仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1987年 生まれ 出身地 東京都
水上 翔也(仮名)
子供の頃の夢: サッカー選手
クラブ活動(中学校): サッカー部
仕事内容
やくかくせいざいなどのほう薬物をまる。
自己紹介
ごとがら、顔写真や名前はこうかいです。
体を動かすことが好きなので、サッカーやきんトレをしていましたが、ここ数年は子どもと遊ぶことが楽しみです。
出身大学・専門学校
某大学(大学名非公開) 薬学部

※このページに書いてある内容は取材日(2025年06月26日)時点のものです

ほう薬物をまる

違法薬物を取り締まる

やくとりしまりつうしょう「マトリ」はこうせい労働省の地方こうせいきょくというしょぞくするしきで、やくかくせいざいなどのほう薬物をまるしきです。げんざい、301人がしょぞくしており(※取材日時点)、じょせいも約4分の1をめています。
わたしは「関東しんえつこうせいきょく」のやくとりしまりよこはま分室でやくとりしまりかんとして働いています。やくとりしまりにもさまざまなしょがありますが、最も人数が多いのがわたししょぞくしているそうで、その名のとおり、薬物をまるためのそうを行うのが仕事です。時にはけいさつぜいかん、海上あんちょうなどと合同でそうを行うこともあります。また、病院や薬局、せいやく会社などに入って、りょうようやくがきちんと管理されているかチェックするという仕事もあります。
ほかにもいろいろなしょがあり、例えば海外における薬物じょうせい調ちょうぶんせきを行ったり、海外のそう機関とれんけいしてみつそうを行ったりしているしょや、薬物の取引に使われたパソコンやスマホなどをぶんせきしているしょ、また、薬物のかんていをしているしょもあります。
やくかくせいざいは「薬物」ですので、しょくいんの約6わりやくざいかくを持っています。ほかにもほうりつしきやITけいしきなど、さまざまなしきかくを持ったしょくいんが働いています。

夜のそうや県外でのそうのほか、泳がせそう

夜の捜査や県外での捜査のほか、泳がせ捜査も

薬物はんざいに関わったうたがいがあり、けんきょされたしゃの人数は年間で約1万4千人です。薬物はんざいは、ほんてきには「がいしゃからのとどがない」はんざいであるため、まずはんざいを見つけることから始めなくてはいけません。じょうほうしゅうしゅうみなどで薬物の使用やみつばいじょうほうて、それをもとにそうを進めます。例えば、ある人物が薬物をみつばいしているというじょうほうがあれば、その場所に行ってみやこうをし、本当にみつばいしているのかかくにんします。薬物を売る人間は昼夜を問わず活動していますが、夜に取引が行われることが多く、わたしきん時間帯は日によってことなります。またわたししょぞくしているのは「関東しんえつこうせいきょく」で、東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城、新潟、山梨、長野がかんかつです。しかし、例えば「しゃが大阪からかくせいざいを仕入れている」というじょうほうがあれば、手続きをんでかんかつがいの大阪に行くこともあります。
そうは長期にわたることもあります。つうじょうほう薬物を見つけたらすぐにおうしゅうしなければなりません。一方、「コントロールド・デリバリー」というそう(「泳がせそう」ともいわれます)では、はいしきや人物を特定してたいするために、ほう薬物を持っていると知りながらもわざとその人物を泳がせて、その動きをかんついせきし続けます。
意外に思われるかもしれませんが、外に出てそうをしているだけでなく、書類作成も仕事時間の多くをめています。人の持ち物や家をきょうせいてきに調べるなどのきょうせいそうを行うさいには、事前にさいばんかんしんを受け、「れいじょう」をはっしてもらう必要があります。れいじょうの形でさいばんかんきょをもらわないと、きょうせいそうなどは行えません。そういったれいじょうはっしてもらうための書類や、そうや取り調べの記録など、デスクワークも多いです。一つのけんあつかうために、これだけの手間がかかる、というのは、やくとりしまりかんになる前にはそうぞうしていませんでした。

長時間のみやけんな場面も

長時間の張り込みや危険な場面も

薬物はんざいみつに行われているため、それを見つけ出すのが大変です。また、昼夜を問わずたいおうするので体力的にもせいしんてきにもきつい仕事です。例えばみをしていても、たいしょうしゃが一日、まったく家から出てこないこともあります。暑い日に、車の中でずっとみを続けていると、なかなかつらいなと思うこともあります。また、きょうせいそうしゃさえるときにあばれられることもありますし、相手がを持っている場合もあるので、けんな場面もあります。そのため、たいじゅつの訓練もしています。ぼうりょくだんけんな相手にたいおうするときはけんじゅうけいたいすることもあるため、けんじゅうの訓練も行います。
やくなどのほう薬物に関するそうわたしたちこうせい労働省のやくとりしまりのほかに、けいさつでも行っています。けいさつやくとりしまりかんちがいは、けいさつはばひろい分野へのそうけんげんがあるのに対し、わたしたちは薬物けんに関してだけそうけんげんがあるということです。

大量おうしゅうはその後のはんざいげんしょうにつながる

大量押収はその後の犯罪減少につながる

仕事をしていていちばん気分ががるのは、やはり大量の薬物が見つかったときです。というのも、わたしたちはけいさつくらべて人数が少ないので、こうりつよく仕事をする必要があります。まったんの使用者をまるのも必要なことですが、国内に多くの薬物が流れると、その分、使用者がえてしまいます。つまり、なるべく多くの薬物をおうしゅうすることは、薬物使用者をらすことにつながるのです。
よこはまは港があることから、海外から薬物が入ってくるけんが多く発生します。2024年には、大きなコンテナに入って外国から来た約531キログラムのかくせいざいまったんかく約350億円)をおうしゅうしたけんがありました。このけんけいさつぜいかん、海上あんちょうと協力し、長期にわたってそういん全員で休みなくたいおうしました。さらにその1か月後には、海上で外国船から日本の船に薬物をうつす「洋上取引」のけんもありました。千葉沖でしたが、神奈川のけいさつや海上あんちょうと協力して、コカイン約178キログラムをおうしゅうしました。船でのみつは大量になりやすく、飛行機では小口になるけいこうがあります。飛行機の場合は、荷物に少量ずつかくされていることが多いです。

日本の治安を守る使命感やせいかんを大切に

日本の治安を守る使命感や正義感を大切に

この仕事はいつけんな目にうかわからないなど、さまざまなこんなんがあります。だからこそ、薬物はんざいまることで日本の治安を守るという使命感や、せいかんを持って仕事をしています。
今、薬物せんはどんどん広まっています。以前は取引も都会のはんがいなどが中心でしたが、インターネットのきゅうにより、地方でも薬物をせることができるようになり、都市部以外にも広がるようになりました。
たいした後の取り調べでは、薬物を使ったかどうかという事実かくにんだけでなく、なぜ使ってしまったのか、どうすればやめられるかといった話もします。かくせいざいぞんせいが高く、一度使うとやめることがじょうむずかしいものです。病院に通うことや、同じなやみを持つ人が集まる自助グループに参加すること、やくとりしまりで行っているさいらんようぼうえんしょうかいするなど、その人に合った方法をアドバイスすることもあります。時にはかつてたいした人からかんしゃとともにきんきょうほうこくする手紙が来たり、電話がかかってきたりすることもあります。わたしたちのそんざいが、さいはんへのせいしんてきストッパーになっていることもあるのだと思います。

せんもんしきを生かせる「せいの味方」

専門知識を生かせる「正義の味方」

けい科目がとくだったこと、両親がやくざいだったことから、大学は薬学部に進みました。大学に進学する時点ではめいかくしょうらいしょくぎょうは決めていませんでしたが、人の役に立ちたいというばくぜんとした思いはありました。最初はやくざいとしてどこかにしゅうしょくするつもりだったのですが、しゅうしょく活動のちゅうやくとりしまりかんの仕事を知り、子どものころにせいの味方やけいさつかんのような仕事にあこがれていたこともあり、きょうを持ちました。薬学部で学んだせんもんしきも生かせますし、体を動かすのも好きだったので、自分に合っているのではないかと思いました。
やくとりしまりしゅうしょくするためには、やくざい国家試験にごうかくするか、国家こういん試験にごうかくすると、さいよう試験の受験かくることができます。その後、やくとりしまりさいよう試験にごうかくすると、さいようです。わたしやくざい国家試験にごうかくし、さいよう試験を受けて入省しました。

サッカーでつちかったチームプレーがそうに生かされる日々

サッカーで培ったチームプレーが捜査に生かされる日々

おさないころから、体を動かすのが好きな子どもでした。小学校からサッカーを始め、サッカークラブにしょぞくして土日はクラブでプレーしていましたし、中学、高校もサッカー部でした。サッカーはチームスポーツですが、今の仕事でも大きなそうになると大人数で動きますし、チームワークが大切です。そういう点では、サッカーのけいけんが役立っているなと思います。また、今の仕事で長期間のそうを通じて大きな成果を挙げたときの達成感は、合宿など大変なことをえた後で試合に勝ったときの達成感に通じるものがあります。
勉強では数学がとくだったのですが、英語は苦手でした。今の仕事では海外のそう機関とのやり取りもありますし、外国人のしゃと英語でコミュニケーションを取ることもあります。日本ではさまざまなこくせきの人が薬物はんざいに関わることがありますが、日本語が通じなくても、英語なら通じることもあります。語学のじゅうようせいは、今になって実感しているところです。

薬物はんざいは使用者だけでなく、しゅうにも大きな不幸を生む

薬物犯罪は使用者だけでなく、周囲にも大きな不幸を生む

みなさんに伝えたいのは、しょうらいの目標が決まっていなくても、好きなことをいっしょうけんめいやってほしいということです。わたし自身、この仕事にくために特別なことをしてきたわけではなく、結果的に今の仕事にいています。なにかにいっしょうけんめい取り組んでいるとさまざまなこんなんにぶつかりますが、それをえたときの達成感は大きな自信になります。そういうけいけんを積み重ねることで、しょうらいどんな仕事にいても積極的に取り組めると思います。
また、やくとりしまりかんとして伝えたいのは、薬物はんざいは「がいしゃなきはんざい」といわれますが、じっさいには多くのがいしゃがいるということです。例えば、子どもがたいされたときのおやさんの様子を見ると本当に心がいたみますし、子どもが薬物を買うためのお金は親からぬすんだお金だったり、悪いことをしてたお金だったりします。結局、家族やお金の出どころになった人ががいしゃになるのです。
薬物を使うと自分の体がボロボロになり、やめたくてもやめられなくなります。もしあなたの友達やせんぱいが薬物を使っていても「少しくらいいいか」とはぜったいに思わないでください。そこからかくせいざいなど別の薬物ぞんはってんしたり、お金のためにせっとうなどのはんざいに手をめたりするのうせいもあります。
最後に、どんななやみも一人でかかまないでください。あなたの周りには必ずあなたをすくってくれる人がいます。わたしたちもそのためにそんざいしています。なやみがあったら、しゃの方や学校の先生など、しんらいできる大人に相談することが大切です。もし、なにか薬物の使用やはんざいまれることがあったなら、一人でなやまずしゅうに助けを求めてください。

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取材・原稿作成:川口 有紀(フリート)・東京書籍株式会社/協力:横浜銀行