仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

東京都に関連のある仕事人
1980年 生まれ 出身地 千葉県
堀川ほりかわ 真加まなか
子供の頃の夢: 水泳選手
クラブ活動(中学校):
仕事内容
社会インフラを自分で計画し,調ちょうせっけい,工事を行い,うんえいする。
自己紹介
こうりつせいのうせいじゅう。せっかちでけずぎらい。仕事も家庭も全力でやりたいのですが,どちらもちゅうはんになってしまうこともあります。休日はども(+夫)の世話と家事を主にしています。子どもたち(小3,小1)の成長におどろく日々です。
出身大学・専門学校

※このページに書いてある内容は取材日(2019年01月17日)時点のものです

事業を立ち上げ,せっけいこううんえいまで行う

事業を立ち上げ,設計・施工を経て運営まで行う

わたしは今,まえけんせつこうぎょうかぶしきがいしゃというけんせつ会社の事業せんりゃく本部というしょで働いています。このしょが立ち上がったのは,2011年のことでした。わたしたちのようにゼネコンとばれるけんせつ会社は,ほんてきに,ぎょうや国といった発注主から工事をう立場です。つくりながら「こういう風にしたらもっと使いやすいのかも」「こういう使い方ができるのでは」というのを思いつくことがあっても,できたものを使うのは発注主で,わたしたちにはどうすることもできないのがつうでした。でも,これからは自分たちでつくったものをうんえいしたり,会社のものとして持ち続けたりといった,う以外のこともやっていこう,という「だつうけおい」を目指して,今のしょが立ち上がったんです。
自分たちがつくり上げた事業が順調に大きくなれば,それ自体でえきを生んだり,あるいは,どうに乗ったところで事業ごとばいきゃくしたりすることもできます。発注する側もこうする側も同じ社内にいることで,こうに関する話し合いもスピーディーに進み,「いいもの」を追求できるというメリットもあります。
今,このしょには大きく2つの柱があります。1つは自治体や公社などが持っている道路や空港といったせつを借りて,自分たちでうんえいする,という事業。もう1つは,「メガソーラー」と言われるだい太陽光発電所や洋上風力発電所といった,さいせいのうエネルギーに関する事業で,こちらはかくからわたしたちが行い,調ちょうせっけい,工事をて,完成後のけいえいにまでわたしたちが関わります。わたしは今,主にこのさいせいのうエネルギーの仕事を手がけており,プロジェクトリーダーとして,間もなく完成する秋田県の「はっぽう風力発電所」など,4つほどのプロジェクトに関わっています。

日本各地でプロジェクトを進める

日本各地でプロジェクトを進める

2011年の東日本だいしんさいこう,太陽光や風力などのさいせいのうエネルギーに注目が集まり,2012年には,さいせいのうエネルギーの買取せいせいされて,こうした発電方法で作られた電気が高く売れるようになりました。もともとまえけんせつこうぎょうはダムけんせつを多く手がけており,発電所に関するノウハウがありました。そこで,わたしたちのしょでは,さいせいのうエネルギーに関するビジネスを立ち上げていくことにしたんです。
まずは事業にてきした場所さがしからスタートし,土地を使えるように,土地の持ち主やいきの人たちとこうしょうし,きんを調達し,社内のしょれんけいしながらせっけいけんせつを進めていきます。そして完成した後も,たとえばうんえいする会社のしゅっしゃかぶぬしとなったりと,さまざまな形でうんえいに関わります。ときにはどうに乗った後で,事業ごとばいきゃくすることもあります。
プロジェクトの予定地は日本各地にあるので,しゅっちょうはひんぱんにあります。下調べのためだったり,地元の方々とのこうしょうをしたり,役所へきょを取りに行ったりと,げんに足を運ぶことは多いですね。
太陽光にせよ風力にせよ,屋外に建てるものなので,どんなばんなのか,風や雪などのえいきょうはどのくらいあるのかなど,かんきょうにより必要なせっけいが変わってきます。また,発電所である以上,ぜったいに安全でなくてはいけません。そのため,じゅんしんちょうに行っていきます。1つのプロジェクトがスタートして,しゅうりょうするまでは3年以上かかるのがつうで,ときには,10年近くかかることもあります。

1つ1つのプロジェクトがわが子のよう

1つ1つのプロジェクトがわが子のよう

インフラに関わる仕事というのは1つとして同じものはありません。道路に発電所にと,つくるものもちがえば,同じ発電所にしても建てるいきちがえばじょうけんもさまざまに変わり,それぞれのじょうけんおうじてカスタマイズしていくことが必要ですから,いつも,つくっているものがちがいます。だからインフラに関する仕事はおもしろいし,働いていてもきることはありません。
さらに,わたしたちのしょならではの仕事の喜びとして,自分が手がけたものができあがり,そしてそれらがどうする様子を見られる,ということがあります。完成してからわたしてしまうのではなく,ずっと見守ることができるんです。「うけおい」でトンネルをつくっていたときには味わえなかったことですし,なんだか,つくるもの1つ1つが自分の子どものように感じることもあります。つくった後に「育てる」ことができますし,それぞれの“育ち方”もちがいます。「この子はどういう風に手をかけてあげればいいものに育つだろう」といったように,つくったものの未来の成長を考えながら関わっていくことができます。これは幸せなことだと思います。
また,仕事の上で,大きなきんがくけいやくをすることもありますが,大きなけいやくを問題なく結べたときにもじゅうじつ感を感じますね。たとえば先日も,風力発電所用のきょだいな風車を買うけいやくわしたのですが,何十億円というきんがくになりました。大きなけいやくですから,あつけいやくしょみ,じゅつ仕様もしょうさいけんとうする必要があります。大変ですが,じゅつ仕様の部分などはわたしがエンジニアだからこそ細かい部分がわかり,けいやくにまでたどり着けるということもあります。自分だからこそできる仕事かなとも思いますし,やりがいを感じます。

相手にかいしてもらうため,ろんてきに考える

相手に理解してもらうため,論理的に考える

どんなことでも自分できちんと考えてすじみちを組み立て,けつろんを出す,ということを心がけています。今,わたしはプロジェクトのリーダーとして動いているので,仕事の中で本当にいろいろな人と関わることになります。さまざまな立場の関係者の意見を聞きながら,まとめていくのですが,ときには話し合いの中で意見がバラバラになってしまうこともあります。また,どのせんたくを選んでも,チームのだれかが不満に思う結果になってしまう,といった場合もあります。でも,だからこそ,「わたしはこれがいいと思います。こういう面はあるかもしれないけど,だったらこうしたらいいのでは」というように,みんながなるべくなっとくするように話をしなくてはいけません。自分の中でまずきちんと理想の「あるべき姿すがた」のけつろんを出して,その上でみんなと1つずつかくにんをしていく。そうすれば,わかってもらえることは多いんです。
今のしょが立ち上がったとき,まだこういう「いろいろな人たちの意見をまとめて,大きな仕事を動かしていく」というけいけんが少ないまま,プロジェクトを立ち上げていかなくてはいけませんでした。そんな中,周りの人にかいしてもらえるにはどうしたらいいか,ということをこうさくしていくなかで,こうしたことを大切にするようになったんです。

「ものを作って,売る」というシンプルな仕事

「ものを作って,売る」というシンプルな仕事

高校時代に,おやさんがせっけいの仕事をしている友達がいたんです。家に遊びに行ったとき,せい道具などを見て「かっこいい」と思い,けんちくの道に進むことを決めました。そしてけいの学部に進み,大学3年生になってせんもんを決めるとき,けんちく学科は人気でばいりつが高かったのですが「ものをつくる」方面には進みたかったため,土木学科を選びました。
じっさいに土木学科に進学してみたら,毎日の実験や研究がとてもおもしろかったんです。たとえばしゃを固めて,どうしたらどうこわれるかを研究したり,コンクリートを練って,どのくらいの強度があるかを調べたり。そういうのが向いていたんでしょうね。その後,しゅうしょく活動をするときも,“げんで仕事ができること”をじょうけんに会社を受けていきました。
わたしが思うけんせつぎょうのいいところは,いっしょうけんめいものをつくり,その「ものをわたしたたいとしてお金をいただく」,という点だと思います。これって,野菜を育てる農家さんや,魚をとるりょうさんたちと同じような,すごくシンプルな仕事だと思うんですね。このシンプルさがすごく好きなんです。自分の子どもに「お母さんはどんな仕事をやってるの?」って聞かれたときに,たとえば「風力発電所をつくっているんだよ」といったように,「こういうものをつくっている」とすぐに答えられる。そういう仕事はいいな,と思います。

ほうりつかべけいけんした,シールドトンネルのげん

法律の壁を経験した,シールドトンネルの現場

もともとげんの仕事をぼうしていたため,入社して最初の仕事はげんかんとくでした。東京のかすみせきの,きょだいなシールドトンネル工事のげんでした。今から15年前で,まだけんせつ業界ではじょせいげんかんとくめずらしい時代でした。それでもうちの会社は「やってみなさい」となかしてくれ,わたしっていたのですが,そこで問題が起きました。
会社から言われたのは「ほうりつのために,わたしげんに行けないかもしれない」ということでした。実は当時,労働に関するほうりつで,じょせいはトンネル工事などのげんでは働いてはいけない,ということが定められていたんです。かつて,たんこう労働者として子どもやじょせいこく使されていた時代があったので,そういうことをふせぐために作られたほうりつだったんですが,時代が変わってもずっと残っていたんですね。
このままだとわたしはシールドトンネル工事のげんで働くことができないし,会社としてもけんせつ業界としても,このままではいけないのでは,という話になりました。そんなとき,その仕事は国土交通省の手がける大きなプロジェクトだったため,当時のいずみじゅんいちろうしゅしょうげんさつするということがあったんです。そのタイミングで,このほうりつわたしの置かれたげんじょうについて,わたしからしゅしょうに,ちょくせつお話しさせてもらいました。その後,いろいろな方のじんりょくもあり,次の年にほうりつが改正されることになったんです。今では,管理,かんとくをする業種なら,じょせいもトンネル内の作業にじゅうすることができます。けんせつ業界でじょせいがその後かつやくしていくためにも,いいタイミングだったのかもしれません。

前例のないことを立ち上げる大変さ

前例のないことを立ち上げる大変さ

入社して5年ほどは,さまざまなこうげんげんかんとくとして働きましたが,けっこん・出産を機にせっけいどうになり,その後,産休からふっしたタイミングで,今いる事業せんりゃく本部の立ち上げから関わることになりました。今でこそ,「けんせつ会社が自らつくったものを持ち続け,うんえいに関わる」というビジネスモデルは日本のけんせつ業界でも広まってきていますが,当時はだれも何もわからないじょうきょうでした。「何をやったらいいのか」を考えるところからのスタートだったので,海外の事例などを参考にしたり,とにかく勉強することから始まりました。
それまではげんかんとくせっけいの仕事をしていたのに,いきなり,けいやくしょこうしょうや,事業しゅうを作るといった,これまでとは全くちがう仕事が入ってきました。しかも,太陽光発電の事業に関しては,社内にだれもプロフェッショナルがいないじょうきょうでした。1つ1つの細かいじゅつはわかるものの,それらをとうかつしたプロジェクトのけいけんしゃがいなかったんです。だからとにかく太陽光発電のけいけんしゃなどにいろいろなじょうほうや意見を聞いて,何がさいてきなのかをさぐりながら,走り回ってプロジェクトを進めていったおくがあります。
当初,6人でスタートしたしょの人員は,今では70人になりました。立場上,チームのメンバーをマネジメントしていくこともえ,つねへいこうしていろいろな作業を行っているようなじょうきょうです。一人ではぜったいにできない仕事なので,チームメンバーとじょうほうを共有しながら,しんちょくじょうきょうをコントロールしていくようにしています。

目標やゆめは変わっていってもいい

目標や夢は変わっていってもいい

社会に出ると,とても広い世界が待っていますし,社会人生活もとても長いものです。だから,いくらでも自分の世界を広げていくことができます。おもしろいことはどんどん自分でかいたくしていけるんです。
じっさいわたしも,最初はげんかんとくせっけいの仕事をするつもりでまえけんせつこうぎょうに入りましたが,今では事業を立ち上げる仕事をしています。みなさんも,今「こういうしょくぎょうにつきたい」と思っていたとしても,もしかしたら世の中にはもっといろんなしょくぎょうがあって,さらにおもしろいことがたくさんあるかもしれません。目標やゆめは変わっていってもいいんです。自分の未来をげんていしてしまわずに,おもしろいと感じられることをさがしてみてください。
また,土木の業界というのは,きらびやかではないかもしれません。でもそのうらがわには力強さや,高いじゅつ使したエネルギーが満ちあふれています。さいせんたんの流行を追いかけるような仕事ではなくても,さいせんたんの科学的な知を結集したげんがここにあります。もしきょうを持ったならぜひ,んできてほしいです。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社/協力:一般社団法人 日本建設業連合会,前田建設工業株式会社