社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年07月23日)時点のものです
私(わたし)が勤(つと)める川崎(かわさき)市消防(しょうぼう)局の臨港(りんこう)消防署(しょうぼうしょ)では約180人の職員(しょくいん)が働いています。火災(かさい)の予防(よぼう)などを担当(たんとう)する職員(しょくいん)は,平日の8時30分から17時まで仕事をして,その他の火災(かさい)の消火を行う「消防(しょうぼう)」,ケガをした人や急病人に応急(おうきゅう)手当をし,病院まで運ぶ「救急」,火災(かさい)や事故(じこ)などの現場(げんば)から人を助ける「救助」,を担当(たんとう)する職員(しょくいん)は24時間交代で仕事をしています。私(わたし)が所属(しょぞく)する特別高度救助隊は,火災(かさい)や事故(じこ)の現場(げんば)での救助活動に加えて,水難(すいなん)事故(じこ)や航空機事故(じこ)など市内で起きた大規模(だいきぼ)な災害(さいがい)や特殊(とくしゅ)な災害(さいがい)にも出場して対応(たいおう)する特別なチームで,市内8つの消防署(しょうぼうしょ)にいる救助隊員の中から選抜(せんばつ)された32人が所属(しょぞく)しているんですよ。
仕事の日は朝5時30分ごろに起き,8時には消防署(しょうぼうしょ)に到着(とうちゃく)します。消防署(しょうぼうしょ)に到着(とうちゃく)したら,当日担当(たんとう)する消防(しょうぼう)車両と人員の確認(かくにん)をします。私(わたし)は救助工作車か特殊(とくしゅ)災害(さいがい)対策(たいさく)車に乗ることが多いのですが,その日の状況(じょうきょう)により,担当(たんとう)する消防(しょうぼう)車両が変更(へんこう)になることもありますので,改めて確認(かくにん)をします。9時になると消防署(しょうぼうしょ)の前に集合して,24時間勤務(きんむ)を終えた隊員と交代し,車両の点検(てんけん)や無線の試験などをしたあと,今日の予定や打合せなどをします。それからすぐ訓練をはじめ,お昼を食べ,午後も訓練を行います。救助の際(さい)に使用する装備(そうび)や資機材(しきざい)は100種類以上もあるので,災害(さいがい)の状況(じょうきょう)に応(おう)じて早く正確(せいかく)に使えるようにするために訓練をしているんですよ。他にも,体力作りのためのトレーニングや,訓練の計画を立てたり,以前に出場した記録を書類としてまとめる仕事もあります。18時30分ごろに交代で夕食を取り,夜は日中の訓練でうまくいかなったことをもう一度練習したり,みんなで救助技術(ぎじゅつ)の研究をしたりしています。そして,実際(じっさい)に寝(ね)ていられることはあまりないのですが,23時ごろから翌日(よくじつ)の6時まで仮眠(かみん)できる時間があり交代で休み,朝は車両の点検(てんけん)整備(せいび)などをして9時に次の日の当番の隊員と交代します。
訓練や仮眠(かみん)をしている時でも,川崎(かわさき)市の消防(しょうぼう)指令センターに火災(かさい)などの119番通報(つうほう)があると,消防署(しょうぼうしょ)に出場の指令が出て,すぐさま担当(たんとう)する消防(しょうぼう)車両に乗り火災(かさい)や災害(さいがい)の現場(げんば)に向かいます。現場(げんば)へ移動(いどう)しながら車の中で得られた情報(じょうほう)に応(おう)じて装備(そうび)を整え,救助方法を考えます。現場(げんば)に着いたら,別の事故(じこ)が起きてしまう危険(きけん)はないか周囲の安全を確(たし)かめてから,緊張(きんちょう)しつつも冷静に救助活動を開始します。例えば,交通事故(じこ)で人が車に挟(はさ)まれて動けない時には,救助資機材(しきざい)を使って車を切断(せつだん)したり,狭(せま)い箇所(かしょ)を広げたりします。救助される人は大変不安な気持ちですので,一人が声を掛(か)け励(はげ)ましながら,他の隊員が救助作業を行います。無事に救出できたら救急車で病院へ搬送(はんそう)します。川崎(かわさき)市では高速道路や工場での事故(じこ)などもあり,1日の当番の間に3~4回出場することもあるんですよ。
救助隊員として高度で専門(せんもん)的な技術(ぎじゅつ)や知識(ちしき)を身につけることは必要です。そして,それだけではなくて「決してあきらめない」という強い精神力(せいしんりょく)も必要になります。救助現場(げんば)で一人でも「もうだめだ」と思ってしまうと,救助隊の全員に影響(えいきょう)が出てしまい,救えるはずの命も助からなくなってしまいます。ですから,日々(ひび)の訓練の時から,どんなに厳(きび)しい状況(じょうきょう)の時にも「どうしたらいいか」を考え続け,あきらめずに自分たちの限界(げんかい)を乗り越(こ)えていくトレーニングをしています。
例えば,仕事中に人が機械に挟(はさ)まれる事故(じこ)が起きると,どうすれば早く助けることができるのか,またどうやって体に1番ダメージを少なくできるかを考えながら,挟(はさ)まれている人を励(はげ)まし,周囲にいる一緒(いっしょ)に仕事をしていた仲間の人たちもパニックにならないように状況(じょうきょう)を説明しながら,一刻(いっこく)も早く助けるよう救助活動を行います。ですから無事に救い出せることができ,ご本人やご家族・同僚(どうりょう)の方から「ありがとうございました」と声を掛(か)けて頂(いただ)いた時は,本当に助けることができて良かった,この仕事をやっていて良かったと感じます。
高校生の頃(ころ),「将来(しょうらい)は人の役に立つ仕事がしたい」と思っていたんです。その時,火災(かさい)現場(げんば)で活躍(かつやく)する消防士(しょうぼうし)の方を見かけたことがきっかけで,人の命や財産(ざいさん)を守ることができる救助隊の仕事に憧(あこが)れるようになりました。高校を卒業した後,川崎(かわさき)市の消防士(しょうぼうし)の試験を受けて合格(ごうかく)し,救助隊員として働き始めました。そして,非番(ひばん)の日や当番の日の夜などに,特殊(とくしゅ)な災害(さいがい)や事故(じこ)に対応(たいおう)するための勉強や訓練を重ねて,試験を受け,特別高度救助隊の隊員になることができたんですよ。
子どもの頃(ころ)は自然の中で遊ぶことが好きで,山でカブトムシを採(と)ったり,川で魚を捕(つか)まえたりしていました。魚は,川の中の石の下をねらって,手づかみで捕(つか)まえていたんですよ。それから,友達との草野球などに明け暮(く)れていて,その頃(ころ)はプロ野球選手になりたいと思っていました。
あきらめるよりも,続ける方法を考えてほしい。色々(いろいろ)なことにチャレンジすればもちろん失敗することもあります。でも,なぜ失敗したのかを考えることで,初めて学ぶことができるのです。私達(わたしたち),特別高度救助隊の訓練と同じように,できないことをできるように,できるようになったことはさらにうまくなるように,いつも向上心を持っていてほしいと思います。そうすれば何でももっと上手になることができますよ。