私わたしは戸と田だ建けん設せつ株かぶ式しき会がい社しゃという会社に所しょ属ぞくして，現げん在ざいは神か奈な川がわ県けん横よこ浜はま市しで，地下を通る鉄道トンネルの工事に携たずさわっています。相模さがみ鉄道と東とう急きゅう線の相そう互ご直通新線工事により新しく「新しん綱つな島しま駅（仮称）」という駅が建けん設せつされるのですが，私わたしはその新しん綱つな島しま駅（仮称）と従じゅう来らいの東とう急きゅう東とう横よこ線とをつなぐ「綱つな島しまトンネル」の工事に，現げん場ば監かん督とく・設せっ計けいという２つの立場で関わっています。全体で1.1キロメートルほどの区間で，この工事のスタートは2016年，完成は2021年の予定です。
私わたしはもともと現げん場ば監かん督とくとしてさまざまな現げん場ばで働いてきたのですが，産休・育休を経へて技ぎ術じゅつ部ぶ門もんに異い動どうし，この現げん場ばに入る前は，支し店てんの設せっ計けい部ぶ門もんで土木工事の現げん場ばに関する設せっ計けいをしていました。地下のトンネル工事では，トンネルの横よこ穴あなを掘ほる前に，まずは地下に潜もぐるための「立たて坑こう」という縦たて穴あなを掘ほっていかなくてはいけません。私わたしは設せっ計けい担たん当とうとして今回の現げん場ばの立たて坑こうの設せっ計けいを手がけたことが縁えんで，2年ほど前，この現げん場ばが立ち上がったころから，この現げん場ばで働いています。
私わたし自身は，この現げん場ばでは一部の設せっ計けいと，現げん場ば監かん督とくを担たん当とうしています。設せっ計けい担たん当とう者しゃとしての仕事は，工事を進めていく中で，現げん場ばの状じょう況きょうに合わせて，設せっ計けいの見直しや修しゅう正せいが一部必要になることもありますので，そういうときに自身で修しゅう正せい部分を設せっ計けいすることもあります。また，柱などがちゃんと重さに耐たえられるものなのかという「構こう造ぞう計算」という作業も，時には自分で担たん当とうします。
現げん場ば監かん督とくとしての仕事は，日々現げん場ばがきちんと安全に進められているか，資し材ざいなどは足りているかを確かく認にんし，報ほう告こく書しょなどの書類を作るのが主な仕事です。今は事じ務む所しょでのデスクワークが中心なのですが，工事の進しん捗ちょくを確かく認にんするため，実じっ際さいに現げん場ばに行くことも多いです。

今，手がけているトンネルは，大半の場所を「シールド工法」という工法で作っていきます。「シールドマシン」という，トンネルを掘ほる大きな機械を使って掘ほり進すすめます。シールドマシンは大きな筒つつ状じょうの形をしており，先せん端たんのカッターで地中を掘ほり進すすみます。そして，そのままだと土が崩くずれてきてしまうので，掘ほった部分に「セグメント」と呼よばれるコンクリートで作った外がい壁へきをはめこみ，崩くずれないようにしたらまた先に掘ほり進すすみ，これを繰くり返かえしてトンネルを作っていきます。今回掘ほるトンネルの直径は6.8メートルで，１日に約10メートルのスピードで掘ほり進すすむ予定です。目的地まで到とう達たつしたら引き返し，上り線と下り線の２本を掘ほります。
このシールド工法には安全にトンネルを掘ほり進すすむことができるというメリットがありますが，スタート地点とゴール地点では，地上との間でシールドマシンや資し材ざいを出し入れするための垂すい直ちょく方向の穴あな，「立たて坑こう」が必要になります。シールドマシンは掘ほる穴あなの直径と同じだけの大きさが必要なので，マシンが入る穴あなを作るだけでも大きな工事となります。
立たて坑こうの強度を保たもつため，太い鋼こう材ざいをたくさん組み合わせて支ささえるのですが，今回の現げん場ばでは，地じ盤ばんの関係もあり，最初の設せっ計けいだと鋼こう材ざいがじゃまになってしまい，うまく機械が入らないことが判はん明めいしました。私わたしは設せっ計けい担たん当とうとして，鋼こう材ざいの太さを変えたり，組み方を変えてみたりという，再さい度どの設せっ計けいと構こう造ぞう計算を担たん当とうしました。

私わたし自身，今は子育てのために時短勤きん務むをしていて，朝は９時に出しゅっ勤きんし，16時30分には仕事を終えます。そのため仕事内ない容ようも，現げん場ば事じ務む所しょにいて書類を作ったり，３人いる所長たちのアシスタントを務つとめることがわりと多いですね。また，一部，設せっ計けいの修しゅう正せいなどが必要になった場合は，現げん場ばで設せっ計けい図面の修しゅう正せい作業をします。
今の現げん場ばで，時短勤きん務むでない現げん場ば監かん督とくの場合は，朝８時に作業員も含ふくめて全員が集まっての朝礼からスタートします。そこでその日の作業内ない容ようを確かく認にんし，午前中は，現げん場ばがきちんと安全に保たもたれているか，異い常じょうはないか，新しく入ってきた資し材ざいの品ひん質しつやセメントの強度がきちんと保たもたれているか，などをチェックしていきます。お昼には一度，職しょく長ちょうさんという職しょく人にんさんたちのリーダーの方たちに集まってもらい，午前中の進しん捗ちょく状じょう況きょうの確かく認にんと，午後の作業に変へん更こう点てんがないかや，次の日の作業を確かく認にんします。
現げん場ばの作業が終わるのは17時です。作業が終わり，職しょく人にんさんたちが帰った後は，その日の報ほう告こく書しょや書類を作る時間になります。資し材ざい一つにしても，「何日にどれだけの資し材ざいが入った」と，書類と写真で記録をしておかなくてはいけません。

現げん在ざいは時短勤きん務むのため，「使える時間が少ない」というのが悩なやみです。今，この現げん場ばには統とう括かつ所長，発注者との連れん絡らくを主に担たん当とうする所長，現げん場ばの工事を担たん当とうする所長と，３人の所長がいます。それぞれから仕事が来るので，時間がない中でそれらの仕事に優ゆう先せん順位をつけ，処しょ理りをしていかなくてはいけません。
現げん場ば監かん督とくというのは女じょ性せいが少ない職しょく種しゅではありますが，実は「女じょ性せいだから大変」という部分は，私わたし自身は感じません。これまであまり女じょ性せいがいなかったので，逆ぎゃくに会社のほうが「どうしてほしいか，要望があったら教えてほしい」と，女じょ性せい側がわの要望や意見も聞いてくれるんですね。職しょく人にんさんにしても，業者さんにしても，「女だから」といって差別するような方はいませんし，会社も「そんなことを言う人は選ばないようにしています」と言ってくれています。女じょ性せいの場合は子どもを産むと，長時間の拘こう束そくがある現げん場ばの仕事は難むずかしくなることが多いかもしれませんが，例えば私わたしのように時短勤きん務むにして仕事の後に子どもを迎むかえに行ったり，自じ宅たくから近くて通いやすい現げん場ばに配はい属ぞくしてもらうなど，いろいろな働き方の選せん択たく肢しがあると思っています。建けん設せつ業界全体が，いろいろと変わっている時期なのではないでしょうか。

仕事をしていて一番楽しいのは，やはり，「すべてが終わった瞬しゅん間かん」です。例えば橋の工事に現げん場ば監かん督とくとして関わったときには，現げん場ば事じ務む所しょを建てる場所の草くさ刈かりからスタートしました。そこから現げん場ばが始まっていって，実じっ際さいに工事が進んでどんどん風景が変わっていって，最後にはその事じ務む所しょを撤てっ去きょして終わる。何もなくなって，現げん場ば事じ務む所しょがあった場所が元の状じょう態たいに戻もどり，完成した橋だけが残るんです。その風景を初めて見たときには，大きな感かん慨がいがありましたね。
入社一年目で経けい験けんした，下水道管敷ふ設せつの現げん場ばもそうでした。職しょく人にんさんたちの作業を見て，「土木は人の手で形にするものだ」というのを再さい確かく認にんしたんですが，私わたし自身は異い動どうでその現げん場ばを途と中ちゅうで離はなれることになりました。でも工事が終わった後，現げん地ちを見たくてそこに行ってみたんです。すると職しょく人にんさんたちが慌あわただしく動いていた現げん場ばがあとかたもなく撤てっ収しゅうされ，何事もなかったようになっている。この「何もなくなっている」ということに感動したんですね。おそらく今関わっているトンネル工事も完成すると，地上部分はあとかたもなく撤てっ収しゅうされるはずです。そのときにまた，同じような感動を得られるのかなと思っています。
また，宅たく地ち造ぞう成せいや橋の建けん設せつなどの地上の工事だと，昨日はここまでやった，今日はここまでやった，という一日一日の作業が目に見えてわかります。そういう現げん場ばだと，目に見える変化がまた，日々の仕事の原動力になっていきます。

仕事をする上では，事じ務む所しょの中でも現げん場ばでも，“なるべく喋しゃべること”を意い識しきしています。例えば所長から仕事を頼たのまれるにしても，雑ざつ談だんの中で，今，お互たがいがどういう状じょう況きょうかを察することができますし，話しかけやすいほうが部下として仕事を頼たのみやすいかなと思うんです。少ない時間の中で効こう率りつ的てきに仕事をするためにも，みんなとできるだけ喋しゃべり，コミュニケーションを多くするように心がけています。
同じように，業者さんや職しょく人にんさんに対しても，いつも話をするようにしています。土木の現げん場ばは大きな重機を使うので，建けん築ちくの現げん場ばに比くらべて人数が少ないことが多いんです。今の現げん場ばに関わっている職しょく人にんさんは15人くらいでしょうか。仕事を始めたころに上司から「なるべく全員の顔と名前を覚えなさい」と言われたこともあり，みなさんの顔と名前を覚えるように，そしてなるべく話をするように心がけています。
この仕事はちょっとしたことが危き険けんへつながってしまいます。ですから何か「言いにくいこと」が発生したときも，報ほう告こくをしてもらわないといけないし，私わたしたちも注意をしなくてはいけません。そういうとき，普ふ段だんから喋しゃべっていない相手には言いづらいですよね。コミュニケーションも安全管理の一いっ環かんなんです。

幼おさないころから，工事現げん場ばなどで大きな重機が動いたり，出入りしたりするのをよく眺ながめている子どもだったようです。幼おさな心ごころに「工事現げん場ばってかっこいい」と思ったんでしょうね。その思いは大きくなっても変わらず，高校は工業高校の建けん築ちく科かに進みました。
家の間取りを見ているのも好きだったので，設せっ計けいの仕事ができたらと思い建けん築ちくに進んだんですが，勉強する中で「大きな構こう造ぞう物ぶつを作りたい，ずっと残っていくものを作りたい」という思いが高まっていきました。高校にはなかなかゼネコンなどの求人がなかったこともあり，大学では土木を学びました。
就しゅう職しょく活動では現げん場ば監かん督とくになることを第一に考えて会社を回りました。やはり子どものころからの「工事現げん場ばへの憧あこがれ」が強かったんです。戸と田だ建けん設せつに入社し，すぐに現げん場ばへと配はい属ぞくされました。基き礎そ知ち識しきから現げん場ばで教えてもらう状じょう況きょうでしたが，憧あこがれだった現げん場ばに出られて，とてもうれしかったです。
結けっ婚こん，出産を経へて一時は支し店てんの設せっ計けい部ぶ門もんにいたんですが，やはり，「現げん場ばに出たい！」という思いは強かったです。子どもがある程てい度ど大きくなったこともあり，今やっているトンネル工事がスタートするときに，念願かなって現げん場ばに戻もどることができました。自じ宅たくと現げん場ばが遠くて通つう勤きんに片かた道みち1時間半かかるのですが，それでも「現げん場ばにいられる喜び」は大きいです。

もともと一人で行動するのが好きな子どもでした。家が自じ営えい業ぎょうだったので，余あまったダンボールをもらって家のようなものを作ったり，何かものを作って遊んでいましたね。「つくる」ことが好きなのは，そのころから変わっていない気がします。
現げん場ば監かん督とくという仕事は現げん場ばに出るだけでなく，実は書類仕事などのデスクワークも多い仕事です。そのため，就しゅう職しょくしてからそのあたりのギャップを感じる人もいるかもしれません。でも，私わたしの場合は自じ営えい業ぎょうの家で育ち，両親が仕事をしている様子を間近に見てきたので，そういう面もあることはあらかじめ想定していました。それで，特にギャップを感じることはなかったように思いますね。
中学校では「技ぎ術じゅつ部ぶ」という，パソコンをいじれる部活に入っていました。中学生，高校生時代を通して，科目としても理り数すう系けいが得意で，特に理科が好きでした。そんなに多くの人とコミュニケーションをとったり，友だちがたくさんいるというタイプではなかったのですが，家族や仲のいい子たちとはたくさん喋しゃべっていたような気がします。多分，本来は喋しゃべるのも好きなんだと思います。

みなさんに伝えたいのは，「好きなものを見つけて，それを続けてほしい」ということです。私わたし自身，今の現げん場ばに通つう勤きんするのに片かた道みち１時間半かかっていますし，子育てと仕事を両立するのはなかなか大変なときもあります。でも，日々の原動力になるのはやはり「現げん場ばが好き」という気持ちなんです。このエネルギーがあってこそ，日々，がんばれています。
将しょう来らいを考えるとき，なるべくいろいろな仕事のことを知ることも大事ですし，合わせて「この仕事をやりたいか，やりたくないか」ということも考えてほしいな，と思います。「こういう仕事があるんだな」だけではなく，実じっ際さいに自分がその仕事をしたとしたらどう思うか。そこまで考えてこそ，好きなもの，好きな仕事を探さがすことができると思うんです。
建けん設せつの仕事について言えば，小さいころに「クレーン車ってかっこいい」「ダンプカーってかっこいい」というふうに思った人は多いと思うんですよね。現げん場ばが好きで土木の仕事をしている人間としては，そういうところからこの世界に興きょう味みを持ってくれるとうれしいな，と思います。