仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1981年 生まれ 出身地 島根県
達可たつか 琴美ことみ
子供の頃の夢: 栄養士 保健室の先生
クラブ活動(中学校): 美術部
仕事内容
カフェの店員としてせっきゃく、スムージー作り、調理じょなどを行う。さらに店長として食材やようの発注・管理を行ったり、スタッフ一人一人の体調やてきせいを考えながらぎょうけたりもしている。
自己紹介
楽観的でこんきょのない自信を持っていて、人からはがんり屋と言われることもあります。笑うことや人のがおを見ることが好きで、笑いが生まれるような会話やいを心がけています。休みの日はしいお店を調べてたずねたり、1人でカラオケに行って好きな昭和ようきょくを歌ったりしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2023年11月30日)時点のものです

多様なスタッフが働く、緑あふれるカフェ

多様なスタッフが働く、緑あふれるカフェ

カフェと花屋がへいせつされた「ローランズ原宿」。わたしはこのお店でカフェ部門の店員として働いています。お店は原宿の北参道というとてもおしゃれな街にあり、多くの人がおとずれます。カフェでは、お花が散りばめられたはなやかなオープンサンドやのうこうなスムージーが人気です。テレビやざっしょうかいされることも多く、遠方からわざわざいらっしゃるお客さまも少なくありません。ガラスの仕切りでへだてられたりんせつスペースにあるお花屋さんでは、けっこん式場やイベント会場をいろどるお花やグリーンをデザインしたり、フラワーギフトをはんばいしたりしています。お花屋さんであつかう生花やグリーンを生かしてカフェ店内のそうしょくをしており、カフェは緑あふれる、とてもごこのよい空間になっています。
お客さまだけでなく、ここは、働くわたしたちにとってもここのよいお店です。スタッフはたがいを名字ではなく名前でい、アットホームな空気の中で風通しのよいコミュニケーションをとっています。カフェのスタッフはわたしふくめて8人。それぞれしょうがいがあり、しょうがいのない4人のサポート社員とともに仕事を進めています。
しょうがいのあるスタッフが中心となりうんえいされているカフェですが、「しょうがいしゃが働いている」という事実を大きく打ち出すことはしていません。それは、お店が「プロしきを持って、お客さまにしっかりとのあるものをていきょうする」というほうしんかかげているから。ですからお客さまも、しょうがいのある人たちが働くカフェと知らずに入ってくる人がほとんどです。明るいふんの中、全員が、いきいきと仕事をしています。

スタッフをケアしながら、カフェのげんと店長をつなぐ

スタッフをケアしながら、カフェの現場と店長をつなぐ

わたしはカフェの店員として、スムージーを作ったり、調理じょをしたり、せっきゃくをしたりと、カフェぎょうぜんぱんに関わっています。さらに店長として食材やようなどを管理・発注したり、げんでスタッフをまとめたりする仕事をしています。ローランズで働くスタッフは一人一人にことなるしょうがいやとくせいがあり、中には体調の波が大きい人もいます。日によって変わる体調や気持ちの変化などに気を配りながら、仕事の配分やきゅうけいのタイミングを考え、こまりごとがあれば相談にも乗っています。周りのスタッフの様子をよく見て、何か変化があったら「今日は元気ないね。どうしたの?」「何かあった?」と明るく声をかけます。そうやってコミュニケーションを取りつつ、げんがスムーズに回るよう動いています。
店長は、スタッフのシフト作成、めんせつさいよう、メニュー開発、お金の管理などさまざまな仕事をしながら、スタッフがかいてきに働けるようなかんきょうを作っています。店長がお店の管理ぎょうかんきょう作りに集中できるよう、スタッフをケアしながらカフェのげんと店長をつなぐのが、店長であるわたしやくわりです。

スムーズに仕事ができるようふうしながら、積極的に動く

スムーズに仕事ができるよう工夫しながら、積極的に動く

わたしには、もうまくしきへんせいしょうというかくしょうがいがあります。見ているものにピントが合わず、かいにもやがかかって人や物がぼやけて見えます。子どものときから何となく目が悪いとは感じていましたが、この見え方が当たり前だと思っており、しょうがいには気づきませんでした。かくしょうがいだとわかったのは32さいのとき。たまたまふんしょうがんじゅしんし、もうまくしきへんせいしょうであることがわかりました。
かくしょうがいがあると、カフェの店員として働く上で大変なことがいろいろあります。例えば、遠くのテーブルのお皿がかたいているかどうかわかりません。自分の近くにだれがいるかあくできないこともあります。入店したばかりのころは、スムージーをお客さまのテーブルに置こうとして落としてしまったこともありました。わたしは「ここにテーブルがある」と思って置いたのですが、じっさいのテーブルは少しズレたところにあって、正しく置くことができなかったのです。他にも、お客さまがメニューを指して「これをください」と言っても、ぼやけてよく見えず、どれを注文されたかわからなかったこともありました。
こうしたこまりごとは、とにかく「おく」することでえました。メニューのめいしょうだんはすみずみまですべて覚え、できるだけスムーズに仕事が進むように努めています。調理については、料理を作る手順、使う材料、分量などをすべておくしてたいおうしています。ローランズでは、働く人が作業しやすいよう、例えば「このスムージーには、この材料を何グラム入れる」といったように、あらゆることがすうされているので助かっています。
さまざまなことをおくするため特にしきしているのは、自分から積極的に動くことです。店の動線やテーブルの位置、キッチンのどこに何が配置されているのか。こういったことをたくさん動いて覚えました。その結果、今では物を落としたりぶつかったりすることなく、スムーズに動けるようになりました。さらに、「ここに人手が足りないな」と思ったらサッとフォローに入るなど、じゅうなんに仕事ができていると感じています。

かんじょうてきにならず、スタッフにやさしくせっすることが大事

感情的にならず、スタッフに優しく接することが大事

店長の仕事はまだ始めたばかりですが、やってみると思ったより何倍も大変でした。店長は他のスタッフみんなの動きを見ながらを出さなければいけません。どうしても自分で動こうとしてしまいがちなのですが、それではその作業をしようと思っていたスタッフの動きをさまたげてしまうことがありますし、何よりスタッフの成長につながりません。店長の仕事にマニュアルはありませんから、そのときそのときのじょうきょうをしっかりあくしながら、わたし以外のスタッフができることはなるべくまかせるようにしています。そして、自分が考えていることをスタッフにわかってもらおうとするのではなく、スタッフがどういうじょうきょうで何を考えているのかを自分がかいするよう心がけています。
中でもわたしが一番大切にしているのは、スタッフにやさしくせっすることです。店長になる前のことですが、すごくいそがしくて頭がいっぱいだったとき、うまく動けていない他のスタッフに「じゃ!」ときつくおこってしまったことがありました。そう言われてひょうじょうをなくしたそのスタッフの顔がわすれられず、自分のしてしまったことをとてもこうかいしました。「人にれるほど自分は仕事ができているのか?」「言われたスタッフはどんな気持ちだっただろう?」「もし自分がられたらどんな気持ちになるだろう?」と考えていたらなみだが出ました。同時に、以前、けんの仕事をしていたとき、自分のやっていることをかいしてもらえず「なんでできないの!」と頭ごなしにおこられたことも思い出しました。スタッフはみんなお客さまのためにいっしょうけんめいです。それ以来、どんなにいそがしくてもかんじょうてきにならないことだけはてっていしています。

自分の働く姿すがたが周りにえいきょうあたえる

自分の働く姿が周りに影響を与える

今はしんけんに仕事に取り組むわたしですが、お店に入った当時はしきあまく、「てきとうにやっておこう」「お金をもらえればいい」という気持ちで仕事をしていました。しかし、あるスタッフと出会って考えがガラリと変わりました。
かのじょは、しょうがいのため仕事に集中できないことがあってもあきらめることなく、自分から積極的に仕事をさがして、どんよくに覚えようとしていました。返事一つ、ふるまい一つとってもわたしとはしんけんさが全くちがいました。かのじょ姿すがたを見て、仕事とは何かを学んだ気がします。同時に、本当は仕事としんけんに向き合いたいのに、がむしゃらにやることがずかしいと思っていた自分にも気づきました。それから心をえて仕事を一つ一つしんけんに学んでいきました。
今は店長として他のスタッフをサポートする立場になりましたが、あのころのことを思い出すと、「自分の働く姿すがたが周りにえいきょうあたえるのだな」とよい意味でのきんちょう感を感じます。ローランズは、とても働きやすいしょくです。コミュニケーションが活発で風通しがよく、みんなが安心して働ける。でも言うべきことはおたがいにきちんと言い、ピリッとまったところもあります。そんなふんをつくってきたのは上の人たちです。自分も、上の人たちのようにしっかり働く姿すがたこうはいたちに見せたいと思っています。そして、みんなが元気に前向きに働けるよう、例えばスタッフが調子悪そうにしているときには声をかけて、休んでもらったりそう退たいしてもらったりするなど、店長とともに、スタッフをじゅうなんにサポートすることを心がけています。

みんなの注目を浴びたい、出しゃばりな子どもだった

みんなの注目を浴びたい、出しゃばりな子どもだった

子どものころは、えいようけんしつの先生になりたいと思っていました。せいかくは積極的で、みんなの注目を浴びることにいっしょうけんめい。先生や友達を笑わせようといつもおもしろいことを考えている、出しゃばりで活発な子どもでした。それから、強いじょせいにすごくあこがれていました。メイクをバッチリ決めて、さっそうと歩き、自分のしゅちょうをしっかりとし通す、そういう気が強くかっこいいじょせいかれていたのです。今、思うと、強さにあこがれたうらにはさびしさがあったような気がします。かぎで、ご飯を自分で作って食べることも多く、ひとりでごす時間が長かったので。きっと自分の弱さを見せたくなかったのだと思います。さびしさのうらがえしだったかもしれませんが、積極的なせいかく、かつ料理好きということが、げんざいのカフェ店員の仕事にはつながっているように思います。

何もかもがゼロになってさいスタート

何もかもがゼロになって再スタート

今ではずいぶん落ち着きましたが、わたしにはとうごうしっ調ちょうしょうというせいしんしょうがいもあります。昔は、いじめられることが重なってかんじょうばくはつしたり、られない日々が続いたりしました。けんの仕事をしていたのですがうまくいかず、働くことがこわくなって10年ほどりょうようしていた時期もあります。その後、せいしんは落ち着いてきましたが、働くのはまだこわいし、かくしょうがいもあるじょうきょうでした。どうしたらいいか、ふくの仕事をしていた友達に相談をしたら、いっぱんしゅうろうを目指す人たちがしゅうぎょうのための訓練を行う「しゅうろうけいぞくえんAがた事業所」というところがあることを教えてもらいました。具体的な「しゅうろうけいぞくえんAがた事業所」を区役所に問い合わせてしょうかいしてもらったのが、今、働いているローランズです。
10年のりょうよう期間で、仕事も失い、何もかもがゼロになった気がしてみましたが、うれしいこともありました。ゼロからやり直すことを決め、まずは友達をつくろうと思い「日本もうまくしきへんせいしょう協会(JRPS)」の「ユース部会(JRPSユース)」という、16さいから35さいもうまくしきへんせいしょうかんじゃどうしが交流するだんたいに入りました。そこで、今の夫をはじめ多くの人と出会い、気持ちがとても前向きになりました。ダンスにんだ時期もあります。病気とのたたかいにせいいっぱいで楽しいことを長くけいけんしていなかったので、青春をもどすように楽しみました。こうしたいろいろなけいけんが、「働こう!」という前向きな気持ちにつながったのではないかと思っています。

しょうがいはせいであってハンディキャップではない

障がいは個性であってハンディキャップではない

みなさんに伝えたいことは、「好きなときに好きなことをすればいい」ということです。勉強したいと思ったときに勉強し、遊びたいときは遊ぶ。泣きたいときは泣く。人は自分が本当にやりたいと思わなければ、やる気になりません。そもそも、無理やりやっても頭に入ってきませんよね。わたし自身もカフェの仕事に最初からしんけんだったわけではなく、人との出会いで自分が変わり、んでみようと思って今の自分があります。
この記事を読んでいる人の中には、しょうがいをハンディキャップと考えて、コンプレックスを持っている人がいるかもしれません。しかし、しょうがいはせいであって、ハンディキャップではありません。むしろ自分にとってプラスになるの一つだとわたしは考えます。わたしは「JRPSユース」で、しょうがいをものともせず前向きに働く人、ふうしてしゅを楽しむ人などいろいろな人と出会いました。そして、ローランズ原宿というてきなお店で働くこともできました。そして今、学びへのよくがどんどんいてきて、調理やふくに関する勉強もしています。しょうがいがあったからこそ出会えた人たちがいて、広がった世界があって、とくせいを生かしながらかつやくできています。

ファンすべてを見る

(千葉県 小6)
(静岡県 中1)
(静岡県 中1)
(茨城県 小6)
(京都府 中1)
(宮城県 中1)
※ファン登録時の学年を表示しています

私のおすすめ本

水野敬也
特に生きがいもない主人公がゾウの神様と出会い、神様からの教えを一つずつクリアしていくうちに自分の周りの環境がどんどん変わっていきます。最後にびっくりするような結末が待っており感動を与えてくれる、笑いあり涙ありの一冊です。
岩崎夏海
ビジネス本なので難しいのかなと思いましたが、わかりやすく書かれていて、すいすい読むことができました。ラストで思わず泣いてしまうような、感動ストーリーです。

もっと知りたいこの仕事人

特集ページ
取材・原稿作成:秋山 由香(Playce)・水溜 兼一(Playce)・東京書籍株式会社/撮影:厚地 健太郎