仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

神奈川県に関連のある仕事人
1968年 生まれ 出身地 神奈川県
じゅうしょく住職
服部はっとり 直哉じきさい
子供の頃の夢: プロ野球選手 など、何か日本一になりたかった。
クラブ活動(中学校): 空手部
仕事内容
お寺に住み、宗派の教えを広める
自己紹介
楽天家。時間を見つけては自分のお寺の歴史について調べている。

※このページに書いてある内容は取材日(2012年03月08日)時点のものです

宗派しゅうはの教えを多くの人に伝える役目。

宗派の教えを多くの人に伝える役目。

住職じゅうしょくという言葉を聞いたことはありませんか?わたし川崎かわさき駅の駅前にある宗三寺そうさんじという曹洞宗そうとうしゅうのお寺の住職じゅうしょくです。住職じゅうしょくは漢字のとおり"お寺に住んでお寺を守り,宗派しゅうはの教えを多くの人に伝える"役目を持つおぼうさんのことです。具体的には,お葬式そうしきや法事のり行い,座禅ざぜん会や勉強会の開催かいさい檀家だんかさん(お寺におはか位牌いはいがある方々かたがた)のご相談をお聞きする,お寺やおはか維持いじ・管理,こういった仕事を宗三寺そうさんじ住職じゅうしょくとして取り仕切っています。

"定休日"も"終業時間"も決まりナシ。

朝は5時に起床きしょうし,身なりを整えて6時にお寺の門を開きます。その後,7時半くらいまで法事の準備じゅんびを行い,座禅ざぜんを組みます。一般いっぱん方々かたがた一緒いっしょ座禅ざぜんを組まれることもありますね。それから朝食を取って,9時に他のおぼうさんたち(4名)と打合せを行い,お寺や葬儀そうぎ施設しせつ掃除そうじを行います。お葬式そうしきや法事はほぼ毎日あり,週末には1日で10けん以上り行うこともあります。檀家だんかさんがご相談事をされていくこともありますし,夏休みの間は子ども座禅ざぜん会を開いて,近所のお子さんたちと座禅ざぜんを組んだ後,みんなで宿題をやることもあります。住職じゅうしょくの役目は"お寺に住んでお寺を守り,宗派しゅうはの教えを多くの人に伝える"ことです。だから365日,生活全てが仕事のようなものですね。

お寺は"えん"が生れる場所。

お寺は

宗三寺そうさんじでは,毎年7月に檀家だんかさんが大勢おおぜい集まってご供養くようをし,一緒いっしょに食事をする集まりを行っています。宗三寺そうさんじにおはかがあるということは,今は遠くはなれたところに住んでいても,ご先祖せんぞ様は川崎かわさき近辺に住んでいたということなんです。だからおもしろい偶然ぐうぜんが多いんですよ。小さいころくなったおじいちゃんのお友達が,7月の集まりで偶然ぐうぜん近くにすわっていて,わかころの話を聞くことができたり,おはかならんでいるけど顔を合わせたことがなかった檀家だんかさん同士が,ご先祖せんぞ様はご近所さんで,とても仲が良かったことを知ることができたり。今まで知らなかった"えん"を発見できることが多いのです。ご先祖せんぞ様をきっかけにして新しい"えん"が生れるのは,お寺ならではの特徴とくちょうだと思いますし,"えん"がどんどんえていくことはうれしいことです。

お寺も変わらなければならない。

お寺も変わらなければならない。

みなさんにとってのお寺ってどんなところですか?きっとおはかまいりやご家族やご親戚しんせきのお葬式そうしきや法事といった用事でたまに行く場所,って感じでしょうね。日本の社会のありようはずいぶん変わりました。昔は,家族や親せきが同じ町や村に住んでいて,先祖せんぞ代々だいだいのおはかがあるお寺が近くにあり,折にれてみんなが集まるり所となっていたと思います。今は,ご先祖せんぞ様のおはか随分ずいぶんはなれたところにある方が多いのではないでしょうか。おじいちゃん・おばあちゃんと一緒いっしょらしている人もっているでしょう。わたしは社会の変化に合わせてお寺も変わらなければならないと考えています。宗三寺そうさんじでも,血縁けつえんがなくてもおはかを守ってくれる第三者の方に同じおはかに入っていただけるようにしたり,ご子孫がいない方のおはかをお寺で守っていけるようにしたりするなど,今の社会に合った法事のやり方やおはかの管理の仕方を取り入れるようにしています。

でもむずかしいのは,変わらないこと。

でも難しいのは,変わらないこと。

たしかに年に数回程度ていどかもしれませんが,日本では折にれてご先祖せんぞ様のことを想う風習がずっと続いています。ご先祖せんぞ様に感謝かんしゃし,自分が今生きていられることを感謝かんしゃする気持ちは,日本人が持っている根本的な気持ちではないかとわたしは思います。学び方は宗派しゅうはによってちがいますし,社会の変化に合わせて気持ちを表す方法は変わっていくでしょう。でも,ご先祖せんぞ様への感謝かんしゃの気持ちの大切さ,これは変えずに伝え続けなければなりません。実はそれが一番むずかしく試行錯誤さくごの連続ですが,わたしの仕事です。まずは機会があったら,ぜひご先祖せんぞ様に会いにお寺に来てほしいと思います。

もともとおぼうさんになる気はなかった。

もともとお坊さんになる気はなかった。

小学生のころは,空手,水泳,野球・・・スポーツばかりやっていました。あとは近所の友達と遊びまわってよく先生におこられていました。野球をしていて本屋さんのまどガラスをったり,学校のプールでビート板の上に板をならべていかだを作り,水上騎馬戦きばせんをやったり。父親が宗三寺そうさんじ住職じゅうしょくだったので10さい得度とくど(頭を丸め,おぼうさんの仲間入りをすること)していますが,それ以外に変わった生活はしていません。中学に入って15さい法戦式ほっせんしき(一人前のおぼうさんになるための儀式ぎしきのひとつ)を受け,父に言われて横浜よこはまのお寺に1年間住みみで修業しゅぎょうしながら学校に通っていました。きびしい両親のそばにいるより居心地いごこちがよさそうだと思ったのが理由だったのですが・・・これが大間違おおまちがい。毎日4時起きでおつとめを行い,学校に通う日々ひびは本当に大変でした。高校から大学では,お寺に関することはまったくやっていません。大学は仏教ぶっきょうけいの大学に入りましたが,その時も特におぼうさんになるため,というわけではなかったんです。

決めたのは祖母そぼの死がきっかけ。

決めたのは祖母の死がきっかけ。

そんなわたしがおぼうさんになることを決めたのは,大学を卒業するころ祖母そぼくなったのがきっかけです。命の大切さや人と人のえんについて考えるようになりました。そして住職じゅうしょくになることを決めたのです。とはいえ住職じゅうしょくになるためには,お寺で数年間修行しゅぎょうしなければなりません。曹洞宗そうとうしゅうには福井ふくい県の永平寺えいへいじ横浜よこはま市の總持寺そうじじの2つの大本山があり,わたし總持寺そうじじで2年間修行しゅぎょうしました。修行しゅぎょう中は一般いっぱん社会とは完全に切りはなされます。例えば,曹洞宗そうとうしゅうでは四九の日といって日付の末尾まつびに4か9が付く日に浄髪じょうはつ(頭の毛をること)を行うのですが,り落したかみの毛を受ける古い新聞紙の見出しが目に入り,初めて4か月前に総理そうり大臣が交代していることを知る,なんてことも。修行しゅぎょうからもどった後は,相模原さがみはらのお寺のお手伝いに行き,約6年間そこでおつとめした後,宗三寺そうさんじもど現在げんざいいたります。

一番の財産ざいさんは,愛してくれる人がいること。

一番の財産は,愛してくれる人がいること。

今すぐに何になりたいかを決める必要はないと思います。でもみなさんにはぜひ,やると決めたことは目標を決めてやりくせをつけてしいと思います。そうすると自分の言動に責任せきにんがもてる人になることができます。あと人の一番の財産ざいさんは,お金や持ち物ではありません,愛してくれる人たちがそばにいて,自分もその人たちを愛することができるか,ということにきると思います。ぜひおたがいに信頼しんらいが持てる生き方をして,愛し,愛される関係をたくさん作ってください。

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取材・原稿作成:横浜銀行、(c)学校ネット株式会社