※このページに書いてある内容は取材日(2017年05月11日)時点のものです
『勉強って楽しい!』その気持ちを支える仕事
私は「株式会社学友館」という会社で働いています。みなさんも授業で使ったことがあると思いますが,おはじきやおもちゃのお金が入っている算数セットや習字セット,ドリルや工作キットなど,勉強が楽しく・分かりやすく進められるような商品を学校に販売する会社です。沖縄には離島も含めて小中学校が300校ほどありますが,そのほとんどの学校に,私たちが商品をお届けしています。
私は,会社の中では「商品管理」という仕事を担当しています。前の日に入った注文の伝票を仕分けする事から1日の仕事が始まります。伝票にはどの商品がどの学校にいつまでに何個必要なのかが書かれていて,それを慎重に確認していきます。注文の商品が会社の倉庫にあるものか,県外の会社に注文しなければいけないものかを確認し,それぞれの担当に仕事を振り分けていきます。それから届いた商品の出荷準備をし,注文と届ける商品に間違いがないかを最終確認します。各学校の営業担当へ商品を引き渡すまでが,商品管理の仕事です。
細かいチェックをする丁寧さと,期日を守るためにスピードも必要とされる仕事です。
チームワークは欠かせない
学友館の商品管理は,男性3名,女性17名の計20名のチームで動いています。商品管理のメンバーはそれぞれが役割を持っていて,仕事が遅れずに進んでいるか確認することがチームをまとめる係長としての私の役目です。
日によっては,ある人の担当している仕事がとても忙しくなるときもあります。そんなときは「今,私は仕事がいっぱいです。どなたか空いている方は手を貸してください!」と大きな声でチームのみんなに宣言するように決まりをつくりました。1人で抱えきれない仕事があるときは,お互いに助け合って,チームのみんなで対応しています。仕事は1人で抱え込まないようにすることが大事です。誰かの仕事が止まっているのに気づかないままだと,商品のお届けが遅れてしまい,せっかく注文してくれた先生や,楽しみに待っている子どもたちを,がっかりさせてしまいますよね。それに,これまで会社が築いてきた学校との信頼を無くしてしまいます。私たちのチームは先生や子どもたちと直接会うことはないのですが,「学友館に頼んだら希望した日にちまでに丁寧に届けてくれるな。また学友館にお願いしよう」と思ってもらえるために,毎日頑張っています。
輝く人になりたい!
私は小さい頃から,テレビの中のアイドルが大好きでした。いつも明るくていきいきと楽しそうで,そして周りも明るくするような,そんな人に憧れて,自分もそうなりたいって思っていました。マンガの『アタックNo.1』に出てくる主人公のこずえちゃんも,バレーボールが上手くなりたくてつらいことがあっても前向きな姿がキラキラ輝いてみえましたね。中学生のときは,こずえちゃんと同じバレーボール部に入部して練習に励んでいました。
その頃からだと思いますが,楽しそうにしている人を見ると,こんなに輝いているのはどうしてだろうって,答えを知りたくて観察していましたね。そのせいもあると思いますが,その人の魅力をひきだすことのできる美容師になることを目指していました。
自分も周りも輝かせる人
私はヘアメイクが好きなのでお気に入りの口紅をつけると,いつでもハッピーな気分になります。自分だけでなく周りの人がいつでも明るい気持ちでいられるような工夫もいつも心がけています。チームの誰かがが少し疲れているなと気になるときにはチョコを配ったり,声をかけたりして,少しでも気分転換ができるようにしています。仕事をするうえで,仕事の内容はもちろん大事だと思いますが,誰とどんな気持ちで働くのかという環境も同じくらい大事だと私は思います。
仕事はめちゃくちゃ忙しい時期もあって,つらいときももちろんあります。ですが「楽しく仕事できています!」と言ってくれるチームのみんなの笑顔をみると私も嬉しいんです。ほんの少しの工夫や気遣いで,自分も周りの人もいきいきとして働けます。子どもの頃目指していた美容師にはなれませんでしたが,この仕事でもまわりの人を笑顔にできることがなによりも嬉しいです。
一人じゃうまくいかないことに気づいた
私がこの会社に入ったときは,短い時間で仕事をするパートタイムという働き方をしていました。その頃は,負けず嫌いの性格もあって,時間内で終わらなかった仕事を,他の人に頼むのが申し訳ないと思い,必死で仕事をこなしていました。それから,係長の役職につき,部下を持つようになりましたが,ここでも,他の人に仕事を頼むより,私が進めた方が早いと思い,ついつい一人で仕事をしていました。自分に与えられた仕事を誰にも頼らず,自分だけの力でやりきることに達成感を感じていたかったからです。でも,それを続けた結果,どうなったと思いますか。抱えている仕事の量がどんどん増え,私しか知らない事だらけで,休憩をとりたくても誰にも頼めず時間に追われ,心も身体もパンク寸前の状態になってしまいました。「こんなに一生懸命やっているのに,どうして仕事が終わらないの?」忙しくて気持ちの余裕もなくなり,ピリピリしてしまう事が多くなってしまったのです。そして「こんな私,昔憧れていた『輝いている人』なんかじゃない!」と気づいたのです。自分も周りも輝くためには,チームワークは一人だけで頑張ってもダメなんです。
相手の立場になって考える
私がチームに仕事を振り分けるときに気をつけていることは,「相手の立場になって考える」ことです。細かい作業が得意な人には「この仕事を頼もう」とかですね。 たとえばあなたが得意な科目が算数だとしたら,算数の宿題はすぐに終わりますよね。それと同じです。自分が得意な事を任されると,スピードも速いし,何よりも自信を持って楽しく進められます。どちらが“良い・悪い”ではなくて,その人にとっての“得意・不得意”を見極めて考えています。だからといって,得意な事ばかりを任せているわけではありません。相手の不得意な仕事だったとしても,ここまでは頼んでみようとか,次に頼むときには,その先まで頼むこともあります。そうすると,以前はできなかった仕事が,今ではできるようになるんです。チームのみんなが一歩ずつ成長している姿をみることが,やりがいでもあり,誇りでもあります。
「叱る」も思いやりの気持ちがあってこそ
部下を「成長させたい!」という思いは,そう簡単には伝わるものではなく,たくさん失敗もしてきました。考えるより先に強い言葉がぱっと口から出てしまい,私はそんなつもりはなくても,相手にとっては傷つける言葉として受け取られてしまうこともあります。言い過ぎてしまったかな,と叱った後に悩む事もよくあります。
とはいえ,相手の成長につなげるためにも,注意するときは,相手の立場を考えるよう心がけています。特に自分の都合や感情が混ざらないように常に気をつけています。もしも,そんな言葉を使ってしまったときは素直に謝り,冷静に話すようにしています。
指導するという立場は,孤独を感じることもあります。そんなときは会社の同僚や上司へ相談します。また,私の尊敬する松下幸之助さんの『叱る人は好きで叱っているわけでない』という言葉に励まされています。
指導をする立場になって気づいたことは,厳しい言葉の裏側には相手を思いやる気持ちがあるということです。私もこれまでに,上司から叱られることもありました。そのときはふてくされる気持ちになります。でも,その厳しい言葉があったからこそ,自分の足りない部分に気づくことができました。叱ることは相手の成長につながると信じているし,「相手を信頼しているからこそ,厳しい事が言えるんだ」と今では確信があります。
未来を託す後輩へバトンをつなぐ
私はこの会社に勤めて18年目の管理職です。これからは,今まで先輩方や周りの人からもらったアドバイス,そしてこれまでの自分の経験を,次の世代に伝えていくことが私の役目だと思っています。私の好きな言葉で,「人はみんなダイヤモンドの原石」という言葉があります。ダイヤモンドの原石は,もともと美しく輝く本質をもっているのですが,磨かなければ光り輝くことはありません。
みなさんは今まさに自分自身を磨いている途中だと思います。自分の夢や,やりたい事を見つけてどんどん磨いていってください。それから,先生や家族など周りの人からの厳しい言葉も,きっと自分を磨いてくれています。「どうせ私なんて」という気持ちは,せっかくのダイヤモンドを逆に曇らせてしまいますよ。そんな時は受けとり方を変えてみてください。
自分も輝いて,そしてその輝きが周りの人を照らすような,そんな魅力あふれる人になってくださいね。