社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年09月30日)時点のものです
造園業(ぞうえんぎょう)の仕事は「緑」に関わる仕事です。住宅(じゅうたく)やお店の周りに庭などの身近な緑空間を造(つく)る仕事や,工場に木を植えて緑化する仕事,道路沿(ぞ)いの街路樹(がいろじゅ)を植えたり維持(いじ)管理したりする仕事,公園を造(つく)る仕事などをしています。また住宅(じゅうたく)の周りの外観を引き立てる門・塀(へい)・車庫などを造(つく)るエクステリアの仕事も造園(ぞうえん)の仕事になります。最近では,都市のヒートアイランド現象(げんしょう)を抑(おさ)えるために屋上・壁面(へきめん)を緑化することや,地域(ちいき)らしさ(ふるさとの原風景)を守り活かすことも造園(ぞうえん)の仕事として重要となっています。身近な庭の手入れの仕事では,害虫がいたら防除(ぼうじょ)をし,伸(の)びすぎた枝(えだ)を切る剪定(せんてい)という作業を行います。形が整ったら枝(えだ)や葉を片付(かたづ)けて出来上がりです。夏は台風などに備(そな)えて風通しを良くするための剪定(せんてい)を行い,冬は樹木(じゅもく)のかたち(樹形(じゅけい))を作るための剪定(せんてい)をします。私(わたし)が仕事をしている西条(さいじょう)市では10月にお祭りがあるので,お祭り前の時期に庭の手入れの仕事が多くなります。造園(ぞうえん)の仕事で使用する道具はたくさんありますが,手で持つ道具では剪定(せんてい)鋏(ばさみ)・スコップ,大きな木や庭の石組などを工事する時にはパワーショベル・クレーン付トラックなどを使用します。使用する材料も,特性(とくせい)や大きさに応(おう)じて常緑樹(じょうりょくじゅ)・落葉樹(らくようじゅ)・針葉樹(しんようじゅ)・高木・中木・低木・地被(ちひ)植物・芝(しば)などがあります。庭石や灯篭(とうろう)・石積み・平板・レンガ積みなど,皆(みな)さんが庭や公園で見かける物のほとんどは造園(ぞうえん)で使用します。
造園(ぞうえん)に関わる業者さんには色々(いろいろ)な種類があり,樹木(じゅもく)を育てる生産業者,庭や公園を造(つく)る工事業者,剪定(せんてい)などの維持(いじ)管理をする業者,庭石や造園(ぞうえん)資材(しざい)を扱(あつか)う業者,公園などを設計(せっけい)する業者さんなどがあります。私(わたし)の会社では工事から維持(いじ)管理までの仕事を主にしています。庭造(にわづく)りの仕事では,まずお客様と話をして要望や予算を聞きます。そして庭を造(つく)る場所の測量(そくりょう)をして庭の図面を書きます。図面と見積もりができたらお客様と打合せをして契約(けいやく)をしてから,工事に入ります。工事の手順としては,まず庭の外周や塀(へい)や通路・車庫などを最初に造(つく)ります。それが終わると庭石や庭木を大きい物から順番に配置して植えます。最後に化粧(けしょう)砂利(じゃり)などを敷(し)いて,片付(かたづ)け掃除(そうじ)をして完成です。庭の規模(きぼ)に応(おう)じて工事にかかる日数は様々(さまざま)ですが,手掛(てが)けることが多い仕事は2週間~3週間位の仕事です。公園や道路の街路樹(がいろじゅ)などを維持(いじ)管理する仕事では,長い仕事であれば1年かけて季節毎に必要な剪定(せんてい),除草(じょそう)などの仕事をしています。現場(げんば)に応(おう)じて作業の仕方は変わりますが,だいたい1班(ぱん)3人ずつ,3班(ぱん)に分かれて作業をしています。
造園(ぞうえん)の仕事は緑を活用することで,お客様が日々(ひび)の生活を楽しんだり,癒(いや)されたりする空間を造(つく)る仕事です。環境(かんきょう)やエコが重要視(じゅうようし)される時代になった現在(げんざい),緑に関わる仕事はとても重要な仕事になりつつあります。また造園(ぞうえん)はお客様のオンリーワンを創造(そうぞう)する仕事でもあります。お客様の要望・予算・敷地(しきち)の条件(じょうけん)により,出来上がる物に同じ物はありません。それだけにお客様にどんな庭空間を提案(ていあん)できるか,どんな庭を造(つく)っていけるかが大切です。現場(げんば)では体を使いますので肉体的に大変なこともありますが,樹木(じゅもく)や石・土など自然の材料を扱(あつか)うことは楽しいです。限(かぎ)られた条件(じょうけん)の中で工夫をしてお客様に満足して頂(いただ)ける物を造(つく)ること,造(つく)る喜びをお客様と共に味わうことを第一に考えています。
例えば個人(こじん)の住宅(じゅうたく)の庭を造(つく)る仕事ですと,最初は更地(さらち)に家があるだけの状態(じょうたい)から仕事が始まります。塀(へい)や門・通路や車庫が出来上がり,最後に庭木を植えて緑が入ると景色がガラッと変わります。私(わたし)はその瞬間(しゅんかん)がとても好きです。その瞬間(しゅんかん)お客様にも大変喜んで頂(いただ)けます。また,無事に工事が終わると,その時から造(つく)った庭は一緒(いっしょ)にお客様と生活を始めます。例えば小さなお子様がいるお家では,お子様の成長と共に樹木(じゅもく)も生長していきます。年月の経過(けいか)と共に,お子様の成長と樹木(じゅもく)の生長が一つ一つ思い出として重なる場面があるでしょう。造園業(ぞうえんぎょう)に携(たずさわ)る者の一人として,流行を取り入れることも大切ですが,年月と共に美しくなる経年(けいねん)美化の庭造(にわづく)りをしなくてはいけないと肝(きも)に銘(めい)じています。ずっと大切にされる庭を造(つく)っていきたいです。
これから特に「地域(ちいき)らしさ」を大切にしなくてはいけないと感じています。今,風景が便利でオシャレなものにどんどん作り替(か)えられていくことは,その町らしさを失っているということかもしれません。私(わたし)は昔から伝えられてきた風景を大切にしたいなと思っています。そこで最近は,私(わたし)の仕事をしている西条(さいじょう)市の,西条(さいじょう)らしい風景とは何だろうとよく考えています。また,庭造(にわづく)りになるべく地域(ちいき)の素材(そざい)を使用するようことを心がけています。庭に石積みする場合は棚田(たなだ)風の石積みを,庭木では外国から入ってきた木(外来種)ではなく,地域(ちいき)に昔からある種類の木を使用するようにしています。町をよく見てみると西条(さいじょう)には誇(ほこ)りにできる風景が数多く残っています。そこからヒントをもらい,庭造(にわづく)りに繋(つな)げていきたいと思っています。他に庭造(にわづく)りで注意をしていることは,塀(へい)・通路・車庫・庭という構成(こうせい)要素(ようそ)がバラバラにならないようにすることです。周囲の景色と「なじみ」を持たせることです。例えば狭(せま)い敷地(しきち)で車庫と通路が大半を占(し)める場合,車庫や通路も庭に見せる,隣(となり)のお家の緑も借景として取り入れるなど,工夫次第で全体が調和した景色を造(つく)れます。また時間や予算がないからこれぐらいでいいだろうと考えてしまうと良いものはできません。信念やこだわりを持って,また学ぶ姿勢(しせい)を持ってベストを尽(つ)くしていきたいと思います。
私(わたし)の家は造園業(ぞうえんぎょう)をしていて,小・中学生の頃(ころ)は,造園(ぞうえん)の仕事をあまり継(つ)ぎたくありませんでした。学生の時,父親の手伝いをしていたので,大変な仕事はイヤだと思っていました。でも西条(さいじょう)高校から東京に行きたいという安易(あんい)な思いで東京農大に入学し,造園(ぞうえん)について勉強すると,造園(ぞうえん)の世界は幅(はば)が広く,また卒業後東京の有名な造園(ぞうえん)の先生の所でお世話になったのですが,作品へのこだわりの仕事ぶりを見て自分の甘(あま)い考えを痛感(つうかん)しました。お世話になっていた所は造園(ぞうえん)の設計(せっけい)事務(じむ)所だったのですが,主に公園や民間の大規模(だいきぼ)庭園などの設計(せっけい)監理(かんり)をしていました。先生は独創(どくそう)的な石組,造園(ぞうえん)手法を日本で先駆(さきが)けて手掛(てが)けられていた方でしたのですごく厳(きび)しかったです。夜遅(おそ)くまで図面を書いて,翌朝(よくあさ)役所に行き打合せするという毎日でした。先生は図面1枚(まい)でも怠(おこた)るな,書くことは造(つく)っていることと同じなんだぞとよく言っていました。確(たし)かにその図面を基(もと)に工事業者の方が仕事をするのですから当たり前なのですが,とにかくこだわりがあり,個性(こせい)を大切にされている先生でした。それから西条(さいじょう)に帰って家業を継(つ)いだのですが,まだまだ勉強不足,経験(けいけん)不足の未熟者(みじゅくもの)だと感じています。良い物を造(つく)れるよう熱意を持ってがんばりたいと思います。
小学6年生まで市内で一番背(せ)が高く,ミニバスケットをしていました。田んぼで友達と遊んだり,木や石を使って基地(きち)を作ったりして自然の中で遊んでいました。木や花など緑には囲まれていましたね。近所のおじさんやおばさんの話を聞くのが好きでした。歴史マンガも好きで,よく読んでいました。小さい頃(ころ)から,人前に出ることは苦手でした。今でも人前に出ることは緊張(きんちょう)しますが,苦手でも精一杯(せいいっぱい)一生懸命(いっしょうけんめい)さが伝われば良いかなと思っています。今考えると小さい時に遊びながら造園(ぞうえん)に使用する材料と自然に触(ふ)れ合っていたかなとも思います。
皆(みな)さんには「環境(かんきょう)」を大事にする仕事について欲(ほ)しいです。私(わたし)がしている造園(ぞうえん)の仕事では「環境(かんきょう)」について考えることがよくあります。また,お客様と一緒(いっしょ)に喜びを感じられる仕事をして下さい。作る喜びがありますし,個性(こせい)を出すことができる仕事は楽しいと思います。大人になるまでにとにかく毎日の生活の中で色々(いろいろ)なものに興味(きょうみ)を持ってください。故郷(ふるさと)に山や川があれば,そこで思いっきり遊んでください。その時は分からなくても,思い出と共に故郷(ふるさと)のありがたさを後から実感できますよ。また試しに近くでどんぐりを拾って小さい苗(なえ)を育てて,お家や学校などに植えてみて下さい。故郷(ふるさと)の自然には,私(わたし)たちの興味(きょうみ)をひきだす「種」がたくさんあります。