社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2006年10月27日)時点のものです
薬剤師(やくざいし)は国家資格(しかく)を持った薬の専門家(せんもんか)で,街の薬屋さん,病院内の薬剤(やくざい)部,製薬(せいやく)会社など,いろいろなところで活躍(かつやく)しています。私(わたし)は病院内の薬剤(やくざい)科で働いていて,外来の患者(かんじゃ)さんや,入院している患者(かんじゃ)さんに出す薬を調合したり(調剤(ちょうざい)),その薬の効果(こうか)や副作用,飲み方について患者(かんじゃ)さんに説明(服薬指導(しどう))をしています。私(わたし)たちの病院には,毎日300人くらいの患者(かんじゃ)さんが来られ,また,入院している患者(かんじゃ)さんが200人ほどおられます。私(わたし)たちの病院では14人の薬剤師(やくざいし)で薬に関わる仕事を受け持っています。
ケガや病気の患者(かんじゃ)さんにどのような薬が必要かを医師(いし)が判断(はんだん)して,処方箋(しょほうせん)という書類を書きます。私(わたし)たちの病院では電子カルテと言って,必要な情報(じょうほう)をパソコンで管理しているので,実際(じっさい)には医師(いし)は書類を書くのではなく,パソコンに入力して処方箋(しょほうせん)を作成します。そうやって医師(いし)が作成した処方箋(しょほうせん)は,すぐに私(わたし)たち薬剤師(やくざいし)がいる薬剤(やくざい)部のプリンターから印刷されてきます。処方箋(しょほうせん)には,薬の種類と量が書いてあるので,素早(すばや)く正確(せいかく)に薬を用意すれば終わりのように思われるかもしれませんが,実はそれだけではいけないんです。普段(ふだん)よりも薬の量が多いなど,処方(しょほう)されている内容(ないよう)に少しでもおかしいと感じる部分があれば,「疑義(ぎぎ)照会」といって,処方箋(しょほうせん)を書いた医師(いし)に確認(かくにん)をして,「確認(かくにん)済(ずみ)」という印鑑(いんかん)を押(お)すまで調合しない,という手順をとります。また,患者(かんじゃ)さんに渡(わた)す薬が出来上がった後にも,調剤(ちょうざい)した薬剤師(やくざいし)とは別の薬剤師(やくざいし)が,処方箋(しょほうせん)の通りに薬が用意できているかを確(たし)かめます。こうやって絶対(ぜったい)に間違(まちが)いが起こらないように何回もチェックをしてから皆(みな)さんの手元に薬は届(とど)いているんですよ。
普段(ふだん)の仕事の中では,医師(いし)が電子カルテを入力する際(さい)に,間違(まちが)ってクリックしたり,年齢(ねんれい)や体重に合っていない薬を処方(しょほう)してしまう可能(かのう)性(せい)もゼロではないので十分に気をつけて見ています。でも何度も確認(かくにん)するだけではなく,そもそも間違(まちが)ってしまうことを防(ふせ)ぐ仕組みも用意しているんですよ。例えば,薬の分量を間違(まちが)えないように,同じ薬で一粒(ひとつぶ)に含(ふく)まれる薬の量が異(こと)なるものは病院内に置かないようにしています。また,「アマリール」「アルマール」というような名前が似(に)ている薬も使わないようにしています。同じ効果(こうか)のある薬でも,作っている会社が違(ちが)えば薬の名前は違(ちが)うので,似(に)ている名前の場合は別の会社の作っている薬を用意するようにしています。
皆(みな)さんも,薬を受け取った時に,「こんな薬が欲(ほ)しかったのに」と思うことがあるかもしれません。私(わたし)たち薬剤(やくざい)部でも患者(かんじゃ)さんから「こんな薬を出して欲(ほ)しい」と頼(たの)まれることがあります。でも実は,私(わたし)たち薬剤師(やくざいし)は患者(かんじゃ)さんに出す薬を決めることはできません。適切(てきせつ)な薬やその分量を決めるのは医師(いし)の仕事で,薬剤師(やくざいし)は処方(しょほう)された薬の内容(ないよう)に問題がないかどうかを確認(かくにん)して,調剤(ちょうざい)し,説明をしてから薬を渡(わた)すことが役割(やくわり)なのです。私(わたし)たち薬剤師(やくざいし)ではそういった要望には応(こた)えることができないので,すぐに担当(たんとう)の医師(いし)に話を取り次ぐようにしています。
薬を飲むのって大変ですよね。私(わたし)たちは患者(かんじゃ)さんが薬を飲む時の苦労を少しでも減(へ)らせるように必要に応(おう)じていろいろな工夫をしています。たくさんの種類の薬を飲む患者(かんじゃ)さんには,どの薬をいつ飲むべきかが分かりやすいように,朝・昼・晩(ばん)それぞれの袋(ふくろ)に分けて薬を入れておいたり,錠剤(じょうざい)を飲むことが難(むずか)しい患者(かんじゃ)さんには,専用(せんよう)の機械で錠剤(じょうざい)を粉末にしてからお渡(わた)ししたりしています。また,薬について,いろいろと疑問(ぎもん)や不安を持っている患者(かんじゃ)さんもおられるので,入院している患者(かんじゃ)さんのところに行って薬の飲み方をお伝えする時には,少しでも患者(かんじゃ)さんの疑問(ぎもん)や不安を解消(かいしょう)できるような話しができるように心がけています。患者(かんじゃ)さんに早く良くなってもらうためにも,患者(かんじゃ)さんの気持ちを考えながら行動することを大切にしています。
この仕事はいつも気が抜(ぬ)けませんが,「人の命に関わる仕事をしている」という責任感(せきにんかん)を持って働けるのが,一番のやりがいのように思います。薬は私(わたし)たちにとってありがたいものでもありますが,危険(きけん)な面も持っています。私(わたし)たち薬剤師(やくざいし)は,患者(かんじゃ)さんが薬をうまく利用して,回復(かいふく)してもらうために働いているんです。入院している患者(かんじゃ)さんへの服薬指導(しどう)に行ったときに,少しでも症状(しょうじょう)が回復(かいふく)していたり,不安な気持ちが解消(かいしょう)されて,患者(かんじゃ)さんから「ありがとう」って言ってもらったときは,本当に嬉(うれ)しい瞬間(しゅんかん)です。
私(わたし)の父が,元々(もともと)薬局で働いていたんです。朝から晩(ばん)まで忙(いそが)しそうに働いているけど,そんな働いている父の姿(すがた)を尊敬(そんけい)していました。働いている父はとてもいい顔をしていたんです!父の仕事に小さい頃(ころ)から憧(あこが)れていましたが,改めて高校生で進路を考えたとき,私(わたし)も同じ仕事がしたいんだと再(さい)認識(にんしき)しました。そこで薬科大学に入学し,国家試験を受けて薬剤師(やくざいし)の免許(めんきょ)を取りました。いろんな選択肢(せんたくし)があるので,どこで働くかを悩(なや)みましたが,人と知り合ったり話すのが好きだったので,多くの患者(かんじゃ)さんと関わりながら働くことのできる病院での仕事を選びました。毎日忙(いそが)しいですがとても充実(じゅうじつ)しています。
子ども時代というのは,二度と戻(もど)ることのできない素敵(すてき)な時間です。私(わたし)も子どもの頃(ころ)は,ゴムとびや探偵(たんてい)ごっこをして,大勢(おおぜい)の友達と外で遊んでいました。また戻(もど)りたい!と今でも思うくらいの楽しい時間でした(笑)。いつも未来に希望を持ちながら過(す)ごせば,きっと楽しい毎日になります。だから,いっぱい夢(ゆめ)を持って欲(ほ)しいです。時間と共に夢(ゆめ)が変わってもいいんです。毎日を楽しまないともったいないですよ!