって接する

動物とせっする仕事ぜんぱんに必要なことだと思いますが、動物が何をされたらかいてきなのかかいなのかを、できるかぎかいしてせっするように心がけています。人間と同じように、動物にも動物種や品種だけでなく、たいごとにせいがあります。例えば馬は人間にくらべて頭の横側に目がついているため、死角となる正面に立たれるといやがることがあるのですが、じっさいに立たれるとイライラする子もいれば、気にせず落ち着いている子もいます。そういったたいきわめて、その子に合った行動を取るように努めています。
そもそもけいりゅうせつにやってくる動物は、今までらしていたかんきょうとはちがう場所でいきなり見知らぬ人間にかこまれてけんされるため、少なからずストレスを感じていると思われます。ストレスがかかると人間もこうげきてきになることがありますが、動物も同じですし、健康にもえいきょうおよびます。ストレスを少しでもおさえられるように、動物特有の行動をよく知り、たいごとによく観察してアプローチすることが、動物のストレスのかんや作業にたずさわる人たちの安全につながるのではないかと考えています。

じゅうしきを生かして社会にこうけんできる仕事

獣医師の知識を生かして社会に貢献できる仕事

わたしは、じゅうとしてのしきを生かして広く社会にこうけんしたいという気持ちで、ちくぼうえきかんの仕事を選びました。動物にはさまざまな種類がありますが、大学で実習に取り組むうちに馬や牛、ぶたといった大きな動物にきょうくようになり、かれらにれられるような仕事をしたいと思ったことも、この仕事を選んだ理由です。
ちくぼうえきかんは動物のけんを行うさい、ピペットなどの実験器具を使ってけんしつぎょうを行うことが多く、そこにもりょくを感じました。わたしが学んでいた大学の研究室では、でんレベルの研究に力を入れており、でんけんなど、げんざいぎょうにつながるような作業も行っていました。教えてくださった先生もらしい成果を上げられていたのできょうきました。
わたしは国家かくであるじゅうかくしゅとくできる大学で学びながら、農林水産省のじゅうけいじゅつしょくいんさいよう試験を受験して、げんざいの仕事にきました。じゅうけいじゅつしょくいんになるには、大学でじゅうがくを学び、じゅうめんきょしゅとくすることが必要です。一方、ちくぼうえきかんにはほかにちくさんけいじゅつしょくいんもおり、こちらの場合はかく不要でちくさんがくを勉強することが受験かくになります。自分なりにがんってさいよう試験をとっして希望する仕事にけた今は、動物の病気から日本を守る仕事であることをしきしてぎょうに当たっています。

動物が好きで、かんつちかったしきろうしていた

動物が好きで、図鑑で培った知識を披露していた

大阪生まれということもありよしもとしんげきを見て育ち、おしゃべりやふざけるのが好きな子どもでした。テレビゲームも楽しみましたし、はんしんタイガースのファンで野球の試合結果をノートにまとめるほど好きでした。
小学生時代は、平日3、4日は水泳を、週末はけんどうを習い、中学・高校時代もけんどうしょぞくしていました。けんどうではおさないころからあいさつれいきびしくどういただいたおかげで、今でも自分から積極的にあいさつするしゅうかんがあります。大学時代、ろうですれちがうだけのかんけいせいだったせんぱいにもあいさつしていたのですが、卒業後にそのせんぱいひさしぶりに会っても覚えてもらえていたので、けんどうを習ってよかったと思います。
動物とのいという点では、もの心ついたころから犬とかめっていて、家族といっしょにかわいがっていました。動物に関するかんなんさつも読みあさり、自分で調べてしきろうしていたので、周りからは動物好きとして知られていました。好きな教科は理科で、とくに生物について知りたいと思っていました。一方で、けい科目の中でも算数や数学はずっと好きではなく、かんで仕方なく学んでいました。じゅうというしょくぎょうしきし始めたのは、小学校高学年のころです。当時は野生動物のにもきょうを持っており、アフリカで野生動物関係の仕事をしたいと考えていました。

学校生活以外のことにも積極的に取り組むと、が広がる

学校生活以外のことにも積極的に取り組むと、視野が広がる

がんって勉強に取り組まなければいけないときもあると思いますが、友達や家族など自分の周りにいる人たちとの時間や、しゅやスポーツを楽しんだりする時間も同じくらい大事にしてほしいと思います。わたしがそうだったように、学校生活以外のけいけんしょうらいの仕事選びに役立つかもしれません。仕事につながらなくても、大人になっても続けられるしゅになったり、新しい出会いをんでくれたりするかもしれません。メインである学校生活も大事にしながら、それ以外のことにも積極的に取り組んでいってほしいです。
というのも、学校で学ぶ時期に毎日をつうごしていると、学校でのじょうしきやルールのみが、自分のかんのすべてになってしまうと思うのです。しかし別のコミュニティに身を置いてみると、そこではこれまでの自分が思っていたものとはことなるじょうしきやルールにれられ、新しい感覚がられるかもしれません。わたしの場合はけんどうをやっていたことで、その活動にすくわれたり、じゅうじつした時間をごしたりすることができました。さまざまな考え方にれたりけいけんたりすると、自分のじょうしきを冷静に見つめ直せるし、が広がると思います。

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取材・原稿作成:星野 祐子(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行