仕事人

私(わたし)は夫と一緒(いっしょ)に長野県上水内郡(かみみのちぐん)飯綱町(いいづなまち)でペンションを経営(けいえい)しています。飯綱町(いいづなまち)は，自然が豊(ゆた)かな美しい場所なので，ここで経営(けいえい)することを決めました。このペンションは，飯綱町(いいづなまち)の美しい自然を感じることで，日常(にちじょう)生活や仕事などで疲(つか)れた心と体を癒(いや)し，本来の自分に戻(もど)る場所としてお客さまへ提供(ていきょう)しています。また，ペンションに泊(と)まる方にリラックスしていただくために，希望者にはリラクゼーションセラピー（心身のバランスを整えるヒーリングマッサージ）も行っています。

大まかな１日の流れは，朝５時半から朝食の準備(じゅんび)をして，お客様には７時から８時に朝食をとっていただきます。そして，お客様がお帰りになられたら，清掃(せいそう)やベッドメイキングなどを行います。お昼休憩(きゅうけい)をしたあと，買い物や夕食の準備(じゅんび)をしながら，その日に来られたお客様を出迎(でむか)えます。18時から夕食をとっていただき，その後，20時から22時ころまでリラクゼーションセラピーを行います。
主に私(わたし)が料理やリラクゼーションセラピーの担当(たんとう)で，夫がウェイターや，ベッドをきちんと整えるベッドメイキングなどを担当(たんとう)しています。私(わたし)の料理は，地元の野菜を使って，旬(しゅん)の野菜を取り入れながら工夫して作ります。

ペンションでの仕事はやるべきことが多いので，効率(こうりつ)よく仕事をこなすための段取(だんど)りが難(むずか)しいです。例えば，ベッドメイキングだけで２，３時間はかかります。
また，開業当時はあまり知名度がなかったので，お客様が少なかったのですが，旅行サイトと契約(けいやく)してから，徐々(じょじょ)に知られるようになってきました。今では平日休日に関わらず，多くのお客様に来ていただいています。

ペンションに宿泊(しゅくはく)してくださったお客様に，「ゆっくり過(す)ごせました」「普段(ふだん)はなかなか眠(ねむ)れないのに，今日はゆっくり眠(ねむ)れました」という言葉をかけていただいたときは，うれしいですね。特に都市部から来たお客様が，帰るときには，ほぐれたやわらかい表情(ひょうじょう)をしていらっしゃるときなどは，このうえなく感激(かんげき)します。私(わたし)は自分がやりたいことをやっているだけですが，お客様が喜ぶ表情(ひょうじょう)を見ると，私(わたし)たちのやっていることに，とても誇(ほこ)りがもてます。
夫もこの仕事をはじめてから，さまざまな地域(ちいき)の方と出会い，話す機会が増(ふ)えたことが嬉(うれ)しいそうです。

無理をしすぎないようにしています。癒(いや)しをコンセプトにしているので，自分が疲(つか)れた表情(ひょうじょう)をしていると，お客様にもその様子が伝わってしまい，私(わたし)たちの役割(やくわり)が果たせなくなってしまいます。ですから，常(つね)に自分が心地良い状態(じょうたい)になるように心がけ，無理はしません。また，お客様にゆったりと，自然を感じながら過(す)ごしていただくために，部屋には時計もテレビも設置(せっち)していません。山や川や風の音，鳥が鳴く声など，忙(いそが)しい日常(にちじょう)では聴(き)くことのできない音をお客様にも感じていただきたいのです。

私(わたし)は以前，無理をして楽しく生きられず，心身のバランスを崩(くず)してしまったことがあります。そのことがきっかけで，自分を見つめ直しました。そして，自分が本当にやりたいと思え，人のためにもなるペンションの経営(けいえい)という仕事にたどり着きました。飯綱町(いいづなまち)を選んだ理由は，プライベートで偶然ぐうぜん)訪(おとず)れたときに，町の自然や雰囲気(ふんいき)に一目惚(ぼ)れしてしまったからです。私(わたし)からペンションの経営(けいえい)をしたいと夫に相談をしたのですが，こころよく引き受けてくれました。夫からは，やりたいと思うことは時の流れとともに変わっていくものだから，その気持ちを大切にするようにと言われました。

私(わたし)が子どものころは，活発で負(ま)けず嫌(ぎら)いな性格(せいかく)でした。放課後は，男の子たちとドッジボールをして，川遊びもしていました。しかし，冷静な一面もあって，大人の顔色をうかがいながら行動をしていました。趣味(しゅみ)は絵を描(か)くことで，漫画(まんが)も描(か)いていたんですよ。
夫の方は運動が好きで，友達と野球やサッカーなどのスポーツを楽しんでいました。中学時代は釣(つ)りにも夢中(むちゅう)になっていて，今でも休みの日は釣(つ)りに出かけますよ。２人とも，自然に接(せっ)することが，子どものころから好きでしたね。

自分のやりたいことを選んでほしいなと思います。年を重ねていくうちに，決めなければならないことは増(ふ)えていくと思いますが，無理をして見つけることもないし，急いだりあせったりする必要もないと思います。ゆっくりと自分のペースで，自分自身を見つめ，本当の自分を知ることを大切にしてほしいですね。途中(とちゅう)で妥協(だきょう)するのでなく，情熱(じょうねつ)を失わずに世界を見て，自分のやりたいことを見つけるまであきらめないでほしいです。私(わたし)は自分が本当にやっていて楽しいと思える今の仕事にたどり着きました。