仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1994年 生まれ 出身地 福島県
熊坂くまさか 駿吾しゅんご
子供の頃の夢: 科学者
クラブ活動(中学校): 野球部
仕事内容
身近なインターネットサービスをユーザーのみなさまが安心・安全に利用できるよう、日々、悪いハッカーからシステムを守る。
自己紹介
仕事のプログラミングのきゅうけいに、しゅのプログラミングをします。ずっとパソコンをしているとつかれるので、毎週末のアイススケートとサウナをして、パソコンをさわらない時間をあえて作っています。デジタルデトックスです!

※このページに書いてある内容は取材日(2025年08月04日)時点のものです

お客さまの大切なシステムやじょうほうを守る

お客さまの大切なシステムや情報を守る

わたしは、GMOサイバーセキュリティbyイエラエかぶしき会社という会社で、ホワイトハッカーとして働いています。「ハッカー」というと、インターネットけいで他人のコンピューターのじょうほうぬすんだり、システムを乗っ取ったり、かいしたりといったサイバーこうげきをする悪い人をおもかべるかもしれません。でも実はハッカーとは、コンピューターやネットワークの仕組みにくわしい高度なしきを持つせんもんそうしょうです。また、そのようなしきを使ったコンピューターやネットワーク上のこうげきをサイバーこうげきといいます。サイバーこうげきをするような悪いハッカーからシステムやじょうほうを守るよいハッカーを「ホワイトハッカー」とびます。「エシカル(りんかんを持った)ハッカー」や「ホワイトハットハッカー」ともばれます。
ホワイトハッカーの仕事はじょうに高度なしきが必要になるため、やくわりによって仕事が細分化されています。例えば、たいおうするパソコンやスマートフォン、タブレットなど、コンピューターの種類によってそれぞれせんもんがいます。また、同じ種類の機器のせんもんの中にも「サイバーこうげきされたけいせきがないか調べる人」や「こうげきされたシステムをしゅうふくする人」のほか、「サイバーこうげきの高度なじゅつを研究する人」「さいばんになったときにほうりつの面からサポートする人」などさまざまなやくわりがあります。
わたしたちの会社は、お客さまのコンピューターやネットワークかんきょうのセキュリティ(サイバーセキュリティ)に欠点がないかどうかのチェックやが起こったときのたいしょなど、サイバーセキュリティに関するぎょうぜんぱんになっています。そのため、多くのホワイトハッカーがざいせきし、ぎょうや病院のほか、けいさつえいたいなどの公的機関のお客さまの大切なじょうほうを守っています。また、ホワイトハッカーがこうとなって、サイバーセキュリティたいさくに関する訓練をうこともあります。例えば、今年(2025年)の3月に神奈川県のよこにできた新しいオフィスでは、えいたいのサイバーセキュリティ部隊のトレーニングも行っています。

AIを使して24時間365日システムをかんする

AIを駆使して24時間365日システムを監視する

わたしは、ホワイトハッカーの中でも「SOC(ソック。セキュリティ・オペレーション・センターのりゃくしょう)」という、お客さまのネットワークやシステムを24時間365日かんして、サイバーこうげきふせぐチームにしょぞくしています。きん場所は主にたくです。強力なセキュリティとリモートかんきょうが整っているので、フルリモートでもこまることはありません。
「SOC」の仕事は、人間でいうと健康しんだんのようなものです。病気と同じようにサイバーこうげきも放置すると進行するので、なるべく早いだんかいで見つけてしょをします。じょうを見つけたらそれ以上こうげきされないようたいさくし、もしがいが出てしまっていたら、問題のしょげんいんの究明など、きゅうきゅう病院のようなやくわりになう「きんきゅうIR(インシデント・レスポンスのりゃくしょう)」のチームにぎます。また、サイバーこうげきに早く気付くだけでなく、こうげきされる前にセキュリティの弱い部分を見つけることも仕事の一つです。たいさくにはせんもんしきが必要なため、日々の勉強が欠かせません。
このような「SOC」の仕事を、わたしたちの会社では8人のチームで協力して行っています。チームでたんとうしているお客さまは、約100社。とても多いように感じるかもしれませんが、わたしたちはAIを活用して、サイバーこうげきのうせいが高いパターンをサイバーこうげきの前にけんしてこうげきをブロックするシステムを開発し、つねに人がかんし続けなくてもよいかんきょうを整えています。そのため、チームメンバーは見落としている小さなへんがないかを定期的にかくにんすることと、新しいじゅつを使ったサイバーこうげきが発見されたときにどのようにたいしょすればよいのかをけんとうすることに注力することができるのです。
このチームの中でわたしはシニアエンジニアとして、サイバーこうげきをブロックするシステムの開発を中心にぎょうたんとうしています。また、教育事業にもたずさわっていて、「TED×UTokyo 2025」というイベントでは高校生や大学生、社会人などはばひろそうたいしょうに、サイバーセキュリティにきょうを持ってもらうためのワークショップを行ったり、モンゴルの大学でもこうを行ったりしました。ぎょうのサイバーセキュリティたんとうの方など、せんもん向けにサイバーこうげきのシミュレーションをするための練習教材を作ったりもしています。

つねに新しいじょうほうしきをキャッチして、最新のサイバーこうげきにもたいおう

常に新しい情報や知識をキャッチして、最新のサイバー攻撃にも対応

仕事で大変なことは、守るはんが広いということと、せんもんせいが高いということです。インターネットは世界中につながっているのでサイバーこうげきの量はぼうだいな上に、時差がある海外からもこうげきされるので、昼夜関係なくかんが必要になります。さらに、病院のカルテや家のかぎ、家電など、インターネットにつながるものがえているので、サイバーこうげきたいしょうつづける一方です。こうげきする側はたくさんのせんたくの中から、一つでもとっこうを見つければこうげきけることができますが、守る方はどこから来るかわからないこうげきを全て事前にけんし、ふせがなければなりません。気がけないという大変さはありますが、AIも使いながら念入りにかくにんすることを心がけています。また、サイバーこうげきじゅつは日々、進歩していて、次々に新しいパターンのこうげきが出てくるので、ホワイトハッカーであるわたしつねに勉強し続ける必要があります。
そのためにいつも心の中に、「かれを知りおのれを知れば百戦あやうからず」という言葉をわすれずにいるようにしています。これは中国のことわざで、「てきの実力やげんじょうをしっかりとあくし、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、何度戦っても勝つことができる」という意味です。相手のこうげき方法を知らなければ、守ることもできません。サイバーこうげきふせわたしたちは、つねに新しいサイバーこうげきに関するしきていく必要があるのです。
また、たとえ最新のじゅつだとしても、の部分は昔と変わりません。最近は、じゅつの知見を深めるためにせんもんしょを読み、じつに生かしています。さらにサイバーこうげきは、例えば「この国で戦争が起きているから、あの国はこの国にサイバーこうげきけるかもしれない」といったように、時事問題と関連して起こることも多いので、毎朝ニュースを見て世界のじょうせいを知るように心がけています。

うれしいのは、こうげきを未然にふせげたときと高レベルのこうげきたいおうできたとき

うれしいのは、攻撃を未然に防げたときと高レベルの攻撃に対応できたとき

仕事をしていてやりがいを感じるのは、レベルの高いこうげきたいおうできたときと、事前にこうげきふせぐことができたときです。サイバーこうげきじゅつは日々進歩しているので、これまで見たことがない、ふくざつでレベルの高いこうげきけんすることもあります。このようなときには、せんもんせい使してこうげきのポイントをぶんせきし、こうげきかいするさくを練ります。問題のあったシステムのプログラムのコードをずっと見ていると「ここはいつもとちがうな。あやしいな」「ここがシステムの弱点だから、こうげきされそうだな」などと気づくタイミングがあります。それは、ホワイトハッカーとしてのけいけんを積んできたからこその、かんきゅうかくのようなものだと思います。苦労した末になんの高いこうげきの仕組みをかし、無事にこうげきふせげたときには、何にも代えがたいよろこびを感じます。
もし、病院のシステムがサイバーこうげきがいにあったら、かんじゃさんの電子カルテのじょうほうぬすまれてしまったり、りょう機器のでんげんを落とされてしまったりするのうせいもあります。また、こうげきされたのが飛行機のシステムであれば、飛行機がついらくしてしまうことも考えられます。ですから、サイバーこうげきを事前にふせぐことは人の命をすくうこともあるのです。

こうげきするためではなく、守るためにじゅつを使う

攻撃するためではなく、守るために技術を使う

仕事をする上で大切にしていることは、「じゅつと人にせいじつであること」です。つねじゅつりょくの向上を目指し、お客さまのことを考えてさいぜんくすことを第一に考えています。
じゅつりょく向上のために、会社のメンバーとともに、「Capture The Flag(キャプチャー・ザ・フラッグ)」というホワイトハッカーの世界大会にもちょうせんしています。社内には世界1位のホワイトハッカーも多く、わたしも去年(2024年)は世界上位のせいせきを残すことができました。自分のじゅつが世界のハッカーに通用する高いすいじゅんだというよろこびと、お客さまにもせっとくりょくを持って説明できる自信にもつながりました。
サイバーこうげきをする悪いハッカーがどのようなこうげきをしたか考えるには、悪いハッカー以上の高いじゅつを持っている必要があります。その高いじゅつを正しく使わないと悪いハッカーと同じになってしまいます。だからこそ、じゅつりんかんを持って人のために正しく使わなければとつねに思っています。
さらに、お客さまに対してせいじつに向き合うことも心がけています。なっとくしてサービスを使ってもらえるよう、そのお客さまに必要なセキュリティがどのようなものであるかをていねいに説明しています。

ハッカーにあこがれ、しきとスキルを身につけた

ハッカーに憧れ、知識とスキルを身につけた

IT(じょうほうじゅつ)にきょうを持ったのは、中学生のときに『ブラッディ・マンデイ』というドラマを見たことがきっかけでした。高校生の天才ハッカーが、そのじゅつを使ってきょうあくなウイルステロから日本をすくうために、テロリストに立ち向かうというストーリーで、まさにホワイトハッカーの話でした。「ハッキングって、すごいな」と思い、そこからきょうきました。
高校は、つうでは学べないせんもんてきじゅぎょうも受けられるそうごう学科に進学しました。主にITについて学び、このころからハッカーやITに関わる仕事にくにはどうしたらいいのか考えるようになりました。しょうらいITにたずさわるために必要な勉強をし、プログラミングけいかくやITパスポートというかくなどもしゅとくしました。
高校卒業後はITのせんもん学校で3年間、サイバーセキュリティのりょういきをさらに勉強し、卒業後、インターネットサービスをていきょうするITぎょうのセキュリティ部門に入社しました。お客さまにさいてきなシステムをていあんするぎょうたんとうしていましたが、もっとじゅつてきなスキルを身につけたいと思い、同じ会社のSOCのしょどうしました。そこでより多くのサイバーセキュリティのしきをつけたのち、てんしょくしてげんざいいたります。

気になることは何でも実験!理科が大好きだった子ども時代

気になることは何でも実験!理科が大好きだった子ども時代

子どものころからけいないようきょうがありました。ようえんのころは「ドラえもん」を作りたいと思っていて、小学生こうはずっと理科が好きでした。小学生のときのたんにんの先生のたんとう科目が理科だったというえいきょうも大きいと思います。とてもすてきな方で、わたしが感じたいろいろなもんに対してていねいに答えてくれる先生でした。
勉強をしていく中で「さんたんさんにする機械を作りたい」と思い、しょうらいゆめを科学者と考えるようにもなりました。あるときは、理科のじゅぎょうで作ったモーターカーに細工を加えて、もっとスピードが出るようにしようと思いつきました。モーターをちがう種類に変えたり、コイルをく回数をやしたりなど、家でもよく実験をしていました。失敗して、やけどをしたこともありましたね。理科にきょうがあったのは、父がでんけいの部品に関係する仕事をしていたえいきょうもあったのかもしれません。父からアドバイスをもらいながら、自分なりにふうして科学を楽しんでいました。
中学生こうは、ゲーム機の仕組みにきょうを持っていました。クリスマスプレゼントにもらったニンテンドーDSは、ぶんかいしてこわしてしまいました。ほかにも、2機のプレイステーション・ポータブルをぶんかい・合体していろちがいを作ったり、光る仕様にしたりなど、思いついたことにチャレンジしていました。とにかくこうしんおうせいで、気になったものをいじったり実験したりすることが好きな子どもだったと思います。

きょうがあることはなんでもやってみてほしい、まずは身近なものから始めよう

興味があることはなんでもやってみてほしい、まずは身近なものから始めよう

何をするにもモチベーションになるのはたんきゅうしんだと思うので、みなさんにはきょうこうしんを大切にしてほしいです。なんでもやってみて、なことはないと思います。例えば、理科で習った電気の仕組みが、意外にもサイバーセキュリティに関連しているのです。「電気が流れるスピードがこのくらいだから、こういうこうげきがありそうだ」などと、そくがつくこともあるんですよ。このように、一見関係ないように思えても後からつながることがあるので、おもしろいと思ったり気になったりしたことはなんでもやってみて、追究してほしいです。
最近は、子どもたちがITやサイバーセキュリティにふれる機会がえています。わたしたちの会社でも小学校高学年以上をたいしょうに、サイバーセキュリティが学べる「GMO デジキッズ サマーキャンプ2025」というイベントをかいさいしています。きょうがあったら、このような場にも積極的に参加してみてほしいです。
最初は、自分の身近にあるものからちょうせんしてみましょう。例えば、スマートフォンの仕組みを調べてみる。どのような仕組みで動いていて、どのようにインターネットにつながっているのかをさぐるのもおもしろそうですね。そういったきょうの積み重ねが、みなさんのしょうらいにつながっていくと思います。

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取材・原稿作成:佐藤 理子(Playce)・戸張 維(Playce)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行