社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2009年06月22日)時点のものです
私(わたし)は贈(おく)り物用や家庭用など,いろいろな「かまぼこ」や「ちくわ」,それから「じゃこてん」を作る仕事をしています。私(わたし)が中心になって作っていますが,家族も魚のすり身を練ったり,調味したりしています。練り作業はかまぼこを作る作業の中で一番大事な所なので,お店の2代目に教えています。もし,離(はな)れて仕事をしていることがあっても,心は練り作業に向けています。仕上げもほとんど2代目に任(まか)せています。2代目にはアドバイスをしています。かまぼこはおめでたい品なので,結婚式(けっこんしき)の折りや正月など祝い事には絶対(ぜったい)欠かせません。製品(せいひん)を作る時には,温度管理に注意が必要です。
朝6時30分頃(ごろ)から市場に新鮮(しんせん)な魚を買いに行きます。お店を始めた頃(ころ)は,朝3時くらいから市場に行って,買いつけをしていましたが,もう50年も続けてきたので,市場で売っている人と信頼(しんらい)関係ができて,遅(おそ)い時間に行っても魚を取っておいてくれるようになりました。季節や時期ごとの旬(しゅん)の魚も買いますが,かまぼこの材料の中心になる,ぐち・はも・にべ・太刀魚などを主に買って帰ります。私(わたし)の家族は,7時頃(じごろ)から開店の準備(じゅんび)を始めて,8時頃(じごろ)にはお店を開けています。魚の頭を取り,内臓(ないぞう)を出し,よく水洗(みずあら)いし,下ごしらえなど準備(じゅんび)をします。そして,皆(みな)でかまぼこやちくわ,じゃこてんなど,順番に製造(せいぞう)していきます。だいたい夕方までかけて作っています。
製品(せいひん)が食べ物なので,中にゴミが入らないように気をつけています。雨や風で漁師(りょうし)さんが海に出られない時は,新鮮(しんせん)な魚を仕入れることができないので困(こま)ります。魚がたくさんある時は,たくさん買って帰ることもします。季節や時期によって仕入れる魚の種類や量が違(ちが)うので,添加物(てんかぶつ)などを使わないで,一年中同じ味を出すということはとても難(むずか)しいです。かまぼこが普通(ふつう)より少しやわらかくできあがったというような小さい失敗をした時は,勉強だと思うことにしています。次は失敗しないようにと努力しますからね。失敗しないと失敗した人の気持ちはわかりません。他の人にやさしく接(せっ)することができるようになるためにも失敗は大切です。仕入れた魚を洗(あら)う時は,流水で洗(あら)います。水をためて洗(あら)うと水の量が少なくて済(す)み,環境(かんきょう)にやさしいのですが,菌(きん)が流れないので必ず流水で洗(あら)います。手を使う仕事なので,長年この仕事をしていると手の形が仕事にあわせて変わってきました。これが『職人(しょくにん)の手』ですかね(笑)。
お客さんに喜んでもらえることが一番うれしいです。お客さんが「もう一度食べたい」と思ってくれるかまぼこ作りをしたいと思っています。旅行に来ていた人がお土産に買って帰って,「おいしかったのでもう一箱送ってください」と県外の方から注文があった時は,いちだんと「まじめにしないといかんな!頑張(がんば)らんといかんな!」と思います。お客さんの中には,接客(せっきゃく)は絶対(ぜったい)に私(わたし)の娘(むすめ)や妻(つま)でないとダメだという人もいます。こういう方から注文がくると,絶対(ぜったい)に味と質(しつ)は正しく守ろうと思います。
お客さんがいつ買ってくれても同じ味を提供(ていきょう)できるように努力しています。私(わたし)の作るかまぼこをいつも買ってくれているお客さんや,私(わたし)の作るかまぼこの味をなつかしく思って,久(ひさ)しぶりに買ってくれるお客さんの期待を裏切(うらぎ)らないようにしたいと思っています。練っている時の生地の見きわめや,弾力(だんりょく)を出しながら生地を固める作業には,魚の配合,鮮度(せんど)が大事です。こうした技術(ぎじゅつ)は,先輩(せんぱい)の職人(しょくにん)さんや昔働いていた所の親方が教えてくれたもので,今でもそれを忠実(ちゅうじつ)に守りながら作っています。気温や湿度(しつど)によって練っている時の生地の状態(じょうたい)が違(ちが)うので,自分の手でさわって確認(かくにん)します。素手(すで)で生地をさわっているので,手洗(てあら)いなど衛生面(えいせいめん)はとても気をつけています。仕事が短時間で効率(こうりつ)的にできる方法はないかと常(つね)に考えています。考えることが好きなんです(笑)。生活をしていく中で,人に役立つことをしていきたい,人に好かれることをしたいなと思います。
この仕事を選んだ理由は,一生食べていけるように,手に職(しょく)をつけたいと思ったからです。中学を卒業して,15歳(さい)で大阪(おおさか)へ行き,職人(しょくにん)さんに弟子入りして,修行(しゅぎょう)をつみました。最初の頃(ころ)は店の準備(じゅんび)やそうじといった雑用(ざつよう)ばかりでしたが,何年も修行(しゅぎょう)をしているうちに調理をさせてもらえるようになりました。25歳(さい)までには独立(どくりつ)したいと思っていたので,20歳(さい)から仕入れ伝票などを見せてもらい,経営(けいえい)の方法も一生懸命(いっしょうけんめい)勉強しました。そして,22歳(さい)で地元に帰って,5年後にかまぼこ屋を開店することができました。
子どもの頃(ころ)は兄弟や近所の子と本当によくけんかをしていて,負けん気が強い子どもでした。6人兄弟の長男として生まれたので,母親からはいつも弟や妹のお手本になるようにと言われていました。だから,親の手伝いもよくしていました。早く大人になって家族を支(ささ)えたいと思っていました。学生の頃(ころ)は,機械が好きだったので機械整備(せいび)の仕事をしたいと思っていました。今でも,かまぼこの製造(せいぞう)に使っている機械がこわれた時に,機械の音などで機械の様子がわかることもあるんですよ。あと,一人で静かに考えたい時もあるので,座禅(ざぜん)をしたいと思っていました。今でも機会があれば,お寺に行って座禅(ざぜん)をしてみたいと思っています。
親や先生の言うことを良く聞いて,両親に感謝(かんしゃ)の気持ちを持って大きくなって欲(ほ)しいですね。とにかくまじめに頑張(がんば)ってもらいたいです。小さい頃(ころ)はのびのびとやんちゃ坊主(ぼうず)でいいと思いますが,他の人の意見や考えをよく聞いて学んでください。他の人のプラスの部分をどんどん自分のものにしてください。やさしい気持ちやまじめさを身につけて,心のまっすぐな人を目ざして欲(ほ)しいですね。自分で決めたことは嫌(いや)なことがあっても絶対(ぜったい)逃(に)げないでください。将来(しょうらい)の夢(ゆめ)に向かって希望を持って一生懸命(いっしょうけんめい)進んでいって欲(ほ)しいと思います。