仕事人

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東京都に関連のある仕事人
1958年 生まれ 出身地 東京都
にほんごきょうし日本語教師
山本やまもと 弘子ひろこ
子供の頃の夢: 小説家
クラブ活動(中学校): 吹奏楽部
仕事内容
外国人に日本語を教える
自己紹介
子どものころはどくしょきで,たくさん本をみました。えいやテレビもきでしたが,がるにできるどくしょさいこうらくでした。けんせつかいしゃで2ねんはんはたらいたあと,手にしょくをつけたいといろいろなことにちょうせんし,その中でほんきょうというごといました。休日はをしたり,ゆっくりしていることがおおいです。

※このページに書いてある内容は取材日(2016年02月10日)時点のものです

日本語を教え,日本を教える

日本語を教え,日本を教える

わたしが代表をつとめるKAI日本語スクールでは,現在げんざい44の国と地域ちいきから来た約220名の外国人が日本語を学んでいます。簡単かんたん日常にちじょう会話を学ぶ初級レベルから,新聞やニュース,小論文ろんぶんの書き方などを学ぶ上級レベルまで,さまざまなクラスがあります。中級や上級に進むと,日本語の知識ちしきに加え,異文化いぶんか理解りかい授業じゅぎょうもあります。例えば,自分からたのんでさがしてもらったアルバイトをことわらなければならない時,どう言えばいいか,自分の国の例と比較ひかくしながらちがいを考えます。自分たちの国の文化では当たり前であっても,日本の文化の中では失礼と感じられてしまうということなどを学ぶのです。日本語を教えるだけではなく,日本文化に気づき,その中で生活して,日本人と交流できるようになってしいと思いながらわたしたちは授業じゅぎょうをしています。

さいになっても学び続ける姿すがたに感動

何歳になっても学び続ける姿に感動

学生の年代も幅広はばひろいです。全体的には,大学や兵役を終えたぐらいの20代前半〜中頃なかごろの学生が最も多く,留学りゅうがくビザを取って学んでいます。留学生りゅうがくせいの他には,日本人と結婚けっこんした人や,企業きぎょう研修生けんしゅうせい,中にはキリスト教の教会の神父さんなどもいます。 数年前には,なんと90さい男性だんせいも毎週通って来られました。その方は長年日本で英語の先生をしていた方で,英語を教えることが中心の生活だったため,日本語はきちんと勉強したことがなかったそうです。しかし,仕事を完全に引退いんたいした後,アメリカには帰らず,住み慣す なれた日本にとどまることを選択せんたくし,念願だった日本語を学びたいと,わたしたちの学校に入学しました。何さいになっても学びたい気持ちを持ち続けることは素敵すてきだなと感じながら,学習をサポートさせてもらいました。

留学生りゅうがくせいの「代弁者だいべんしゃ」としての日本語教師きょうし

留学生の「代弁者」としての日本語教師

日本語教師きょうしの仕事は,第一に日本語をプロとして教えることです。日本語学校で働く日本語教師きょうしになる方法は二つあります。一つは「日本語教育能力のうりょく検定けんてい試験」という試験に合格ごうかくすること。もう一つは「日本語教師きょうし養成講座こうざ」という,420時間以上の講座こうざ受講じゅこうし,修了しゅうりょうすることです。こうして初めて,日本語学校で外国人に対して日本語を教えることができるようになります。その他,日本語教師きょうし留学生りゅうがくせいや日本語を学ぶ外国人の手助けをすることもあります。かれら・彼女かのじょらにとっては「外国」である日本のらしには,役所での手続きや,住む場所の契約けいやくなど,大変なことがたくさんあります。外国人学生にとって最も身近で信頼しんらいできる日本人は日本語教師きょうしである場合が多く,相談される場合もあります。そのとき,日本語教師きょうしというより,日本でらす日本人としてアドバイスをしたり,手伝ったりすることもあります。授業じゅぎょう準備じゅんびもある中で生活のサポートまで行うというのは大変ですが,親身になって相談に乗り,協力している日本語教師きょうしも少なくありません。すると,「外国から見た日本」がわかり,それまで考えたことのない問題を外国人の立場で一緒いっしょに考えたりなやんだりしながら,いつの間にか外国人の滞在たいざい資格しかくやビザ問題などにもくわしくなったりします。”advocator”(代弁者だいべんしゃ)という英単語がありますが,まさにかれら・彼女かのじょらの希望や思いの代弁者だいべんしゃとして,日本でのらしがうまくいくよう協力するという役割やくわりを果たせたら,それもとてもやりがいがあることだと思います。

日本語は「悪魔あくまの言語」?

日本語は「悪魔の言語」?

日本語は「悪魔あくまの言語」などと言われ,外国人にとってマスターすることがむずかしい言語であるとされています。たしかに,ひらがな・カタカナ・漢字と文字の種類が3種類もある言語は他にありません。英語なら, 26文字のアルファベットの組合せでコミュニケーションが成り立ちますよね。また,日本語にはあいまいな表現ひょうげんが多いというのも,よく言われるとおりです。しかし,日本語は文法的にはむしろやさしいとも言えます。たとえば,日本語は言葉の順番が変わっても,意味は変わりません。「わたしはご飯を食べます」「食べますご飯をわたしは」と言っても意味は同じです。質問しつもんしたければ,文の最後に「か?」をつけるだけで大丈夫だいじょうぶだし,英語のように,単数か複数ふくすうかをいちいち気にする必要もありません。ただ,欧米おうべい型のことばとのちがいが大きくて,単語を聞いても意味が想像そうぞうできないことや,同音異義どうおんいぎ語(同じ音でちがう意味のことば:「酒/さけ」,「機会/機械/奇怪きかい」など)が多いことなど,漢字を使わない国の人たちには特にむずかしく感じるのも事実です。 また,コミュニケーションの方法そのものがちがう点も,外国人がむずかしいと感じる理由の一つです。たとえば,日本人同士が日本語で会話するときは,主語(だれが・何がなど)を言わなくても会話が成り立ちますが,英語などは主語が必要ですね。そのちがいの理由の一つに,聞く人が主語を頭の中でおぎなって聞いたり,話の意図をんであげようとしたりするという,受け手の努力を前提ぜんていにしたタイプの言語と言えるからです。それがいいとか悪いということでなく,そういうちがいやコミュニケーションの特徴とくちょうまえて教えることが大切だと思います。

毎日手ごたえを感じられることが魅力みりょく

毎日手応えを感じられることが魅力

日本語教師きょうし魅力みりょくは,学生たちの変化や成長が毎日見えて,自分の教えたことに手ごたえが感じられることだと思います。ある留学生りゅうがくせいが「わたしは子どものころからずっと勉強が苦手で,何をやってもだめだったのに,日本で日本語を学んで始めて勉強が面白いと思った。本当にありがとう。」と言ってくれたことがあります。そんなことを言ってもらえると本当にうれしいし,日本語教師きょうしという仕事を選んでよかったと思える瞬間しゅんかんです。学生たちの仲が良く,雰囲気ふんいきが良いクラスでは,放っておいても自分たちで集まって勉強しています。かれら・彼女かのじょらは,本当に日本語を学びに来ていて,学ぶことが楽しいと思っているのだなと感じると,教師きょうしの側もますます力が入ります。 ちがう国から来た学生たちが偶然ぐうぜんクラスメイトになり,最初は笑顔を交わすことしかできなかった状態じょうたいから,やがて日本語で話し合いができるまでになる過程かていに立ち会えることは,とても大きなやりがいです。

女性じょせいが働くことがめずらしかった会社員時代

女性が働くことが珍しかった会社員時代

大学を卒業した後,建設けんせつ会社に就職しゅうしょくしました。ワープロが登場したころで,職場しょくばへの導入どうにゅうめぐって賛否さんぴが分かれたのを覚えています。当時は,企業きぎょうの中で女性じょせいができる仕事はとてもかぎられていました。そこで2年半ほどったころ,会社を辞めて手にしょくをつけたいと思うようになりました。いくつか調べたり学んだり中で,日本語教師きょうしという仕事があるのを知り,ことばが好きだったこともあって日本語教師きょうしの養成講座こうざを受け,そのままその学校で講師こうしとしてスタートすることができました。その後,うつった先の学校が閉鎖へいさすることになったのをきっかけに,仲間と一緒いっしょに立ち上げたのが今の学校です。教える内容ないようから教え方まで,全部自分たちの手で考え,夜おそくまで準備じゅんびし,翌日よくじつ授業じゅぎょうをするという毎日は大変でしたが,とても楽しかったです。

中学時代の経験けいけんが今につながっている

中学時代の経験が今につながっている

子どものころはぜんそくがひどく,学校も休みがちでした。それで,自然と本をたくさん読むようになり,小説家になりたいなんて思ったりしていました。中学時代,ある先生の教え方がすごく分かりやすく楽しかったおかげで,クラス全員が苦手な図形の証明しょうめい問題ができるようになったということがありました。それから10年以上って自分が日本語教師きょうしになってから,その先生のことを思い出しては先生のすごさを実感する毎日です。学生ができるようになる,ならないは,先生の力によるところが物凄ものすごく大きいと思うようになり,責任せきにんとやりがいを感じています。

「なんとかなる」を合言葉に

「なんとかなる」を合言葉に

できないかもしれないと思ったり,心配なことがあったりしても,「なんとかなる」と思って前に進んできました。学校を始めて今までの間には絶体絶命ぜったいぜつめいだと思うようなことも何度かありましたが,「なんとかする,いや,必ずなんとかなる」と信じて頑張がんばっていると,不思議とどこからか手が差し伸さ  のべられて先に進めました。ぎゃくに,「ダメだ,できない」と思うと,本当にそうなってしまいます。わたしは今まで,その両方を経験けいけんしました。やるべきことか,そうではないのか,どちらにしても行動してみないと分かりません。先に進めば次の景色も見えてきます。みなさんもやってみたいことがあれば,「なんとかなる」と信じて,まずは一歩,踏み出ふ だしてください。

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私のおすすめ本

司馬遼太郎
内容も良いのですが,とにかく日本語の「リズム」がとても素晴らしく,司馬遼太郎の作品はたくさん読んでいます。勢いのある文章で,引き込まれるように読み進められます。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社