仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1976年 生まれ 出身地 東京都
大内おおうち 順司じゅんじ
子供の頃の夢: 刑事
クラブ活動(中学校): 水泳部
仕事内容
毎日走る電車を安全にお客さまのもとへみちびくため、どう(線路)のてんけんせいを行う。
自己紹介
むずかしいことには何にでもチャレンジしたがるせいかくで、うまくできたときの達成感が好きです。休日はおいしい料理を食べながらお酒を飲むのが好きです。

※このページに書いてある内容は取材日(2025年07月01日)時点のものです

電車を安全かつかいてきに走行させるために線路をせいする

電車を安全かつ快適に走行させるために線路を整備する

わたしどうこうぎょうかぶしきがいしゃという会社で、どうこうのチームのリーダーとして働いています。みなさんはどうこうという仕事を知っていますか?どうというのは、線路のことです。げんみつには少しちがいがあるのですが、線路のことだと思ってもらって問題ありません。わたしたちどうこうは、鉄道会社かららいを受け、電車が安全に走行できるよう、線路のてんけんせいなどを行う、せんもんしょくにんです。日本の重要なインフラである電車の安全を守るのが、わたしたちどうこうの仕事です。
和道工業では主に、東京と千葉を結ぶけいせい線およびほくそう線のどう工事を行っています。どう工事にはさまざまな仕事がありますが、なかでもメインとなるのがどうせいの作業です。電車は2本のレールの上を走行していますが、そのレールをささえるために、「まくら」とばれる部材をとうかんかくならべてきょうし、その下に、線路のじゅうばんに分散させるためのさいせきめています。こうしたこうぞうによって、電車は重さをささえられ、安定して走ることができます。
電車はたくさんの乗客を乗せて線路の上を走行しますが、何百トンもある電車が毎日何回も走行しているうちに、さいせきは細かくくだけていき、まくらやレールはれっしていきます。すると、だいにレールの左右の高さがずれたり、線路にずれやゆがみが生じたりしてしまいます。電車に乗っているとき「ガタンゴトン」という音を聞いたことがあると思いますが、あの音もレールのつなぎ目がずれて起こるものです。ずれが大きいとれや音が大きくなり、乗り心地ごこちも悪くなってしまいます。わたしたちは安全に、かつ乗り心地ごこちがよいじょうたいで電車を走行させるために、日々、そうしたずれやゆがみをミリ単位でせいしているのです。目立たない仕事ですが、電車を安全に走らせるという、じょうに大切なやくわりになっています。

長く重たいレールを、息を合わせてこうかんする

長く重たいレールを、息を合わせて交換する

主に鉄で作られているレールは、電車が何度も走行するうちに少しずつり、きずがついていきます。また、鉄は気温の変化にもえいきょうされやすいざいで、夏は暑さでび、冬は寒さでちぢせいしつがあるため、レールがゆがんだり、ひびれたりすることがあります。こうしたたいふせぐため、わたしたちはってしまったレールを新しいレールにこうかんする作業を定期的に行っています。
レールこうかんさいは、まずこうかんが必要なレールの長さをせいかくはかり、その長さに合った新しいレールを用意します。げんざい、日本の線路で主に使用されている「50kgNレール」や「60kgレール」とばれるレールは1本25メートルで、1メートルあたりの重さが約50~60キログラムと、とても重たいものです。レールはようせつしてつなげ、200メートル以上もの長さにすることもあるため、とても人の力だけでは動かすことができません。
そこで、げんではレールやまこしというそうを何台も使い、レールをチェーンでげてどうさせています。例えば300メートルのレールの場合、レールやまこしを20台以上使って1本のレールを持ち上げます。レールやまこしは1台につき1人の作業員がそうするので、20人以上で息を合わせて一気に持ち上げ、こうかん作業を進めていきます。こうかんするレールが長くなるほど、必要な人手もえるため、チームワークが問われる作業です。

自分がいたレールの上を電車でつうするときの達成感

自分が敷いたレールの上を電車で通過するときの達成感

新しい線路をせつ作業も、どうこうの大切な仕事の一つです。げんざいわたしたちはけいせい線のけいせいたていし駅付近で、ふみきりこうに向けた新しい線路のせつ工事をしています。げんざいは地上に線路があり、ふみきりせっされています。しかし、駅付近のふみきりじている時間が長いため、車や人の通行にしょうが出て、交通じゅうたいげんいんになっています。ふみきりによるこの交通じゅうたいをなくすため、線路をこうえ、道路の交通をスムーズにする工事が進められています。
新しい線路のせつかんりょうしたら、それまで使われてきた線路からしんせつした線路へと電車のルートをえる「きりかえ工事」も行います。工事は電車の終電から始発までの間のかぎられた時間内で行われるため、まさに時間との勝負です。そのため、100人から200人の作業員がげんに集まり、とてもだいな作業になります。安全に進めるためには、きめの細かいじゅんとチームのれんけいが欠かせません。その分、無事にかんりょうしたときには大きなやりがいと達成感を味わうことができます。
短時間で一つの目標をやりげるために、全員が力を合わせて集中していどんだ結果の一体感こそが、どうこうの大きなやりがいの一つだと思います。プライベートで、自分が工事をたんとうした線路の上を電車でつうすることもありますが、そのときは心の中で「やりきったな」とほこらしい気持ちになります。

少しのずれもゆるさず、せいかくに作業を行うことが大事

少しのずれも許さず、正確に作業を行うことが大事

レールこうかんや線路のせつさいには、レールにあなを開ける機械でレールどうをつなげるためのボルトを入れるあなを開けたり、レールをせつだんするための機械を使用して、レールを切って長さを調節したりなどして、レールの加工を行います。例えば、10メートルのレールをく場合、10メートルぴったりの長さにレールをせつだんします。しかし、せつだんすんぽうを短い方に少しでもちがえてしまうと、レールどうせつぞくするさいすきができてしまい、せっかくせつだんしたレールが使い物にならなくなってしまいます。レールのせつだんあなけ作業はすべて、やり直しのきかない一発勝負。特に気をけない、きんちょうかんのある作業です。レールがすんぽうどおりにせつだんでき、せつするさいにスポッときれいにおさまったときは、「うまくいってよかった」と心からほっとします。

げん作業はだんりが9わり!事前じゅんがなにより大事

現場作業は段取りが9割!事前準備がなにより大事

作業は主に平日の深夜、終電から始発電車が発車するまでの時間に行われています。夜のげんかいが悪く、さまざまなけんともなうため、気をくことはできません。だからこそ、安全かつかくじつに作業を進めるためには、昼間のうちにしっかりとじゅんをしておくことがなによりも重要です。わたしつねに、「だんりが9わり、作業が1わり」というしきを持って仕事に取り組んでいます。事前のじゅんが不十分だと、げんでの作業がとどこおり、こんらんまねげんいんになってしまいます。一方で、だんりがばんぜんであれば、作業中にも安全面にはいりょするゆうが生まれます。かぎられた時間の中でかくじつに作業を終えるためには、やはりじゅんがすべてのかぎにぎっていると感じます。
また、チームで作業を進める上で、チームのリーダーであるわたしが特に大切にしているのは、「そっせんして自分が動くこと」です。自分が手を止めてしまうと、しゅうにもえいきょうが出てしまいます。だからこそ、げんでは自ら先頭に立って動き、仲間のやる気を引き出すことをつねに心がけています。それが、リーダーとして果たすべき大切なやくわりだと考えています。

おさないころからつちかってきたにんたいりょくが今の自分を作っている

幼いころから培ってきた忍耐力が今の自分を作っている

どうこうは時ににんたいりょくも必要な仕事ですが、子どものころや学生時代に身につけたにんたいりょくが今の仕事に生きていると感じることがあります。わたしは小さいころからいろいろなことにチャレンジしたがるせいかくでした。友達といっしょに、きょうだめしとして高いところからぶら下がってみるなど、物おじせずやんちゃなことばかりしていましたね。そんな小学生のころ、地元のボーイスカウトに入って活動していました。なかでも一番の思い出は、全国のボーイスカウトがいちどうに会するキャンプ大会です。4年に1度行われるこの大会では、1週間の野外活動の中で、火のおこし方をはじめとしたサバイバル訓練をたくさんけいけんし、心も体も大きくきたえられました。
中学時代は水泳部、高校時代はサイクリング部と、中学、高校ともにスポーツけいの部活に入っていました。特にいんしょうに残っているのが、サイクリング部の合宿で、さんの五合目まで自転車で登ったけいけんです。平らな道がいっさいないさんの山道を、ひたすら自転車で登り続けるという、とてもこくちょうせんでした。せんぱいこうはいとともに走っていく中で、「あきらめたくない」という気持ちがだいに強まっていき、約29キロメートルの山道を登りきりました。まさに自分との戦いだったと思います。

線路をせいする仕事にりょくを感じ、どうこうの道へ

線路を整備する仕事に魅力を感じ、軌道工の道へ

わたしどうこうという仕事を知ったのは、高校生のときです。「鉄道業界なら安定していそうだから」という理由から、鉄道について学ぶカリキュラムがある高校に進学しました。そこで鉄道についてさまざまなことを学んでいたのですが、改めて自分のしょうらいについて考えたさいに、自分がスーツやせいふくを着て仕事をしている姿すがたがどうしてもイメージできないことに気がつきました。それよりもヘルメットや作業着を身に着けて、げんで体を動かしながら作業をする仕事の方が、自分には合っているのではないかと考えたのです。そこで、「鉄道業界でもそのような仕事があるのだろうか」と調べたときに出会ったのが、どうこうという仕事でした。
高校卒業と同時に和道工業に入社したのですが、最初の1年はとても大変でした。どうこうの仕事は、レールをく作業、まくらこうかんさいせきせつなど、にわたります。使う道具も多種多様で、それらを覚えるのも一苦労でした。ですが、一つのことをめるというよりも、いろいろな作業ができることが、わたしには向いていたのだと思います。3年目になり、仕事の流れもつかめるようになると、どんどんどうこうの仕事のりょくにのめりむようになりました。それ以来約30年、ずっとどうこうの仕事を続けています。

鉄道業界にはたくさんの仕事があることを知ってほしい

鉄道業界にはたくさんの仕事があることを知ってほしい

電車に関わる仕事というと、みなさんがまずおもかべるのはしゃしょううんてんなど、鉄道業界の花形といわれるしょくぎょうかもしれません。ですが、実はそれ以外にも、鉄道業界にはたくさんの仕事があります。わたしたちのような、線路のてんけんしゅうを行うどうこうをはじめ、車両のメンテナンスをする人、電車や駅に電力をきょうきゅうするせつの管理をする人など、たくさんの人々が鉄道業界をささえています。それらは目立たない仕事だと思うかもしれませんが、電車がたくさんの人を乗せて、毎日安全に走行するためにはどの仕事も欠かせません。いわばえんしたの力持ちです。しょうらい、電車に関わる仕事をしたいと考えている方がみなさんの中にいたら、こうしたたくさんのせんたくがあることをぜひ知ってほしいです。
どうこう」という仕事は、あまり知られていない仕事です。線路のてんけんしゅうは夜中に行うことが多いですし、どう工事をせんもんてきに学べる学校などもないので、知ってもらえる機会がなかなかないのです。こうしたげんじょうを少しさびしく思うこともありますが、より多くの人にこの仕事のりょくを知ってもらえるよう、積極的に発信していきたいと考えています。どうこうを目指す人が少しでもえてくれたらうれしいです。

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取材・原稿作成:粟屋 芽衣(Playce)・東京書籍株式会社/協力:城北信用金庫