※このページに書いてある内容は取材日(2024年10月29日)時点のものです
旅行代理店にホテルのことを知ってもらい、利用につなげる
私は、神奈川県の横浜にある「ホテルニューグランド」というホテルで、営業マネージャーとして働いています。ホテルニューグランドは山下公園の目の前に位置し、正面客室からは横浜ベイブリッジや大さん橋のある横浜港を一望することができます。旅行代理店などの業者の方にホテルニューグランドのことを知っていただき、お客さまの宿泊先を手配する際に利用していただけるようPRしていくのが私の役割です。
ビジネスの出張や団体旅行など、大人数が移動して宿泊が必要になる場合、お客さまは旅行代理店を通して手配するケースが多いです。私の主な仕事は、そうしたお客さまの宿泊先としてホテルニューグランドを積極的に使ってもらえるよう、全国の旅行代理店の方に、横浜にこういうホテルがありますよ、客室数や宴会場、設備はこんな感じですよ、ということを知っていただくことです。
横浜エリアでホテルを探すときにホテルニューグランドのことをすぐ思い浮かべていただきたいので、なるべく一度だけではなく、定期的に訪問して、ホテルと私のことを覚えていただけるように心がけています。ホテルの近くには「パシフィコ横浜」という大きな国際会議場もありますし、近隣エリアで大きなイベントが開催されることもあります。そういうときはホテルに宿泊する方も多くなりますから、それに合わせたご提案を旅行代理店の方にすることもあります。イベントに合わせたこういう計画は、大体、イベントの半年〜1年くらい前から準備を始めることが多いです。
合同商談会に出席するほか、地方出張や海外出張も
私自身は大体8時45分くらいに出社をして、午前中はメールチェックなどの事務作業を行います。午後からは営業の仕事でさまざまな場所に出かけることが多いです。
日本の大手旅行代理店の本社は主に東京にありますが、地方の旅行代理店を訪問することもあります。地方の場合は営業担当ごとにエリアが決まっていて、私は東北と北海道を担当しています。地方出張はだいたい月に1回で、1日につき10社、多いときは15社ほどを訪問し、ホテルのご紹介をしていきます。また、台湾や韓国などアジア圏に海外出張に行くこともあり、これは年に3回ほどです。
旅行業者向けの商談会に参加することも多いです。私たちのようなホテルと旅行代理店をつなぐ合同商談会というのが地域の観光協会などの主催で定期的に開催されていて、そこに参加し、ホテルのことを知っていただきます。インバウンド(訪日外国人観光客)に関しても、海外の旅行代理店の方がそういう商談会に参加されていますので、ホテルの規模や特徴などを知っていただくいいチャンスとなっています。また、「ファムトリップ」というのですが、自治体担当者や観光協会の方が主催し、海外の旅行代理店や事業者の方を呼んで横浜のホテルをご案内するツアーもときどき行われています。そういったツアーでホテルの視察に来ていただいた際にご案内するのも私の仕事です。
ホテルの外に出て、お客さまとホテルをつなぐことができる仕事
ホテルの現場での仕事は、来てくださるお客さまを受け入れる業務がメインとなります。お客さまに喜んでいただける、笑顔を見られるのはもちろん大きな喜びですが、私たち営業の仕事は、ホテルの外でも多くの人と接点をつくり、お客さまとホテルをつなぐことができる数少ない仕事で、これがいちばんの魅力だと思います。
いろいろな場所に出向いて担当の方とお会いしていくのですが、私の名前を覚えてくださる方が増え、何かあったときに私とホテルの名前を思い出して問い合わせをくださることがあります。ときには旅行代理店の方などのいろいろな方と一緒にホテルの集客のために協力することもあります。こうやって外につながっていくことができるのが、ホテル内の他の業務とは大きく違うところだと思います。
また、出張で国内外のいろいろな場所に行くことができるのも、楽しみの一つです。出張で、実際にホテルに宿泊されるお客さまの地元を訪れることで、その土地の文化や習慣のことなどを知ることができることもあります。それを踏まえて、例えば「朝食メニューにこういうものを加えられませんか」と、現場に提案したりすることもあります。
ホテルニューグランドの魅力を伝える
ホテルニューグランドは1927年に開業した、いわゆる「クラシックホテル」と呼ばれるホテルです。ホテルである以上、施設が古くなるとお客さまにはいろいろと不便なことも出てきてしまいます。長い歴史を持つホテルの中には、建物全体を建て直すところもありますが、ホテルニューグランドの場合は古い建物を大事に使い続けながら、横に新たな建物を建てるという形で存続をしています。それは、古い建物を受け継ぐことで、このホテルへの愛や思いを一緒に受け継ぐことができるのではないか、「変わらないもの」があるということの魅力も知っていただけるのではないか、と思っているからです。
新しいホテルが周辺にどんどんできている中、私たちのホテルには歴史があり、新しいものと古いものを融合させた「他にはないもの」がここにあります。そのよさを知っていただくためには、実際にホテルを訪れ、体験していただくことがいちばんです。そのためにも、私たち営業は旅行代理店の方々にホテルニューグランドのことをきちんと知っていただき、ホテルとしての魅力を理解していただいたうえで、宿泊されるお客さまにご紹介していただくことが大事です。できれば旅行代理店の担当者の方にも、ホテルニューグランドのことを好きになっていただきたい、とも思います。そのきっかけになる立場ですから、重要な仕事だと感じています。
なるべく「人」に会いに行く
現在、ホテルニューグランドに宿泊される海外のお客さまの中で、いちばん多いのはアメリカの方です。ホテルニューグランドのすぐ近くに大きな客船が停泊する港があり、アメリカを含む海外へのクルーズ旅行への発着や寄港の場所になっています。そうした客船に乗ってきた方々が横浜で宿泊されたり、到着後に少し日本を観光して帰られたりするために使われています。京都や鎌倉のような観光地とは違う目的で宿泊される方が多いため、旅行代理店の方に交渉するときも、そういった点を中心にお話しします。ちなみに、古い建物が当たり前のように日常にあるヨーロッパの方々には私たちのホテルの「歴史」はPRポイントにならないため、苦労するところです。
セールス営業の担当は、担当ごとに達成しなくてはいけない金額目標が決められています。旅行代理店に営業をして、どれだけ契約してくださるか、宿泊してくださるかが私たちの成果となります。具体的に目標と結果が見えるという点では、プレッシャーもあります。そのため、なるべく私たちのホテルを選んでいただけるよう、さまざまな工夫をしています。
例えば、旅行代理店を訪問するときはなるべく「人」に会いに行くようにしています。ただ会社を訪問するというのではなく、担当者その人に会いに行くようにする。そのほうが私たちの思いも伝わりますし、深く関係性をつくることで、ビジネスにつながるようなほかの担当者を紹介していただけることもあります。そうやって人と人とのつながりを広げていくことを意識しています。お客さまの顔と名前をなるべく覚えたり、お客さまが今何を思っているか、どんなものを求めているかというのをお話の中で感じ取ったりできるのは、ホテルに来られるお客さまと接する部署で働いていたときの経験が生かされているからだと思います。
ドラマをきっかけにホテルの世界へ
高校生のときに、地元の喫茶店でのアルバイトをきっかけに接客業に興味を持ちました。お客さまに水を出したり、オーダーを取ったりという作業が楽しく、「こういう仕事が向いているのかも」と思い、将来の方向を考え始めました。そんなとき、当時テレビで『HOTEL(ホテル)』というホテルを舞台にしたドラマが放送されていたのをきっかけに、ホテルでの仕事に興味を持ちました。ドラマではホテルの仕事の華やかな部分がたくさん描かれていて、「こんなところで働けたら面白そうだな」と思い、ホテルについて学べる専門学校への進学を決めました。
専門学校を卒業した後にホテルニューグランドに就職し、ベルボーイやフロント業務、宿泊予約の業務などを経て、9年前に今いる営業の部署に配属されました。ホテルで働く人には、私のような専門学校を卒業した人もいますが、最近は大学の観光科出身という人も増えています。また、海外のお客さまと接することが多いので、ある程度の語学力は必須となります。そのため、語学系の勉強をされてきた人も多いです。もちろん、それらと全く関係ない学校や学部を卒業して就職する人もいます。
運動部で鍛えた体と、嫌いではなかった英語学習
出身は岡山県の倉敷市で、私が子どものころはまだとても自然が豊かな環境でした。毎日いろいろな子たちと遊んだり、地域のソフトボールチームに参加して近隣の学校の子たちとも交流をしたりと、人とコミュニケーションを取るのは好きな子どもでした。中学校、高校ではずっとバレーボール部でしたが、ホテルの仕事も営業も体力が必要な仕事なので、スポーツで体を鍛えていたのは、今でも役に立っているかもしれません。また、高校に入ってから勉強は苦手になっていったのですが、なぜか英語だけは嫌いになりませんでした。ホテルの仕事は最低でも英語は必須になりますから、専門学校でも英語を学びました。それが苦ではなかったという点でも、この仕事に向いていたのだろうと思います。