社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年06月18日)時点のものです
私(わたし)はリリエンベルグという洋菓子店(ようがしてん)で働いています。リリエンベルグには販売店(はんばいてん)と喫茶店(きっさてん)があり,約50人のスタッフがケーキや焼き菓子(がし)やコンフィ(ジャム)の製造(せいぞう),商品の包装(ほうそう),注文を受けた商品の発送,店頭での販売(はんばい)などの仕事をしています。私(わたし)を含(ふく)め,ケーキや焼き菓子(がし)などを製造(せいぞう)する約25人のパティシエは,ケーキやゼリーなど生菓子(なまがし)の仕込(しこ)みをする部署(ぶしょ),生菓子(なまがし)の生地にデコレーションをする部署(ぶしょ),クッキーなど焼き菓子(がし)を作る部署(ぶしょ)に分かれて働いていて,私(わたし)は現在(げんざい)デコレーションを担当(たんとう)する部署(ぶしょ)で仕事をしています。
朝はとても早く,毎日7時頃(じごろ)からケーキを作り始めます。焼きあがったばかりの生地を使った土台の上にフルーツを盛(も)りつけて切り分け,出来立てのケーキを店頭のショーウィンドウに並(なら)べて10時にお店を開店します。開店してからは,店頭のケーキの売れ行きを見て,少なくなった商品をこまめに製造(せいぞう)して補充(ほじゅう)します。他にも,お店で販売(はんばい)しているジャムはあまり作りおきをしない為(ため),売れて残りが少なくなったジャムを作る仕事もあります。また,フルーツの皮をむいたり果汁(かじゅう)を絞(しぼ)ったりして,翌日(よくじつ)のケーキやゼリー作りの下準備(したじゅんび)をします。お店で使うフルーツの量はとても多くて,例えば桃(もも)のケーキが一番売れる夏の週末には,1日で150個(こ)くらいの桃(もも)の皮をむいているんですよ。その後,夕方には翌日(よくじつ)分のケーキの仕込(しこ)みをし,18時に閉店(へいてん),厨房(ちゅうぼう)の掃除(そうじ)をして1日の仕事が終わります。
私(わたし)は現在(げんざい)担当(たんとう)しているデコレーションの部署(ぶしょ)以外にも,生菓子(なまがし)の仕込(しこ)みや焼き菓子(がし)作りといった製造(せいぞう)の仕事を一通り経験(けいけん)しているので,ケーキを作るだけでなく,同じ部署(ぶしょ)のパティシエをまとめる仕事も任(まか)されています。例えば,季節や日によって売れ筋(すじ)の商品が異(こと)なるので,特定の商品を作る作業が普段(ふだん)よりも多くなることがあります。そこで,色々(いろいろ)な仕込(しこ)みの作業をしているパティシエに気を配り,人手が不足している作業があれば,余裕(よゆう)のある者が手伝うように指示(しじ)します。また,デコレーションの部署(ぶしょ)のパティシエをまとめるだけではなく,他の部署(ぶしょ)とケーキの種類や個数(こすう),作るタイミングを合わせる必要があるので,各部署(ぶしょ)と連絡(れんらく)も取りながら仕事を進めています。
誕生日(たんじょうび)や記念日のお祝い用に,お祝いをされる方の好きな物や記念の内容(ないよう)に合わせた特製(とくせい)ケーキの注文を頂(いただ)くことがあります。以前,あるお客様からの依頼(いらい)でミシンの形のケーキを作ったことがあります。お客様からお話をお伺(うかが)いして,その後いろいろ考えて,お祝いをされる方が使っていらっしゃるミシンの形をしたケーキに,アクセントをつけようと思いボビン糸の形のデコレーションを加えてミシンの雰囲気(ふんいき)を出しました。お客様がケーキを受け取りに来られた時に「わぁ!」と笑顔を見せてくださる瞬間(しゅんかん)が,私(わたし)にとっても嬉(うれ)しいひと時なんですよ。
仕事をする時に大切にしていることは,どんな時も楽しい気持ちを忘(わす)れないようにすることです。忙(いそが)しくなると,「早くこの仕事を終わらせなければ」と焦(あせ)ってしまうこともありますし,疲(つか)れて気持ちが滅入(めい)ることもあります。けれど,お客様に心地よく美味しいお菓子(かし)を食べて頂(いただ)くためには,まず作り手である自分自身が楽しくケーキを作らなければなりません。「お客様に喜んで頂(いただ)けるように,美味しいケーキを作ろう!」と,気持ちを込(こ)めて1つ1つのケーキを作り,また一緒(いっしょ)に働いている皆(みな)が同じ気持ちになれるように,他のパティシエと明るく言葉を交わすように心がけています。
私(わたし)は人に喜んでもらうことが好きで,中学生の頃(ころ)から色々(いろいろ)な人にお菓子(かし)を作って食べてもらっていました。この頃(ころ)からなんとなく「パティシエになりたい」と思っていたのですが,大学では全く分野の異(こと)なる国際(こくさい)分野の勉強をしていました。でも,やはりパティシエの仕事が気になって,このお店で2か月ほどアルバイトをしたんです。その時に,ケーキを買って笑顔で帰られるお客様を見て「やっぱりパティシエの仕事がしたい」という思いが強くなりました。そこで大学を出た後,パティシエの専門(せんもん)学校に通う学費を稼(かせ)ぐために,もう一度このお店でアルバイトを始めたのです。そして,オーナーや良き先輩(せんぱい)方に巡(めぐ)り合えたことで,「ここで働きながら学ぼう」と決断(けつだん)し,それ以来ずっとこのお店で働いています。
子どもの頃(ころ)は好奇心(こうきしん)旺盛(おうせい)で,チェロや習字も習っていましたし,勉強では特に歴史が好きで,アンネ・フランクの『アンネの日記』や広島の原爆(げんばく)など戦争に興味(きょうみ)を持ち,本を読んだり戦争中に満州で生きた祖母(そぼ)の話を聞いたりしました。週末にはオーケストラでチェロを弾(ひ)くことに打ち込(こ)んでいて,その頃(ころ)は小学校の音楽の先生になりたいと思っていたんですよ。
皆(みな)さんには,何か興味(きょうみ)のあることを見つけて,一生懸命(いっしょうけんめい)取り組んでほしいと思います。直接(ちょくせつ)将来(しょうらい)の仕事につながらなくても,何か一生懸命(いっしょうけんめい)取り組んで目標を達成できたということ自体が,「やればできるんだ」という自信になると思います。また,今はパソコンやゲームがあるので一人で遊ぶこともできますが,友達と遊んだり話したりして友情(ゆうじょう)を深めてほしいと思います。良い友達を持つと,自分が辛(つら)い時や苦しい時に「あの人が頑張(がんば)っているのだから私(わたし)も頑張(がんば)ろう」という風に,切磋(せっさ)琢磨(たくま)する仲になることができますよ。