社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年12月08日)時点のものです
私(わたし)の仕事はお客さんの前で歌を歌うことです。小・中学校,病院,養護(ようご)施設(しせつ),老人施設(しせつ),パーティー,公演(こうえん)会など色々(いろいろ)な行事で歌っています。春と秋に行事や公演(こうえん)が多くあります。学校や施設(しせつ)から依頼(いらい)されることが多く,趣旨(しゅし)や時間が合えば参加させて頂(いただ)いています。「心に響(ひび)け日本の歌」と題して,愛媛(えひめ)県内の小学校もよく訪問(ほうもん)しています。声楽指導(しどう)や合唱の指導(しどう)に行くこともあります。依頼(いらい)があればいつでも歌を歌えるように,毎週レッスンを受けています。また,子ども達にピアノも教えているんですよ。その他に,オペラを公演(こうえん)する「四国二期会」という団体(だんたい)に所属(しょぞく)して,岡山(おかやま),松山,西条(さいじょう)など中国・四国で活動しています。オペラは自分を成長させるために大事にしています。例えば,オペラに合わせて語学の勉強もしているんですよ。
オペラ公演(こうえん)がある場合,半年位前に役を頂(いただ)き,音取りや役のキャラクターについて調べ,背景(はいけい)にある歴史の勉強や,言葉が違(ちが)う時は語学の勉強をします。そして,楽譜(がくふ)を読むこと,歌詞(かし)を読むこと,歌詞(かし)の意味を調べること,演技(えんぎ)や動きの確認(かくにん)など様々(さまざま)な準備(じゅんび)をします。楽譜(がくふ)の中にある感情(かんじょう)や状況(じょうきょう)などを読み取らなければいけません。公演(こうえん)の3ヶ月前からは演出家(えんしゅつか)や指揮者(しきしゃ)の指導(しどう)を受けて練習します。2日位前からは衣装(いしょう)を着て,本番と同じように通し稽古(けいこ)をします。稽古(けいこ)をしながら毎日のように舞台(ぶたい)に立つこともあれば,1ヶ月公演(こうえん)がない時もあり,仕事のスケジュールは変動的です。その中でも,毎日2時間くらいの練習を続けることが目標です。土日は稽古(けいこ)や公演(こうえん)の本番が多いです。学校や施設(しせつ)で歌う時は,自分で歌について説明してから歌います。自分で説明するのも慣(な)れるまでは大変なので,勉強することは大切だなぁと思います。
声楽家にとって,体調管理はとても大切です。有難(ありがた)いことに,私(わたし)は今まで体調不良で公演(こうえん)を欠席したことはありません。でも,油断(ゆだん)すると声の調子が悪くなったり,風邪(かぜ)を引いたりするので,外出する時はマスクをしたり,人ごみへの外出はなるべく避(さ)けたり,外出後の手洗(てあら)いやうがいなどにはとても気をつけています。また,舞台(ぶたい)に立つ時は,お客さんからの見え方を意識(いしき)して,立ち方や歩く姿勢(しせい)などを考えています。ホールによって,天井(てんじょう)の高さやお客さんとの距離(きょり),声の響(ひび)き方が変わってきます。お客さんに心地よく聞いて頂(いただ)けるようにバランスを考えて歌っています。人それぞれ感じ方が違(ちが)うので,きちんと自分の意志(いし)が伝わるように,いつも伝え方を考えながら練習に取り組んでいます。
施設(しせつ)や学校を訪問(ほうもん)して歌う時は一人ですが,オペラ公演(こうえん)などはたくさんのスタッフと共演者(きょうえんしゃ)がいます。彼(かれ)らと一緒(いっしょ)に一つの舞台(ぶたい)を作っていくことはとてもやりがいを感じます。また,温かい拍手(はくしゅ)を頂(いただ)いた時やお客さんの笑顔が見えた時は,本当にやっていて良かったと思う瞬間(しゅんかん)です。自分の好きなことができて,聞いてくださる方もいることは幸せだと思います。厳(きび)しいことを言われることもありますが,次に繋(つな)げていけるように練習していきたいと思います。
仕事をする上では「言葉」を大事にしています。私(わたし)は「嬉(うれ)しい」という思いを伝えているつもりでも,中には「悲しい」という風に伝わっている人もいます。難(むずか)しいですね。たくさんのお客さんがいるので,全ての人に合わせることはできませんが,一人でも多くの方が満足してくださる時間を一緒(いっしょ)に過(す)ごせたらいいなと思います。また,日本語がしっかりと伝わるように,言葉の終わりまで発音するようにしています。オペラは外国語が多いので,正確(せいかく)な発音をして,喜怒(きど)哀楽(あいらく)がお客さんに分かるように表現(ひょうげん)できるように心がけています。基本(きほん)的に目線は上に向け,遠くの方を見るようにして,端(はし)から端(はし),前から後ろ,全てのお客さんに音楽を届(とど)けられるようにしています。舞台(ぶたい)の上では,ハプニングが起きても臨機応変(りんきおうへん)に対応(たいおう)することが必要です。
小学校の時に,音楽の先生と出会ったことがこの仕事をする大きなきっかけになりました。歌が好きで大学では声楽科に入ったので,自然とクラシック音楽をたくさん聞いていました。音楽の基本(きほん)である,歌を歌うという環境(かんきょう)で音楽を学ぶことができたことはとても有難(ありがた)いことです。大学で勉強はしましたが,大学を卒業してからの方が教えられることはたくさんありました。小さい頃(ころ)からずっと「声」を使う仕事に就(つ)きたいと思っていましたが,大人になってもその夢(ゆめ)が変わることはありませんでしたね。
親からは,私(わたし)が2階の窓(まど)を開けて,大きな声で外に向かって歌っていたと聞かされました。小さい頃(ころ)の写真は歌っている写真ばかりです。運動も好きだったし,負けず嫌(ぎら)いな所もあり,いつも友達と一緒(いっしょ)に遊んでいる活発で明るい子どもでした。中学生の時には,ギターを弾(ひ)きながら歌っていました。宝塚(たからづか)歌劇団(かげきだん)が好きで,踊(おど)ったり,歌ったり,一人芝居(しばい)をよくしていました(笑)。今の私(わたし)の原点かもしれません。本を読むことも好きで童話をたくさん読みました。たくさん好きなことがあったんですよ。
色々(いろいろ)な人に挨拶(あいさつ)などのコミュニケーションを積極的にして,人との繋(つな)がりを大切にして欲(ほ)しいです。自分一人ではできないことがあります。いつも支(ささ)えてもらっていることを忘(わす)れないで下さい。助けてくれる人がいるし,応援(おうえん)してくれる人もいます。そして,喜んでくれる人もいるし,怒(おこ)ってくれる人もいます。これは,すごく幸せなことですよね。また,自分の言いたいことを分かってもらえるように伝えられる人になって下さい。失敗しながら,反省して次に繋(つな)げてください。練習や稽古(けいこ)は地味でコツコツしなければいけません。でもこの積み重ねが夢(ゆめ)を叶(かな)えてくれるということを覚えておいて下さい。