仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

沖縄県に関連のある仕事人
1963年 生まれ 出身地 沖縄県
しょくひんせいぞうかんり食品製造管理
久高くだか 友勝ともかつ
子供の頃の夢: ロボットのエンジニア
クラブ活動(中学校): なし
仕事内容
自分が考えたアイディアから商品を企画きかくして,新しい商品をつくす仕事です。
自己紹介
あまり怒ることはないが,あまのじゃくなところもある。休みの日はドライブやウインドショッピングなどをして気分転換をしています。
黄金 言葉くがに くとぅば:いちゃりば ちょーでぇー (沖縄県の方言)
訳:出会った人は,皆,家族

※このページに書いてある内容は取材日(2017年03月20日)時点のものです

年間100万人!国内外からのお客様

年間100万人!国内外からのお客様

わたしつとめている「南都物産なんとぶっさん株式会社かぶしきがいしゃ」は,観光みやげ品の製造せいぞう卸販売おろしはんばいを行う会社で沖縄おきなわ那覇なは市に本社があり,沖縄おきなわ玄関げんかん口である那覇なは空港や石垣いしがき空港には自社で作った観光みやげ品を販売はんばいする直営ちょくえい店があります。
わたし普段ふだん仕事をしている場所は,沖縄おきなわ南城なんじょう市にある「おきなわワールド文化王国・玉泉洞ぎょくせんどう」という沖縄おきなわの自然と歴史文化を楽しむことができるテーマ―パークの中にあります。ここでは,琉球りゅうきゅう王朝時代の町並まちなみを再現さいげんしたエリアで,エイサーという伝統でんとうおどりを毎日見る事ができますし,琉球りゅうきゅうガラス作りの体験エリアや沖縄おきなわ奄美あまみ固有のへびであるハブの資料館しりょうかんなどもあります。中でも一番人気は,東洋一美しいといわれる「玉泉洞ぎょくせんどう」という全長5,000メートルの鍾乳洞しょうにゅうどうです。鍾乳洞しょうにゅうどうとは,石灰せっかいという成分をふくんだ雨水が,洞窟どうくつ内にしてできる鍾乳石しょうにゅうせきという乳白色にゅうはくしょくの石の柱が,がねのように空間を形成する洞窟どうくつのことです。この鍾乳洞しょうにゅうどう見たさに日本国内だけでなく,アジア,欧米おうべいから年間100万人の観光客がこの場所をおとずれます。
わたしは,このテーマパークを楽しまれた方々かたがたが旅の楽しみの思い出に,または家族や友人のためにおみやげとして買っていくお菓子かしなどの商品をつくる「食品製造せいぞう管理」の仕事をしています。

沖縄おきなわ」を感じる“Made in Okinawa Japan” を作る

「沖縄」を感じる“Made in Okinawa Japan” を作る

わたしの会社でつくるお菓子かしは,大きく分けて2種類あります。一つめは沖縄おきなわの代表的なお菓子かしの「ちんすこう」。1日3万作ります。スタンダードな「ちんすこう」も作りますが,ドライフルーツ入りの「ちんすこう」は沖縄おきなわ初の商品です。二つめはフルーツケーキなどの菓子がしです。どの商品にもマンゴー,パイナップルそしてべにいもといった沖縄おきなわらしい食材や国産の小麦や小豆を使っています。全ての食材を県産や国産にする事はむずかしいのですが,なるべく意識いしきしたいと心がけています。観光に来てくださる方々かたがたは,「沖縄おきなわ」を全身で楽しむために来てくださいます。青い空,青い海を目で楽しみ,三線さんしんの音色を耳で楽しみ,沖縄おきなわ料理を美味しくいただく。きっと自分の住んでいる地域ちいきにはないものを求めて沖縄おきなわを楽しんいらっしゃると思います。
おみやげには大切な役割やくわりがあると思うんですよ。沖縄おきなわにいる「今」はもちろんのこと,家にもどり時間がぎても沖縄おきなわのことを思い出してほしいと思っています。だから「沖縄おきなわ」を,海外の方には「日本」を感じることができる日本製にほんせいの商品をつくりたいと思っています。日本の会社が発注して外国の工場で製造せいぞうしている日本商品も市場にはあふれていますが,「日本の商品を沖縄おきなわでつくる!」わたしたちがつくる菓子かし箱に書かれている”Made in Okinawa Japan”の文字,これはわたしたちにとってのプライドのあかしです。

価値かちを高めるために「本物」にこだわりたい

価値を高めるために「本物」にこだわりたい

「どんな商品をつくったら喜んで買ってくれるだろう…」それを考え,新しい商品をつくすのがわたしの仕事です。商品企画きかくとか商品開発といいます。アイディアを考えるのは楽しいことですが,それを現実げんじつの商品として形にしていくことは時間と労力そしてお金がかかります。
まず商品企画きかくは,自分が考えたアイデアの商品を買いたいと思うのかを調べるニーズ調査ちょうさから始まります。年齢ねんれい別,男女別,沖縄おきなわ旅行に来た回数,また,日本人か外国人なのかによっても「しい」や「うれしい」はちがいます。例えば,「マンゴーケーキの果肉は大きくゴロゴロ入っているのが好き!」という人もいれば「果肉が多すぎるとケーキらしくない!」という人もいます。なので,多くの人の意見を集めるアンケートを行い,「こんな商品があったらいいなぁ」と多数のお客さんが望んでいることがかれば,「新しい商品に挑戦ちょうせんしよう!」と商品開発がスタートします。
商品開発では,どんな食材や製法せいほうで作ったら良いかを,工場技術ぎじゅつスタッフと何度も試作を行います。味,かおり,食感,果肉の量やツブツブ加減かげんなど納得なっとくいくまで仲間たちと半年,1年とかえし,試みます。でも,何度やっても上手くいかない事もあって,上司に「いったい何ヶ月かけたら気がむんだ!」ってしかれられることもあったりして…。でも,自分もスタッフもあきらめなかったのは,お客様に「喜んでもらいたい!」という気持ちが強いから,食材だけでなく製法せいほうにも「本物」にこだわるのだと思います。何より作る側の思いが本物でなければ,「これを買おう!」「また買おう!」につながらないですからね。

想像そうぞうとちがう!? やってみないとからない

想像とちがう!? やってみないと分からない

どんな仕事でも同じことが言えると思うのですが,良くも悪くも予想通りにいかないことがあります。どちらかと言えば,予想通りにいく方が少ないですね。
商品のアイデアはいろいろあって,今は“塩”が流行っているから塩メインのお菓子かしにしようとか,外国人の方から,“和”を感じるお菓子かしはないのかという問い合わせから考えはじめることもあります。
おもしろいもので,新しい商品をつくるために,気の長い作業と試行錯誤さくごかえしたのに,最初に作った半年前のレシピが採用さいようされたり,偶然ぐうぜんで生まれた商品がヒット商品になったりということもあります。正直,その時は「えぇ~っ!?」と衝撃しょうげきを受けますが,長い試作の時間や自分のアイデアが無駄むだになるのかと言えば,けっしてそうではありません。経験けいけんを重ねたからこそ「こうしたらダメ」がかるし,「もっと勉強しなきゃ」と本を読んだり,くやしさを成長につなげることだってできる。つまり,やってみないとわからない事ばかりですよ。考えているだけでは何もできないし,何も理解りかいすることがない。行動を起こさなきゃ失敗はしないけど,自分の成長にはつながらないと思います。

けずぎらいの子ども時代

負けず嫌いの子ども時代

子どものころから興味きょうみのあることは,むずかしいことでもあきらめたくない子でした。けずぎらいってやつですかね。
中学校の時にロボットエンジニアにあこがれて,ラジオづくりに夢中むちゅうになりました。だれから教えてもらったわけでもなく,古いラジオを分解ぶんかいすることで仕組みを理解りかいし,再度さいど,電波を受信できるように組み立て直してみたりなど,ひとりで試行錯誤さくごしてましたね。まぁこわしてしまう事もありましたが…。また高校時代には音楽に興味きょうみを持ち,友達とエレキギターをはじめました。特にロックが大好きで夢中むちゅうになりました。聞くと楽しいギターはくとなるととてもむずかしくて,一緒いっしょにはじめた友達はやめる人もいました。でも自分よりギターの上手い人を見るとくやしくなってしまい,他人にできて自分にできないはずはない,むずかしければむずかしいほど意地になって練習しましたね。夢中むちゅうになると,その事だけで頭いっぱいになり,ランドセルをわすれて学校へ行ったり,サンダルのまま学校へ行ったりしたほど没頭ぼっとうするタイプで,正直,器用な方ではなかったですが,好きなこと,興味きょうみのあることには,「もっと上手になりたい」「もっと知りたい」とる間もしんで努力しましたよ。

目の前の事に真剣しんけんになれば「未来」につながっていく

目の前の事に真剣になれば「未来」につながっていく

わたしは子どものころ「この仕事にきたい」という明確めいかく将来しょうらいの目標を持っている子どもではありませんでした。学校を卒業して,すぐに今の会社に入ったわけでも,食品製造せいぞう管理の仕事にいたのでもありません。卒業をむかえ,どんな仕事にいたらいいか考えた時,「そうだ!自分はモノづくりが好きで人より少し得意な分野だ!」と気づき,そこから職業しょくぎょうさがしていきました。
最初の仕事は,スポーツ用品店で店舗てんぽ営業えいぎょうもしながら,ユニフォームに機械を使ってプリント加工をする仕事をしました。その後はダンボールの会社で,製箱せいはこ工程こうていでの型や接着せっちゃく面などの機械調整をする仕事をしていました。どれも初めての仕事でしたが,けずぎらいが功をそうして,現場げんばの仕事をまかされるまでになりました。やりたいことや好きなことが,仕事としてできる環境かんきょうめぐまれることは幸せだと思いますが,とりあえずあたえられた目の前の仕事を真剣しんけんに取り組むことも大切だと思います。それは会社のためとかだれかのためじゃなく,自分のため,そして自分の未来につながっていくからです。「あの人がいなくたってなんにも変わらないよね」って言われるとくやしくないですか。どうせなら「この人がいなくなるとこまる」と言われたいですよね。そう思われるくらい頑張がんばると,周りの人たちにも信用されるし,なにより自分ができることがえるので,次に何かを決めなくてはいけない場面では,以前よりやりたいことが見つけやすくなります。

初めての事でも,とりあえずやってみること

初めての事でも,とりあえずやってみること

今の会社で初めてあたえられた仕事はアイスクリーム作りでした。「食品製造せいぞう管理」という仕事だと聞いていたので,わたしはてっきり,決められた材料を決められた通りに機械に入れ,商品ができるまでの工程こうていを管理する仕事だと思っていました。それがなんと,どんな商品を作れば観光のお客さんが喜ぶのかを考えて,商品が売れるような工夫まで考えるのが仕事だと聞きビックリしました。商品企画きかくや商品開発の仕事はやったことがなかったので正直戸惑とまどいましたが,生来せいらいけずぎらいから,やってみないと分からないと引き受けました。
まずはレシピを考えるところから始め,製造せいぞうの勉強のために九州の研修けんしゅう施設しせつにも通いながら商品開発を行いました。また成分表示ひょうじといって,どんな原料が使われているかを商品にせる必要があるため,そのためには法律ほうりつの勉強もしなくてはいけないこともありました。中でもむずかしく,最も気をつかうところは「安心・安全」への配慮はいりょです。食品はお客様の口に入るものなので,安心で安全な商品でなくてはいけません。そのための工場内の衛生えいせい管理マニュアルを作ることもわたしの仕事です。味や見た目が良くても,異物いぶつ混入こんにゅうしていたり,食中毒などになったりすれば,会社の信用も落ちるし,観光にいらしたお客様の思い出までよごしてしまいます。そうならないためにも勉強の日々ひびではありますが,目の前のことをひとつひとつ解決かいけつしていきたいと思います。

続けることが力になる

続けることが力になる

食品製造せいぞう管理の仕事をはじめて20年。初めてのことばかりで戸惑とまどいもありましたが,おかげさまで,わたしたちが手掛てがけた2種類のフルーツケーキが“第26回全国菓子かし博覧会はくらんかい”で“観光ちょう長官特別賞”と“金賞”をそれぞれ受賞しました。このことは,わたしたちがねばづよく続けてきたことに対するご褒美ほうびだと思っています。「継続けいぞくは力なり」という言葉があります。興味きょうみがあることをあきらめなかったら,思いもよらないおもしろことが起こる。たとえその道のプロになれなくても,想像そうぞうした事とちがう結果になっても続けていれば必ず得るものがあると思うんです。
みなさんにも興味きょうみがある事,好きなこと,どんな事でもいいので,ひとつ見つけて挑戦ちょうせんしてほしいと思います。学業につながらなくてもいいんです。将来しょうらいや仕事につながらないように見えても大丈夫だいじょうぶですよ。その「ひとつ」を長く続けていく事は,みなさんが将来しょうらい大人になった時,必ず明るく楽しい人生につながっていきます。わたしは最近,高校の時に友だちと始めたロックバンドを復活ふっかつさせました。いわゆる親父バンドです。50代になった仲間たちとワイワイ楽しく集まっています。家族や仕事と同じくらい大切な時間で,わたしの活力のみなもとでもあります。みなさんにおすすめしたい事は完璧かんぺきでなくてもいいです,何かの一部分だけでもいいんです。学校生活の中から,友達との会話の中から興味きょうみのあることを見つけて始めてみてください。

ファンすべてを見る

(静岡県 小6)
(大阪府 小6)
(大阪府 小6)
(神奈川県 中1)
(千葉県 小6)
(福岡県 小4)
※ファン登録時の学年を表示しています

私のおすすめ本

鎌田 實
世の中の「正解」や「正論」と言われている生き方などを,少し違う位置から見てみると,もう少し楽しく楽な生き方があるという作者の考えを〇と△のキーワードで分かりやすくまとめた,とても面白い本です。
芥川龍之介
とても短い文章です。「自分だけ良ければいいとの考えが,最後は自分に跳ね返ってくる」そのような内容です。教科書で読んだのですが,天国と地獄を表現した文章も強烈で,その物語は私の考え方の一部になっていると思います。

もっと知りたいこの仕事人

取材・原稿作成:一般社団法人グッジョブおきなわプロジェクト/協力:株式会社学友館