社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年12月18日)時点のものです
私(わたし)は,紙粘土(かみねんど)を使った,洋風・和風の人形や・壁掛(かべか)け・花などの作品の作り方を教えています。教室は,毎週金曜・第1第3水曜・第2第4水曜の午前中と第2第4月曜の夜に,それぞれ別の場所で開いています。生徒さんは定年後の方が多く80代の方もいます。皆(みな)さん楽しんで教室に来てくれています。毎年1回2月~3月には,生徒さんの作品を発表する場を設(もう)けているんですよ。教室がない時には,お客さんから注文を受けた商品を作ったり,教室用に花や人形の作品の見本を作ったり,数年に一度開いている個展(こてん)用の作品を作ったりしています。また,粘土(ねんど)には,重いがキメが細かい石粉粘土(ねんど)・キメが粗(あら)いが乾燥(かんそう)しやすい紙粘土(かみねんど)・滑(なめ)らかで花などが作りやすい樹脂(じゅし)粘土(ねんど)があります。粘土(ねんど)に水を少し足して手でよく練ると,ひび割(わ)れしないようになります。粘土(ねんど)は焼き物ではないので,乾(かわ)かしてしまえば,完成させる時に割(わ)れることはあまりありません。
教室は朝9時30分から始まります。私(わたし)が決めた物を作るのではなく,生徒さんが作りたい物を自由に作っています。私(わたし)は生徒さんにとって分かりにくい所や難(むずか)しい所をお手伝いしています。例えば,壁掛(かべか)けの人形を作る場合,1cmの厚(あつ)さに粘土(ねんど)を広げて,型紙で型を取ります。ビンを使って人形を作る時は,ビンを土台にして周りに粘土(ねんど)を貼(は)りつけていきます。ワイヤーを使う場合は,ワイヤーで芯(しん)を使って体の形を作ります。そして,胴体(どうたい),顔,足の順に作り,次にスカートやズボンなどを着せます。その後,腕(うで)を付けて,上着を着せます。服を重ねていくと段々(だんだん)バランスが悪くなるので,その都度バランスを取りながら作り,最後に土台を作って足を埋(う)め込(こ)むように作るとバランスよく仕上げることができます。1つの作品を作るためには,それぞれの部位を乾(かわ)かしながら作業するので1ヶ月以上かかります。そのため1回の教室で作れる部分が限(かぎ)られてくるので,生徒さんは幾(いく)つかの作品を同時に作っています。
私(わたし)は作品の出来栄えに満足することがなく,「すごく良いものができた!」ということがなかなかありません。最初に作品が出来上がった後のイメージを考えますが,作っている間に段々(だんだん)そのイメージと変わっていくことがあり,出来上がると,最初に思っていた作品とは違(ちが)う物ができることがあります(笑)。でも,作っている時は無心で作ることができ,ストレス解消(かいしょう)になります。人形は,顔の表情(ひょうじょう)で随分(ずいぶん)見栄えが変わりますし,立体的に作る時の体のバランスは難(むずか)しいです。動きをつけるとさらに難(むずか)しくなります。他にも色付けすることで生きた人形になるので色付けも大切なポイントですね。また,風が当たるとひび割(わ)れするので温風や冷風が直接(ちょくせつ)当たる所に置いてはいけません。粘土(ねんど)細工には指を使うので,指先にはとても力が要ります。もしかしたら,マッサージ師(し)になれるくらいの力があるかもしれませんね(笑)。
粘土(ねんど)細工は,何もない所から作品を創造(そうぞう)していきます。粘土(ねんど)は失敗してもニスを塗(ぬ)って完成させなければ何回でもやり直しができます。ただ,粘土(ねんど)は乾(かわ)いてしまうと使えなくなります。色も塗(ぬ)り直すことができ,何度もやり直しができることは良いですね。また,いつまでやっても自分の満足する物はなかなかできません。だから,もっと良い物を作りたいと,常(つね)に挑戦(ちょうせん)できることがこの仕事の一番の魅力(みりょく)です。たまに人形を作って,生徒さんや知人に分けてあげるのですが,喜んでもらえると嬉(うれ)しいです。
仕事をする上では,人間関係は大切です。生徒さんは年上の方が多く,人形教室なので人形作りを教えますが,人生の先輩(せんぱい)から教えられることの方がたくさんあります。生徒さんの性格(せいかく)は一人ひとり違(ちが)いますが,誰(だれ)に対しても同じように接(せっ)するようにしていますので,良い関係が築(きず)けていると思います。また生徒さんによって,紙粘土(かみねんど)を作る経験(けいけん)が違(ちが)うので初心者の方やそれぞれの人にあった指導(しどう)ができるように心掛(こころが)けています。生徒さん同士も教えあって作品作りを進めているので,生徒さん同士も仲良しです。楽しんで帰ってもらうことが一番ですね!!
私(わたし)は半年間,紙粘土(かみねんど)を習うために教室に通いました。その後,通信教育で勉強しましたが,何度も再(さい)提出(ていしゅつ)があった時は大変でした。ただ,人形作りを始めた頃(ころ)は,人に教えるという仕事をするつもりはありませんでした。でも,物を作ることが好きだったので,人形や壁掛(かべか)けや小物をたくさん作っていました。それで,ある人に教えて欲(ほ)しいと言われたことがきっかけで教室を始めました。自分が教室に通っていた時に学んだことは,自分の教室を持つためにとても役に立ちましたね。最初は数人の教室から始まりましたが,口コミで段々(だんだん)生徒さんが増(ふ)えていったことが嬉(うれ)しかったです。昔は移動(いどう)教室といって色々(いろいろ)な地域(ちいき)で数日間講習会(こうしゅうかい)があり,勉強のために参加していましたが,地域(ちいき)が東京だけになってしまったので参加が難(むずか)しくなりました。今は高松や岡山(おかやま)で有名な作家さんの人形展(てん)や展示会(てんじかい)があるので,作品を見て勉強したり,楽しんだりしています。
子どもの頃(ころ)は朝から夕方まで一日中外で遊んでいました。何でもやってみたくて習字や絵の教室,珠算(しゅざん)教室など色々(いろいろ)なことを習いました。三日坊主(ぼうず)で終わることも多かったのですが,私(わたし)が習いたいと言ったらどんどんさせてくれた母には感謝(かんしゃ)しています。物を作ることは小さい頃(ころ)から好きでした。叔父(おじ)は歌が好きで,よく映画(えいが)を観に連れて行ってくれました。5年生までは歌手になりたいと思っていました。小学校の時は「楽焼(らくやき)」という陶器(とうき)を焼く窯(かま)を見るのが好きで,真っ赤に焼けた作品の色の美しさに感動していました。でも冷えると普通(ふつう)の色になることがとても残念でした。
夢(ゆめ)は叶(かな)えるものなので,夢(ゆめ)を持って下さい。人生は思い通りになるものです。悪いようには考えないで,いつもワクワクする気持ちを大切にして欲(ほ)しいです。信頼(しんらい)で人間関係を築(きず)くことは大事です。どんな友達と付き合っても良いと思いますが,他の人の意見に流されないように自己(じこ)主張(しゅちょう)をすることが大事です。そして目的に向かって最後まで諦(あきら)めないで下さい。