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東京都に関連のある仕事人
1992年 生まれ 出身地 埼玉県
今駒いまこま 龍太郎りゅうたろう
子供の頃の夢: プロ野球選手
クラブ活動(中学校): 陸上部 ※野球のクラブチームに所属
仕事内容
安全でかいてきなリニア車両をせっけい・開発する。
自己紹介
外交的でこうしんおうせいちゅうはんでは気がまず、てっていてきにやり切りたいタイプです。飛行機や車など、乗り物の機械こうぞうについて考えるとワクワクします。休みの日は、おいしいものを食べに行くなど、家族と外に出かけることが多いです。

※このページに書いてある内容は取材日(2023年06月28日)時点のものです

たくさんのメーカーと協力しながら、じゅつを結集させて、鉄道車両をつくる仕事

たくさんのメーカーと協力しながら、技術を結集させて、鉄道車両をつくる仕事

わたしはJR東海で、リニア中央しんかんせんのためのちょうでんどうリニアの車両をせっけい・開発する仕事をしています。近いしょうらいじっさいに多くのお客さまを乗せて走る車両をせっけい・開発するとともに、山梨県にある山梨リニア実験線で走行試験を行いながら、えいぎょう開始に向けて車両をかいぜんしていくことが主な仕事ないようです。
リニア車両にかぎらず、これまでになかった新しい鉄道車両を生み出すためには、「開発」と「せっけい」という2つのこうていが欠かせません。「開発」とは、車両をつくるのに必要な、まったく新しいじゅつを生み出すこうていのことです。たとえばリニア車両の場合、ちょうでんどうしゃくというとくしゅしゃくの力で車両をかせて走りますが、そのじゅつももちろん一から開発したものになります。ほかにも、車体を形づくるためのざいや、そうおんしんどうを小さくするためのこうぞうなどを一から考え、開発しています。そして、何十年以上にもわたってちくせきしてきた開発の成果を、最終的に車両の形に落としこむのが「せっけい」というこうていになります。
しんかんせんに乗ったことがある人は、車内の様子を思い出してもらうとわかりやすいかもしれませんが、車内には走行に必要な機械だけでなく、とびらまど、シートや照明、空調など、たくさんの機器やせつそなわっていますよね。それらすべてをわたしたちの会社だけではせっけい・開発しきれません。そのため、それぞれの機器やせつをつくるプロであるさまざまなメーカーと協力することで、わたしたちの仕事は成り立っています。それらの機器やせつを集め、せきにんを持って一つの車両に仕上げるのが、わたしたちのやくわりです。

トライ&エラーを何度もかえし、車両のせいのうを高めていく

トライ&エラーを何度も繰り返し、車両の性能を高めていく

車両のせっけい・開発はたくさんの人と協力して進める仕事です。メーカーや社内メンバーと打ち合わせや相談をすることがあっとうてきに多く、パソコンに向かって仕事をしている時間はそんなに長くないかもしれません。たくさんの人と話し合った結果をもとに、じっさいに車両をつくるだんかいになったら、せっけいを3Dでける「3D CAD(キャド)」などのソフトを使って、車両の形をせっけいしていきます。
ただし、車両をせっけいしたら終わりではありません。せっけいした車両が、じっさいにお客さまを乗せてかいてきに走れるものなのかをたしかめるところまでがわたしたちの仕事です。たとえば、車内のそうおんを小さくできるじゅつを開発できたとします。ですが、じっさいにどれだけのこうがあるかは、実物でためしてみなければわかりません。そこで、開発した新しいじゅつじっさいの車両に組みこんで、試験をします。本当にそうおんが小さくなることがかくにんできれば、そのじゅつさいようします。思ったよりもそうおんが小さくならなかったら、良い結果が出るまで、じゅつかいぜん、車両のかいぞう、試験、というこうていかえします。
試験をしなければいけないのはそうおんだけではありません。しかし、すべてのじゅつに関してじっさいの車両で試験をしようとすると、たくさんの時間とお金をしょうしてしまいます。そこで、コンピュータシミュレーションや、車両を走らせなくても乗り心地ごこちを体感できるそうなども活用しながら、開発したじゅつひょうを行っています。
そういったじゅつひょうを長くたんとうしていると、だんだんれてきてしまい、じっさいに乗るお客さまの立場に立って、客観的にひょうすることがむずかしくなってしまうこともあります。リニア車両に関しては、いっぱんのお客さまにご乗車いただく体験乗車もじっしているため、乗車したお客さまからの意見は、今後の開発のヒントとして、しっかりと受け止めるようにしています。

たくさんのを同時にじつげんすることに苦戦する日々

たくさんの価値を同時に実現することに苦戦する日々

車両のせっけい・開発で一番大変なのは、広い車内スペースのかくじゅうじつしたサービスせつどうにゅう、乗りごこの向上、かいてきな車内温度、かんきょうへのていげん、重量ていげん、低コスト化など、たくさんのを同時にじつげんしなければいけないところです。リニア車両では、特に「重量ていげん」にむずかしさがあります。
物をちゅうかせることをそうぞうしてみてください。重ければ重いほど、きにくいことは、なんとなくイメージできるかと思います。リニア車両は、しゃくの力でかせて走るため、軽い車両であることが求められています。一方で、今のしんかんせんの約2倍近い時速500キロメートルというとても速いスピードで走るため、大きな空気ていこうあつりょくの力を受けることになります。大きな力にえられる強度をかくし、車内のそうおんしんどうおさえるためには、車体のあつみをあつくするなど、車両を重くする方向となり、今度はきにくくなってしまいます。その、相反する2つをどう両立させるかが、一番苦労しているポイントです。今のしんかんせんと同じじゅつだけを使っていてもかいけつできないため、飛行機のじゅつなども参考にしながら、日々、新しいじゅつの開発を重ねているところです。
ここまでにお話をしたような、たくさんのを同時にじつげんする方法については、ただ一つのせいかいがあるわけではありません。すべてをベストにはできない中で、どの道がより良いのか、を考え続けなければなりません。一人で考えても答えは出ないので、たくさんの人とろんをしながら、せんたくはんだんかえして、みんながなっとくする形で進めています。開発・せっけいの仕事は、チームで作り上げていくものなんですよ。

お客さまの安全のためには、決してきょうしない

お客さまの安全のためには、決して妥協しない

たくさんろんを重ねる中でわすれてはならないのが、「安全さいゆうせん」のしきです。リニア中央しんかんせんげんざい、走っているしんかんせんも、たくさんのお客さまを運ぶものなので、安全は何よりもさいゆうせんです。これはわたしだけでなく、社員全員にしんとうしています。
お客さまの安全をかくするため、わたしが仕事でこころけているのは「わかったふり、知っているふりをしない」ことです。たとえば、メーカーから新しくせっけいしたこうぞうあんぜんせいについての説明を受けたときに、自分が一度でかいできなかった場合には、なっとくできるまでしつもんをしてかくにんするようにしています。かいできないのは自分の勉強不足がげんいんである場合も多いので、しつもんするのがずかしいという気持ちもありますが、自分がかいできていないまま発した「わかりました」という一言が、安全をそこなうことにつながってしまうのうせいもありえます。お客さまはもちろん、じょういん、車両をメンテナンスする人たちにとってより安全で、より良い車両をつくるために、せっけいしゃきょうしてはいけないという信念を持って、わかるまでかくにんするようにしています。

多くの人の役に立てることが、この仕事の一番のやりがい

多くの人の役に立てることが、この仕事の一番のやりがい

人々の安全に直結する大きなせきにんともなう仕事ではありますが、たくさんのお客さまを運ぶためのものをつくっているからこそ感じられるやりがいもあります。
わたしは、リニア車両のせっけい・開発をたんとうする前は、しんかんせんの最新車両(2023年6月時点)である「N700S」のせっけい・開発にたずさわっていました。N700Sのえいぎょう運転開始日にテレビやインターネットなどいたるところでニュースが流れているのを見たとき、多くの人の役に立てていることを改めて実感し、とてもうれしかったことを覚えています。また、自分がせっけいしたしんかんせんに友達が乗っているのをSNSで見ることもあり、日々、よろこびを感じることができました。
リニア中央しんかんせんはまだ開業していないため、今、一番の目標は、じっさいえいぎょう運転する車両を完成させることですし、そのときのことを考えると今から楽しみで仕方がありません。一方で、山梨リニア実験線で試験走行を行うための車両が完成したときや、シミュレーションでねらい通りの結果が出たときなど、節目節目で大きな達成感ややりがいを感じる場面は多くあります。車両の完成に向けて、かくじつにステップを積み重ねていく成功体験は、日々のモチベーションにもなっています。当然うまくいかないこともたくさんありますが、うまくいかないことがあるからこそ、良い結果が出たときの達成感はひとしおです。

子どものころから計画的に物事を進めてきたことが、今の仕事にも生きている

子どものころから計画的に物事を進めてきたことが、今の仕事にも生きている

ちょうでんどうリニアはすでに実用じゅつとして完成していますが、より安全・かいてきな車両にするためには、まだまだかいぜんはありますし、考えることも、かいけつしなければいけないこともたくさんあります。新しいじゅつ開発やせっけい、試験を同時進行で進めていく中で、さまざまな課題が発生します。それらのじょうほうを整理し、プロジェクトの進み具合を管理しながらしょしていくことも大変なことの一つです。加えて、せっけい・開発の仕事では、せんもんてきしきけいけんが求められるため、一人でははんだんできないこともたくさんあります。上司やけいけんの長いせんぱいたちに相談し、アドバイスをもらいながら、一つ一つの課題を地道にかいけつしていく必要があります。
一方で、わたしは中学生のころから行き当たりばったりが苦手で、計画的に物事を進めたいタイプでした。期末テストに向けて、1か月の学習計画を1日単位で綿めんみつに立てていたほどです。そういう意味では、いろいろなじょうほうを整理し、自分の中で進み具合の管理をしながら、いつまでに何をやるという計画を立てて進める今の仕事は、実は自分にぴったりだったのかもしれませんね。

自分の好きなことを選び続けていると、未来が開けてくる

自分の好きなことを選び続けていると、未来が開けてくる

わたしは小さいころから、車や電車、飛行機などの乗り物は好きでしたが、鉄道業界にしゅうしょくするとは思ってもいませんでしたし、そもそも「しょうらいはこんな仕事にきたい」ということ自体も中学生のころはまったく考えていませんでした。でも、かえってみると、自分の好きなことを選び続けてきた結果、今の仕事にたどり着いたのだと思っています。
じっさいに、わたしは高校時代に物理が好きだったため、その流れで大学は機械工学科に進みました。そして機械工学のせんもんせいを生かせる仕事にきたいと思い、はばひろい業界の説明会に参加していた中で、出会ったのが今の会社でした。JR東海の説明会で、「鉄道車両の開発・せっけいはたくさんのメーカーと関わりながら、さまざまなじゅつを集めて、まとめ上げる仕事」「たくさんの人に利用され、社会にこうけんできるほこりある仕事」ということを知り、とてもいんしょうぶかかったことを覚えています。加えて、社員の方のふんにもりょくを感じ、しゅうしょくを決めました。
みなさんも、今、自分のやっていることがしょうらいの仕事にどう役立つかは考えなくてもだいじょうだと思います。自分がきょうのあること、これだったらがんれるかもしれないと思うことを、ほかのものよりほんの少しだけ、こうしんのおもむくままに続けていると、その先の道が開けてくるはずです。
そして、たくさん遊んでください。わたし自身、学校や習いごとの時間以外は遊んでばかりでした。スポーツでも音楽でも読書でも、好きなことが多ければ多いほど、たくさんの人と出会うことができ、楽しい人生になっていきますよ。

車両の開発は、開業後も続いていく

車両の開発は、開業後も続いていく

世界初のちょうでんどうリニアが開業したら、ぜひその乗り心地ごこちを体感してみてほしいと思っています。そのときに、時速500kmで地上を走る乗り物に乗って、安全・かいてきどうできることは、当たり前ではなく、実はすごいことなんだ、そのためにたくさんの人たちが努力を重ねてきたんだろうなと、一歩立ち止まって考えてもらえると、せっけいしゃとしてはすごくうれしいですね。
わたしはN700Sしんかんせんせっけいたずさわりましたが、東海道しんかんせんが開業したのはわたしが生まれる約30年前、1964年のことです。東海道しんかんせんの車両が開業後も0けい、100けい、300けい、700けい、N700けいと今まで進化し続けてきたように、リニア中央しんかんせんが開業した後も、まだまだ車両の開発は続いていきます。しょうらいのリニアプロジェクトに、いっしょに取り組める仲間が1人でもえたら幸いです。

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取材・原稿作成:楳園 麻美(Playce)・東京書籍株式会社