がんは大変怖（こわ） い病気ですが，早く発見して治療（ちりょう） すれば治る可能（かのう） 性（せい） が高くなるので，PETという検査（けんさ） 機器を用いる検査（けんさ） を含（ふく） むPET健診（けんしん） を受ける人が増（ふ） えています。私（わたし） たちの病院では，PET検査（けんさ） をPETセンターというところで行うのですが，健診（けんしん） の予約を受け付けたり，センターに来られた方に案内をするのが私（わたし） の仕事です。まず，健診（けんしん） を希望する方から申込（もうしこ） みがあると，その申込（もうしこ） みの内容（ないよう） やその方の年齢（ねんれい） などの情報（じょうほう） を電子カルテという患者（かんじゃ） さんのデータを管理しているコンピュータ上の表に入力します。健診（けんしん） の場合は別の検査（けんさ） も同時に受けるコースになっているので，それぞれの検査（けんさ） を行う診療科（しんりょうか） がどの時間に空いているのかを調べて，予約を取ります。そして，健診（けんしん） 当日に受付に来た方に，健診（けんしん） の手順や内容（ないよう） の説明を行い，最初の検査（けんさ） の部屋まで案内します。

PET健診（けんしん） はコースによっては何種類もの検査（けんさ） が必要なので，健診（けんしん） に来られた人はいろんな診療科（しんりょうか） を回ることになります。それぞれの検査（けんさ） は，健診（けんしん） に来られた人だけではなくて，入院されている患者（かんじゃ） さんや，外来で来られている患者（かんじゃ） さんも利用されます。多くの人が同じ検査（けんさ） 機器や検査室（けんさしつ） を利用するので，健診（けんしん） に来た方がどのような順番で検査（けんさ） を受けるかは，相当うまくスケジュールを組まなければなりません。また健診（けんしん） に来る方は，友達同士などで来られる場合も多く，「友人と同じ時間に健診（けんしん） が終わるようにしてほしい」というお願いをされることもあります。患者（かんじゃ） さんが快適（かいてき） に健診（けんしん） を受けられるように，いろいろなことを考えて毎日スケジュール表とにらめっこをしながら，最適（さいてき） な組み合わせを考えています。

従来（じゅうらい） の検査（けんさ） ではがんの大きさが１０～１５mmくらいになるまで発見できなかったのですが，PET検査（けんさ） は８～１０mmぐらいの大きさでも発見できるすごい検査（けんさ） なんですよ。でもPET検査（けんさ） は，他のいくつもの検査（けんさ） と合わせて行う場合が多いので，時間がかかります。早いコースでも３時間ほどかかりますし，２日間に分けて行うものもあります。このようにPET健診（けんしん） は長時間かかるものなのですが，その途中（とちゅう） で何かを読んだり，話をしたりするだけで，結果が変わってしまうという難（むずか） しさがあります。というのもPETというのは，がん細胞（さいぼう） のところに特別な薬が集まることで発見できる仕組みなのですが，筋肉（きんにく） を動かしてしまうと，その筋肉（きんにく） にその薬が集まってしまうんですね。そのため検査（けんさ） 中に体を動かすことがないように，健診（けんしん） の説明などは前もって全て終わらせておかなければなりません。健診（けんしん） というのはただでさえ不安なものである上に，PETというのはまだ馴染（なじ） みの薄（うす） い検査（けんさ） でもあるので，安心して健診（けんしん） を受けてもらうために，詳（くわ） しく説明することも大切な仕事のひとつです。

皆（みな） さんも病気というのは不安ですよね。病院に来ると，いろんなことを聞きたくなると思います。私（わたし） たちも，健診（けんしん） の案内をしているときに，いろいろと質問（しつもん） されることがあります。でも，受付の仕事を担当（たんとう） している私（わたし） たちは，医療（いりょう） について全てを知っているわけではありません。あいまいな知識（ちしき） で，患者（かんじゃ） さんに間違（まちが） ったことを伝えてしまっては大変なので，受付ではわからない質問（しつもん） をされたときには，PETセンターで働く放射線（ほうしゃせん） 技師（ぎし） が代わって話をします。受付では健診（けんしん） の全般（ぜんぱん） 的な案内を行い，放射線（ほうしゃせん） 技師（ぎし） は健診（けんしん） の技術（ぎじゅつ） 的な部分に責任（せきにん） を持ち，そして医師（いし） は診断（しんだん） を行う，というようにそれぞれがそれぞれの役割（やくわり） を持って仕事をしているんですよ。

私（わたし） たちの病院のPETセンターは，2006年４月にできたばかりの新しいセンターです。以前，医療（いりょう） 事務（じむ） の勉強をしていたこともあってか「このセンターで仕事をしないか」と声をかけてもらって，私（わたし） はこのセンターの最初の受付として働くことになりました。新しいセンターであったため，どのように予約を受け付けて，いつどのように検査（けんさ） を行う放射線（ほうしゃせん） 科に連絡（れんらく） をするのかなど，仕事の流れの全てを決めることから仕事は始まりました。自分も他の人も全員が働きやすくするにはどうしたら良いのか，ということを放射線（ほうしゃせん） 技師（ぎし） さんと話し合いながら一から考えていったんです。でもその甲斐（かい） があって，最近ではとてもスムーズに仕事が行えるようになりました。

PET健診（けんしん） というのは，がんの発見率（りつ） を格段（かくだん） に上げる画期的な検査（けんさ） ですが，通常（つうじょう） の健康診断（しんだん） と同様に保険（ほけん） の適用（てきよう） 外なので，安いコースでも１０万円近くしますし，高いコースでは２０万円を越（こ） えるものもあります。それだけのお金をかけて，また，忙（いそが） しい時間の合間をぬって来られているので，なんとかして様々（さまざま） な要望に応（こた） えたいと思っています。また，不安や緊張（きんちょう） を和らげるためにも，笑顔で話をするということも大切にしています。健診（けんしん） で一番最初に訪（おとず） れる受付という場所で，気持ちよく健診（けんしん） を受けられる状態（じょうたい） になってもらうのが私（わたし） たちの仕事です。「また来年も来るね」と笑顔で言ってもらえたときは，本当に嬉（うれ） しいんですよ。

子どもの頃（ころ） の私（わたし） は，とても活発に外で遊んでいた気がします。小学校の頃（ころ） は男子と一緒（いっしょ） にドッジボールをしていたし，中学校ではテニスをしていました。体育の授業（じゅぎょう） も大好きでしたね。細かいものが嫌（きら） いで大雑把（おおざっぱ） な性格（せいかく） でした。でも，今はとても細かいスケジュールを管理しているのですから・・・人生どうなるかわからないものですね（笑）。子どもの頃（ころ） に苦手だったことを仕事として行っていることも考えると，子どもの頃（ころ） は本当にいろんなものを見ておいたほうがいいと思いますね。今の皆（みな） さんは，いろんな情報（じょうほう） を簡単（かんたん） に手に入れることができる環境（かんきょう） にあります。いろんなものに興味（きょうみ） を持って，楽しみながら生活して欲（ほ） しいです。